Re:2 和泉、フランスへ行く。
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ー…ゴオオオオオオ…
「ううううーん…。」
突き抜けるような青空と飛び立つ飛行機。
そんな景色を前に、和泉は一人戸惑ったようにウロウロと空港内をうろついていた。
「……勢い余ってここまで来ちまったけど…どうすっかなぁ…。」
和泉が今いるこの場所は、和泉の母親のいるフランス郊外の街からほど近い空港。
フランス語が羅列された地図を眺めながら和泉は頭をガシガシと掻くと、少し溜め息を吐いた。
ことの発端は数日前、一通の手紙が事務所に届けられたことだった。
..............................................................
ー…ガチャ…
「お邪魔いたします。」
『高虎さん!!おはようございます!!』
「おう、おはよ~どした?」
朝早く事務所に訪れた高虎は皆に挨拶を返すと、キョロキョロと和泉の姿を探し辺りを見回した。
「和泉ですか?今買い物行っていますけどすぐに帰ると思いますよ。」
「ああ、いや、その方がいいんです。実はちょっと皆様にご相談が有りまして…」
「?」
高虎はそう言うと懐から一通の手紙を差し出し、それを不思議そうに眺める事務所の面々に小さく耳打ちしたのであった。
ー…ガチャ…
「ただいま~おっさんあの店前と同じインク置いてなかったぞ~。」
「おお、そっか悪いな!!じゃあ今度またネットで買うからいいよ。」
「…ん?虎じゃねーか、何してんだ?」
高虎の存在に気付いた和泉が不思議そうに高虎を見ると、高虎は懐から取り出した手紙を和泉に手渡した。
手紙を受け取った和泉がその送り主の名前に少し驚いた顔を浮かべると、すぐに高虎が言葉を返した。
「先日こちらに届いておりました、若の母上からの手紙です。差し出がましいようではありますが、こちらまでお持ちしました。」
「…ああ、そ。」
「……。」
気のない返事を返し手紙をポイと机にしまう和泉に、高虎は食い気味に言葉を続けた。
「若、フランスに行かれてみては如何ですか?」
「はあ?…いいよ、別に。」
「よくありません、差し出がましいようですが琴子さんがフランスに行ってから母上様もお待ちになっておられるとのことです…ですから今度こそ…」
「…中見たのかよ。」
「見ておりません!!母上様は組長が亡くなったことをご存知ないので日本に来るのをためらっていらっしゃいます、ですからここは若が…!!」
「見てんじゃねーかよ!!こんのバカ虎!!」
和泉がそう言ってイライラしたように高虎を小突くと、その隣で佐奈と九条がボソリと口を挟んだ。
「まあ和泉は結構ビビリですからね~、行くの怖いんじゃないんですか?」
「……ああ?」
『でもお母様の方から会いたいって言って下さっているのに行かないってのは男としてもどうかと思うんですよね~…』
「な…なんだよ…別にそういう事言ってるんじゃ…仕事だってあるしよ…」
「和泉今週暇だからさ、特別連休あげちゃうぞ~!!」
「………。」
「ヘタレ。」
「てめえクソメガネ表出ろコラアアア!!!!!!」
どこか思うところがあるのか、思案しながらぎゃあぎゃあとヒナに突っかかる和泉を見て
孝之助は和泉をなだめながらニッと笑って言った。
「冗談抜きでさいい機会じゃねえか、今ホント暇な時期だし一回母ちゃんに会ってみといてもいいと思うぞ?」
「……おっさん…。」
「そうです若、チケットもパスポートも既にご準備しておりますので!!」
「…っておいこのチケット今日のじゃねーか!!お前馬鹿なの!?なんなの!?」
「若の気が変わらぬうちにと思いまして!ささ、下にタクシーも呼んでおりますので一旦家に戻ってご準備をされないと間に合いませんよ!!」
「だあああもう分かったよ!!行けばいいんだろおおお!!!!」
そう言うと和泉は渋々ながらも孝之助と高虎に見送られながらタクシーに乗り込んだ。
なんとか和泉を出立させることに成功した高虎は、隣で和泉に手を降っていた孝之助に申し訳なさそうに頭を下げた。
「ご協力、お忙しいところ本当にありがとうございました…ああでもして頂けなければ、若はフランスには行かなかったと思います。」
「いやいや、今月ほんと暇だしさ、気にしなくていいよ。」
「どうしても若に母上様に会って頂きたい一心で動きましたが…ですが若の父上である南在さんにこのように送り出すような真似をさせてしまったことは、深く反省しております…!!」
「んなこと謝らなくていいって!!俺はあいつを自由に生かしてやるためにあいつの父親になったんだから、母ちゃんにも会わしてやりたいって…思ってたしな。」
そう言ってニッと明るい笑顔を見せる孝之助に対し、高虎は顔を俯けながら言った。
「若がもしこのままフランスで母上様達と暮らされる‥という話になったとしてもでしょうか…?」
「……まあ…寂しくないって言うと嘘になるが、どこで暮らそうとあいつの自由だよ、あいつの人生はあいつのもんだ。」
「……南在さん…。」
「さあ、戻ろっかね。」
孝之助はそう言って笑うと、事務所を覆うような真っ青な空を見上げながら事務所へと戻っていった。
そうして単身フランスへと飛び立った和泉の乗った飛行機は無事青空に溶け入り、
その空を和泉もまた、不安と期待が入り混じったような複雑な表情で眺めていたのであった…。
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