Re:4 二人の距離
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ー…バタン…!!
「失礼致しますお客様、当店スタッフにみだりに触れることはご遠慮願えますでしょうか。」
「!!」
「……え…!?」
「行きましょう、琴子さん。」
「と……虎ちゃん……!!?」
ギリギリのところで抵抗を続けていた琴子の目の前に現れたのは、
ずっと会いたいと思っていた高虎、その本人だった。
琴子が状況を飲み込めずに呆気にとられていると、高虎は琴子を最上から引き剥がすように抱き寄せた。
「な…なんでお前らがこんな所にまで…!!?るなか!!こんなことして…るなのホステスとしての将来はもう絶望的だぞ!!」
「そ…そうだ虎ちゃん…私はまだ…やらなくちゃいけないことが…だから離し…」
「もういい、もういいんです。」
「え……?」
高虎の言葉に目を丸くする琴子に、高虎は耳元で小さく呟いた。
「私も若も仮釈放が決まり、警察が事実を認めました。南在さんが裁判に勝つのも時間の問題だと。」
「ほ……本当に……?良かった……!!」
余程気を張っていたのか、皆の釈放を聞いた琴子はヨロヨロとその場にしゃがみこんだ。
高虎はそんな琴子を労るように優しく支えると、着ていたジャケットを琴子の震える肩に掛けた。
「お…おいこら店長!!何ボーッと突っ立ってる!!この店はVIPルームからホステスを連れて行くのか!?こっちは高い金払ってるんだ、早くこいつらを追い出さないか!」
「ひいい…私には…とても…!!」
「るな!!お前が約束したんだ、早くこっちに…」
ー……ジャキン…
「へ・・・?」
けたたましく暴言を吐き連ねていた最上だったが、突然額に触れた鉄のひんやりした感触に思わず口をつぐんだ。
高虎はそんな最上にニコッと笑うと、更に"それ"を最上に強く押し当てた。
「この方は大切な方です、あなたなどに触れさせはしない。」
「ひっ……!!」
「今後一切この方の前に姿を現すな、もし破れば八頭龍会系冴嶋組組長五代目、新藤高虎が直々に手を下します。」
「…お…俺は何も…何もしてない誤解だ!!!!!!」
「虎ちゃん、ちょっとそこどいて。」
「え?」
高虎からなんとか逃れようと必死に弁明する最上だったが、その言葉に高虎の横でそれを聞いていた琴子の怒りは頂点に達していた。
「やらせろだの脱げだの言ってたののどこが誤解なのよ、このクソ男ーーーーーー!!!!」
「まっ…待てるな穏便に………!!!!」
ー…バキイッツ!!!!!!!!
「ぎゃああああああーーーー!!るな何やってんのおおお!!」
「血祭りにあげてやる!!人の弱みにつけ込んでええええ!!!!!!あんたの××なんて切り取って串刺しにして消し炭にしてやるーーーー!!」
「ぎゃあああああ想像しただけで痛いこと言うのやめて!!てかるなやめて店が壊れるうう!!!!!!!!!!」
「ちょ!!姉貴さりげにナックル付けてたっすよね!?痛いっすよあれ…あーあ…なんてこったい無残な…。」
「…これだから爪を伸ばしている女は嫌いだ。」
「…そこですかい?」
「・・・・。」
ー…ボロッ…
「はあ、すっきりしたわ。支配人、そいつ強制わいせつ罪って警察に突き出しといて。」
「これわいせつ罪より絶対お前の暴行罪が適用されると思うんだが俺は…。」
「は…はは……。」
今までの仕返しと言わんばかりに最上をボコボコにした琴子は、見せ場を持って行かれた高虎に満足そうに笑ってみせた。
そんな琴子の様子に安堵した表情を浮かべた高虎は、くるりと支配人と店長に向き直り頭を下げた。
「お騒がせして申し訳ありませんでした。その男の飲んでいた酒代とその他諸々の損失はうちで補填しますので…。」
「い…いえとんでもない…!!新藤さんにはいつもお世話になってますし結構ですよ!!今日だってほとんど暴れたのはるなですし…。」
「いつもお世話になってる…?いつからお世話になってたのよ支配人!!私知らないわよ!!」
「ええ~?この界隈の店は昔っからトラブルがあると冴嶋組さんに助けて貰って、持ちつ持たれつな感じなんだよ。」
「そうだったの!?」
「そうだったんですよ。」
予想外の高虎の返事に琴子が驚いていると、高虎は奥の柱から一部始終を盗み見していた一華に聞こえるように言った。
「今回の件も店長から気になる客がいると獅子尾がずっとマークしていました。従業員同士の切磋琢磨は良いことだと思いますが、あまり人を陥れるような過ぎた行動は感心できませんねぇ…。」
「………!!」
「なんだ…だからこの前も今日もこんなタイミングよく…。」
高虎と目が合い、自分のことを言われているのだと気付いた一華は、そそくさとその場から逃げるように去っていった。
「ですが店長さんには補填は受け取って頂きます、明日からまた売上が落ちてしまうかと思いますので。」
「「へ?」」
「獅子尾、後のことはよろしくお願いします。」
「はい、お任せを。」
「え?え?ちょっと…虎ちゃん!?」
高虎はそう言って琴子の手を引くと、そのまま店を出て行ってしまった。
琴子は訳も分からぬまま高虎の後を歩くと、高虎は繁華街を過ぎた川沿いの静かな公園で足を止めたのだった。