Re:4 二人の距離
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ー…ガヤガヤ…
「るなちゃんが前言ってたあのバベルの話、調べてみたら確かにやばそうな山だね!!警察なんか隠してるね。」
「やっぱりそうですよね…私このままじゃ怖くてスマホ見られそうにないんですよ~…。警察も信用ならなくって…」
「るなとメール出来なくなっちゃそれは大変だ!!関係する裁判も始まってるみたいだし、俺知り合いに新聞社の奴いるから働きかけてやるよ!!」
「三上さん…ありがとうございます…!!」
琴子はそう言って嬉しそうな笑顔を見せると、客の男のグラスにお酒を注いだ。
あれから自分で言うのも何だが布教活動は順調に進んでいるように思える。
それに今日は大手の企業社長、政治家が訪れるとアポイントが入っており、琴子はいつも以上に気合が入っていた。
(所長さんの話じゃ釈放に持ち込めそうだって言ってた…あと少し…あと少しなんだ…。)
九条の裁判が始まり、オタクがバベルの存在を明るみにした。
働きは地味で地道かもしれないが、きっとこの布教活動が少しでも皆を助ける助けになると琴子は信じて今日も頑張っていた。
「るな、次お願いします。」
「はい、では三上さん…寂しいですけどまた伺いますね。」
「もうこんな時間か~、るな~待ってるよ~!!」
黒服に呼ばれた琴子は名残惜しそうにする男の元を去り、新たな客の元へと席を立った。
呼ばれたのはVIPルームと呼ばれる個室で、ついに大口の客が来てくれたのかと琴子は背筋をピシっと正し部屋の扉をノックした。
「失礼致します。」
「…やあ、るなお久しぶり。」
「…も…最上さん…!?」
動揺を隠せない琴子の前にいたのは、あれ以来店に現れていなかった、そして怪しい笑顔を湛えた最上だった。
最上意外誰もいないその部屋は監視カメラがなく、そのことを知っていた琴子はすぐにヘルプのホステスを呼ぼうと指示を出そうとした。
だが最上はそれを素早く阻止すると、余裕たっぷりの笑みで琴子に言った。
「誰かいたら困るのはお前だぞ、るな。ヤクザと繋がってるなんて…知れたら客がつかないよなあ……?」
「……。」

「まあ座れよ、るな。」
ニヤニヤと笑いながら言う最上に思わず言葉を失ったるなだったが、
ひとまずここは最上の言うことを聞こうと細心の警戒をしながら隣に腰を下ろした。
「この間は驚いたよ…まさかヤクザが邪魔してくるんだもんなぁ…なあ?俺あの後色んな手使って調べたんだよ、あの時のヤクザのこと…冴嶋組の現二番手だって言うじゃない。」
「……そ…そうだったんですね…。」
「それに最近るなが触れ回ってるバベルのこと…あれにもどうやら冴嶋組が関わってるみたいだよねえ…あれ?おかしいねえ……。」
「……最上さんなにか誤解を…。」
「大丈夫、言わないよ。俺だってるなに恨まれたい訳じゃないもの。それにるなもこの店辞めたくないでしょう?」
「………。」
諭すように優しく、そして穏やかに話す最上だったが、琴子はその真意に薄々気付いていた。
そして最上はニコニコと楽しそうな笑顔を見せると、俯く琴子の顔をのぞき込んだ。
「でもまあ…口止め料くらいは…体で払ってもらわなきゃなあ。」
「………。」
(やっぱり…そう来るわよね…。)
ニヤニヤと舐めるように琴子を見つめる最上を前に、琴子は覚悟を決めたように息を吐いた。
体は売らない、それは水商売を続けるに当って貫いてきた私のくだらないポリシーだった。
だが今となってはこんな体ごときで高虎や和泉を助けられるならと、そんなことばかりが頭を回っていた。
(今…ここを辞めたら全てが水の泡になるかもしれない…それだけは出来ない。)
「どうするの?」
「……はい、では…後日にお誘い下さいましたら、伺います。」
琴子は全ての感情を飲み込み冷静にそう返事を返した。
だが最上から返って来た言葉は、琴子も予想だにしない一言だった。
「それはダメだよ、外に出てからじゃまた冴嶋組に邪魔されるかもしれないからねえ…ここでやってよ。」
「…へ?」
「ほら、誰も居ないんだから…早く脱いで見せてよ。」
「!!!!!」
琴子は怒りを通り越した嫌悪感たっぷりな目で最上を睨みつけたが、最上はそれすらも楽しんでいるようで琴子の肩を抱き寄せた。
「お前みたいな高値の女を好きなように組み敷けるなんてたまらないねえ…その目…ゾクゾクするよ。」
「………!!」

(…ボーイ…ヘルプも…なんで誰も来ないの…!!誰か………!!)
............................................................
ー…ピッ…
「あれ、一番のルーム、ヘルプ誰か入ってる?」
「はーい!!私が入りまーす。」
「あ、一華がヘルプ?豪華だなあ~了解、じゃあオーダー聞きに行こうかな…」
「あ!オーダーなら私が聞いておきますよ!」
「本当?いつも手伝いたくさんしてもらって悪いねえ、助かるよ!」
「はいは~い♪……っと。」
一華は元気よくそう答え黒服の姿が見えなくなると、一番のルームに入ること無く傍らで楽しそうに携帯をいじり始めた。
中で起こっているであろうことも勿論承知で、自分の仕返しの成功をほくそ笑みながら部屋に誰も入らぬよう見張っていたのだった。
ー…バタバタバタ…
「あの…本日はどうされましたか…何か不都合でも…!?あのっ…!!」
「…ん…?」
VIPルーム脇でなにくわぬ顔で携帯を見ていた一華だったが、下の出入口が何やら騒がしくひょいと顔を覗かせた。
するとそこには慌てふためく支配人と店長、そしてスーツを着た男三人がズカズカと店に足を進めていた。
(……支配人まで出て来てるってことはあれが今日来るって言ってた大企業社長かもしくは政治家…?どの道あの女の客…!!なんとか奪ってやらなくちゃ…!!)
一華は部屋に誰も入らぬよう扉に軽く細工をすると、いそいそと髪を直しながらその男達に近づいた。
そして一番前を歩く男に狙いを定めわざと胸が当たるよう腕に手を添えると、上目遣いに今日一番の笑顔で挨拶をした。
「お客様、私一華と申します、どうぞこちらご案内致しますわ。」

「……?」
「いっ…一華…!?この方は…!!」
「…申し訳ありませんが、腕を離して頂いて宜しいですか。」
「…へ?」

そのあまりの慌てた素振りのボーイの表情と、男の冷たい目。
そして近づいた時に見えてしまった男の胸元にある龍の鱗模様に、一華は思わず手を離した。
「い…刺青…!?」
「一華!!し…失礼いたしました!!」
男から慌てて一華を引き剥がすと、支配人は何度も何度も頭を下げた。
そうして男は一華らを振り切り店の奥に足を進めると、琴子のいるVIPルームの前で足を止めたのだった…。
