Re:2 和泉、フランスへ行く。
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ー…ピッ…
「どうしましょうあなた…エマ、学校にも行ってないみたい…携帯も繋がらないわ…。」
「何だって…!?なんてことだ…!!」
「……。」
エマが家に戻らなかった翌日、
母とジャンは思い当たる所全てに連絡を取り、それでも行方の掴めない娘に頭を抱えていた。
「こうなったら警察に連絡をしましょう…!!何か事件に巻き込まれているのかもしれないわ…」
「あの子のことだからどこかで泊まっているだけということも考えられるが…やむを得ないね。」
「……あのさ、ちょっといい?」
「…どうしたの和泉?」
オロオロと慌てふためく二人の間に和泉は割って入ると、昨日自分が見た男のことを二人に話した。
エマが大人の男と学校にも行かずに一緒に歩いていたこと聞いた母の顔は、案の定みるみるうちに青ざめていった、その時だった。
「…その人姉ちゃんの彼氏だよ、警察なんか呼んだらその人逮捕されて、姉ちゃんお母さん達のこと一生恨むと思うけど。」
「…ナタン!?」
「……。」
「……?」
部屋からふらりと出て来ていたらしい弟のナタンはそう一言だけ告げると、和泉のことをキッと睨みつけ部屋へと戻っていった。
母とジャンはナタンに詳しく話を聞こうと後を追ったが、ナタンは部屋に鍵をかけまた閉じこもってしまった。
(…まただ。)
「ナタン開けなさい!!ナタン!!エマのことを教えて!!ナタン!!」
「ナタン、開けなさい!!」
母とジャンがドンドンとナタンの部屋のドアを叩く横で、相変わらず自分に向けられた子供たちの嫌悪の目に和泉は首を傾げた。
母が自分に取られると思ったからか?だがその目は嫉妬というよりも怒りに近く思われたのだ。
「ったく…何だってんだよ。」
和泉はガシガシと頭をかくと若干かぶっていた猫を脱ぎ捨て、いつもの調子でドアの向こうに向き直り声を荒らげた。
「あのなあ…男がうじうじ部屋に籠もってんじゃねぇぞ!!だいたい俺になんか文句があんなら面と向かって言いやがれこのヘタレ野郎!!」
「いっ…和泉…!?」
「銃だかナイフだかで親を脅して楽しいか!!てめえなんざ何十丁銃持ってたって怖かねえわ!!!」
和泉の本性を初めて見た母とジャンは、あまりの和泉の勢いに目を丸くして硬直していた。
だがそんな二人を気に留めることもなく和泉は腰を落とし構えをとると、あっけらかんと母に尋ねた。
「このドア蹴破るけどいいか?エマの無事には変えらんねえだろ?」
「待って和泉!!ドアは構わないけどナタンが銃を構えているかもしれない…!!そんなことしたらあなたが…」
「上等!!」
和泉はそう言ってニッと笑うと、母の静止も聞かずにドアを勢い良く蹴破った。
扉の向こうには予想通り激昂した様子のナタンが銃を構えていたが、和泉はかくもあっさりその銃弾を避けきりナタンの動きを封じた。
ー…ザッ……
「甘いなあ、にしても渋い銃持ってんのな、お前。」
「くっ…くそっ…!!!!」
「…ほー…こりゃすげえな。」
扉を蹴破り久方ぶりに朝日の差し込んだナタンの部屋には、おびただしい数の銃やナイフが置かれていた。
圧巻のその光景に和泉は、動きを封じていたナタンの前でほおと感心したように部屋中を見渡した。
「アサルトライフルまで持ってんのか、懐かしいな。」
「………懐かしい…?」
「てめえ脅す為に武器集めてんじゃなくてただの軍事オタクだろ、だってホントに殺してえならこっち使うよなあ、なあ?」
和泉はそう言ってニッと笑うと、使い慣れた様子でライフル銃を手に取った。
その瞬間、和泉の腕と胸元に見えた多数の傷跡にナタンはハッとすると、恐る恐る小さな声で和泉に尋ねた。
「まさか軍に…いたことがあるの?」
「ああ、まあな。」
「戦争に…行ったの……?」
「……ああ。」
「……。」
ナタンは困ったように笑う和泉から離れ立ち上がると、意を決したようにポケットから携帯電話を取り出し和泉に差し出した。
その携帯の画面には昨晩深夜にナタンの携帯に着信していたエマの番号が表示されていた。
「エマ、彼氏に携帯買ってもらってるんだ。だからお母さん達のかけてる携帯はほとんど繋がらないと思う。でも昨日の夜そのエマの番号から無言電話がかかってきた、僕もそれ以上の情報は知らないよ。」
「ナタン…どうしてそんな大事なこと私達に黙っていたの…!!」
「………母さんが…母さんが悪いんじゃないか…!!俺らをいつも出来損ないだと比べるから…!!」
「…出来損ないだなんてそんなこと…!!私はただ…!!」
「…出来損ない…?」
まだまだ何か言いたげな様子ではあったが、ショックを受けた様子の母の姿にナタンはチッと口をつぐんだ。
あたりにシンと張り詰めた空気に割って入った和泉は、ナタンから携帯を受け取りニッと笑った。
「十分だ、これで居場所が分かる。」
「え……?」
「ありがとな、お前のお陰だ。」
和泉はそう言うと自分の携帯を取り出しどこかに電話をつなげた。
皆がポカンとした様子でその光景を見守っている中、和泉は数分話した後電話口に向かってケタケタと笑いながら電話を切った。
「だいたいの場所分かったぞ、後の詳細はまた分かり次第連絡してもらう。」
「連絡してもらうって…一体誰に…?」
「俺の同僚のクソメガネ。あいつだったら10分もありゃ楽勝だと思うぜ。」
「………!?」
「そいじゃ俺はこの基地局近くのあたりに向かいますかね。えーーとこっからだと…電波入るかな。」
「和泉…あなたどこでそんな知識を…」
手慣れた様子でサクサクと捜索活動を進める和泉を母は驚いた様子で見つめた。
そんな母をよそに和泉は携帯をポケットにしまい出発しようとすると、背後からナタンの震える声が響いた。
「僕も…僕も一緒についていくよ…!!姉ちゃんが危ないかもしれないんでしょ…?それにその場所は学校の近くだしきっと僕の方が地理に詳しいと思う。」
「ナタン……あなた…」
「よっしゃ、じゃあ一緒に行くか。」
「…うん!!」
和泉はナタンと顔を見合わせ頷くと、両親と共に車に乗り込んだ。
ナタンは久々の外出なのか少し緊張しているようでもあったが、隣にどっしりと構える和泉の様子をチラチラと伺っていた。
「あのさ…」
「ん?」
「帰ったら軍にいた頃の話…聞かせてくれる?」
「ははっ、たいして面白い話もねえけどな、いいぞ。」
和泉がそう言って笑うと、ナタンは嬉しそうにはにかみながら顔を俯けた。
そうしているうちにヒナからの連絡が入り詳しい場所が分かった一行が向かったのは、
街の外れにある一軒の古びた建物だった…。