Re:2 和泉、フランスへ行く。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ー…バタバタバタ…
「和泉兄ちゃーんおっはよー!!」
和泉がほとんど眠れずに夜を明かした後、飛び込んできたのは元気のいいナタンとエマの声だった。
二人は布団に潜り込む和泉のそばに近寄ると、和泉の耳元に大きな声で喋りかけた。
「まったくいつまで寝てる気よぉ!!早く起きて!!今日は私と一緒に買い物に行きましょ和泉ちゃん!!」
「ダメだよ今日は僕が軍の話を聞かせてもらうんだから!!」
「あんたねえ、軍隊の話になった途端キャラ変わってんじゃないわよ!!」
「うっ…るせえええええええ!!人の腹の上で喧嘩してんじゃねえ!!!!」
ギャーギャーと朝から言い争う二人を部屋の外に放り出すと、和泉は眠たそうに目をこすった。
「しゃーねえなあ…今日はお前らのしたいことに全部付き合ってやるよ。」
「「ほんと!?」」
「ああ!!何でも言ってみろー!!」←ヤケクソ
和泉のその嬉しい提案にエマとナタンは瞳を輝かせると、我先にと和泉にまとわりついた。
そうしてエマは買い物、ナタンは軍にいた時の話を和泉にこれでもかという程聞くことにしたのだった…。
ー…ガタッ!!!!
「…ええええええ!!和泉兄ちゃんが…外人部隊で伝説の"碧眼のサムライ"なのおお!?」
「いやお前声でけえよ…まあそんな風に言われてた気もするけど…というか伝説ってなんだよ恥ずかしすぎるだろそれ!!!」
「恥ずかしくないよ!!僕はその話を聞いて兵士に憧れて、大好きになったんだもの!!それがまさか僕のお兄ちゃんだったなんて…あり得ない…あり得ない感激だよ…!!」
和泉の話を聞いて改めて和泉をまじまじと憧れの目で見つめるナタンの頭を、
和泉は少し照れくさそうにしながらポンポンと撫でた。
「ま、俺にとっては嫌な思い出だったんだけどさ、お前にとってプラスになったんなら俺もちったあ報われるわ。」
「…うん!!いいなあ…僕も早く大人になって正規軍に入りたい、そんで和泉兄ちゃんみたいなかっこいい兵士になりたいなあ。」
「かっこいいかは別として……兵士になって皆を守ることはいいことだけどな、戦争を好きにはならないでくれよ。」
「え…?」
「いや…なんでもねえ。」
和泉はそう言うと、昔の光景がフラッシュバックしたようで顔を俯けた。
そんな和泉をキョトンとした顔で覗きこむ綺麗なナタンの瞳に、和泉は少し力なく笑い、言葉を返した。
「ま、お前には悪いけど俺はお前が大人になる頃には、戦争がなくなっていればいいなって思うけどなー。」
「えええ??何でさ!!」
「ちょっとー、もうミリタリーオタクとの話は終了して!!ナタンばっかり和泉ちゃん独占しすぎ!!」
「ちょっと待ってよ!!もう少し!!」
和泉の肩におぶさってきたエマと熱心に話を聞くナタンに挟まれ和泉はまんざらでもないように笑った。
その様子をキッチンで見ていた母は、微笑ましい光景に温かい笑顔を見せていた。
「あ~あ、明日で和泉兄ちゃんが日本に帰っちゃうなんて…このままフランスにいればいいのに。」
「そうよ、このままここで一緒に暮らしましょう?家族なんだもの、なんにも問題ないでしょ?ね?ね?」
「…お前ら…。」
「ナタン…エマ…。」
かつてなく真剣な様子で自分をじっと見つめる二人。
そんな二人に和泉はニコッと笑顔を見せると、二人の頭をこれでもかというくらいにぐしゃぐしゃに撫でた。
「ありがとなー…本当に嬉しいよ。」
「え?…じゃあ…!!」
「でも、ごめんな。俺はまだ、あっちに恩を返してない人達がいるんだ。それが出来るまで…こっちには住めねえんだわ。」
「ええ~!!」
「……。」
和泉の言葉を子供たちはなかばふざけながらとりあっているようだったが、
隣で聞いていた母は、和泉言うその一言一言に真剣に耳を傾けていた。
「お前らと一緒に暮らせたらそれは楽しいだろうなって昨日一晩考えた。俺の外見は日本じゃ異様で目立つし、そんな俺が普通になれるこの国で暮らしたいって思ったことも沢山あった。」
「……。」
「でもさ、そんな俺を昔から自分を犠牲にして守ってくれた人、どうしようもない俺を救い出してくれた人、俺が初めて守りたいって思った人も…日本にいるんだ。だから…俺はまだ、日本にいたい。」
そう言って日本にいる皆を思い自分の決意を語る和泉の顔はとても穏やかで、
和泉がその人達と日本で過ごした毎日が、幸せであったことを推し量るには母にはそれで十分だった。
「でもさ、みんなが一緒に住もうって言ってくれたこと…俺、忘れねぇから。だからまた…遊びに来てもいいかな…?」
和泉は少しかすれたような声でそう言うと、顔を見られまいとするように顔を俯けた。
そんな和泉の頭を母は幼い子供にするように優しく撫でると、嬉しそうに微笑んだ。
「当たり前じゃない、いつでも"帰って"らっしゃい。そしていつか和泉の大切なその人達、私にも紹介してね?約束よ。」
「……うん、絶対…約束する…!!」
そうして和泉の一週間に渡るフランス旅行は幕を閉じた。
日本に帰る和泉を泣きじゃくって見送るエマとナタンの姿に後ろ髪を引かれながらフランスを発った和泉。
フランスに嫌な思い出しか無かった和泉の記憶は、幸せな思い出で色を塗り変えていたのだった……。
...........................................................
ー…ガタタッ!!!!
「…ぶえーっつくしょん!!!!!!」
「風邪ですか?一人暮らし独身の中年が体調崩すと無残ですよ。」
『ですよ?』
「確かに。」
「てめえら…あと十年したら同じ言葉ばっくり返してやるかんな…ったく…」
みんなにいじられふて腐れた孝之助は、ズッと鼻をすすりながら外に出た。
タバコを買おうと孝之助が自動販売機まで足を進めると、大きな荷物を抱えた見慣れた姿が目に入った。
ー…ガラガラガラ…
「ん?」
「………。」
「和泉?」
和泉は孝之助の姿を見つけるとピタリと足を止め俯いた。
そんな和泉の様子に孝之助が首を傾げると、和泉は言い出しにくそうに言葉を絞り出した。
「……ごめん、戻って来たわ。」
「ははっ!!何だよそれ。」
「………。」
帰らない方が孝之助の為だったのではないかと思案していた和泉は、申し訳無さそうにその場に佇んでいた。
だがその意を察した孝之助はニカッと笑うと、勢い良く和泉の背中を叩いた。
「待ってたよ、お帰り!!」
「………ただいま……。」
『あーっ!!和泉さんおかえりなさーいっ!!』
「和泉のデスク書類で埋もれてますよー。」
「ぎゃあああああ!!何だよこれふざけんな!!!!」
【Re:2 】和泉、フランスへ行く。 -EMD-
7/7ページ