Re:1 最恐の新入社員
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-…チッ…チッ…チッ…
(上手く丸め込まれた気しかしない…やっぱり怖い…。)
「……。」
依頼人を待つ間、佐奈は進一郎とともにのしかかるような沈黙の時間を過ごしていた。
『あの…進一郎さん…』
「何だ。」
『どうしてこの事務所にいらっしゃったんですか…?私達のこと…嫌ってたはずじゃ…。』
「………。」
『うっ…すみません…。』
(私何謝ってるんだろう…というかよくよく考えると、バベルの時私進一郎さんに啖呵切りまくってるから怒ってるんじゃ…。
それに仲良くなるったってヒナさんには半分恋愛感情が後押ししたから出来たというか…ううう…)
「…おい。」
『ひいいっ!!は…はい?!!』
「依頼人だ。」
悶々と一人考え込んでいた佐奈は進一郎の言葉で顔を上げると、目の前には憔悴しながらも上品な装いの依頼人が立っていた。
佐奈は慌てて依頼人を応接室のソファに案内すると、自分もその前に腰掛けた。
『えっと、このたび担当させていただきます橘と南在です。川本さん…ですね?今回はどういったご依頼で…?』
「……それが…私の大切な娘がいなくなってしまったのです…どうしても探して頂きたくて…それで私……!!」
『失踪事件…ですか…。』
思わず目からこぼれた涙を拭うように顔を覆った依頼人に、佐奈は慌ててハンカチを差し出した。
だがその隣で表情ひとつ変えることなく話を聞いていた進一郎は、淡々と言った。
「失踪事件なら生活安全課、事件性があるなら刑事課に頼め、なぜわざわざこんな事務所に頼むのか気がしれないな。」
『進一郎さんーーーーーーーーーー!!!!』(小声)
「間違ってはいないはずだ、こんな所で大金を支払ってまで依頼を行わずとも日本の警察組織は有能だ。」
『進一郎さんお願いですからもう黙って下さいいい!!!!うちの依頼を何さりげなく横取りしようとしてるんですか!?さてはそれが狙いですか!???』(小声)
佐奈が慌てふためきながら小声で進一郎に抗議していると、わなわなと震えながら依頼人が立ち上がった。
佐奈は依頼人を怒らせてしまったのかと思いなだめようと近づくと、依頼人は進一郎をキッと睨み付けた。
「警察なんてなんの役にも立たなくってよ…!!あんな組織…私は大っ嫌い…!!」
「何だと…?」
『しっ…進一郎さん、川本さんも…お…落ち着いて下さい…!!!!』
「あの方々は私の娘を探してなんてくれなかったわ!!それどころか門前払いの酷い対応だったのですわよ…!!」
「何県警のどこの警察署だ、担当警察官の名前も教えろ、今すぐ免職にしてやる。」
『あの今そーゆう事言ってるんじゃないと思うんですけど…。』
バタバタとそれぞれの発言が入り乱れる中、依頼人は感極まったように佐奈に失踪したという家族の写真を手渡した。
「それにこちらの探偵事務所は真摯に対応してくれるって評判だもの…私の娘を…どうか探して下さいませ…!!」
『はい!!それがうちの事務所の信条ですから!!勿論探しだして見せます…!!』
ー…ペラッ…
『ん?』
「……。」
「私の大切な大切な娘のココアちゃんですの、どうぞ宜しくお願い致します…!!」
そう言って依頼人が手渡した写真には、ふっくらとした可愛らしい子猫が写っていた。
思わず言葉を無くした佐奈の横で、進一郎は呆れたようにボソリと言葉を返した。
「これは警察では相手にされなくて当然だ、管轄が違う、これは保健所だ。」
「ちょっとあなたこれこれって…私の大事な家族ですのよ!!」
『…はは…猫のことだったんですね…』
言い争う依頼人と進一郎を見ながら、佐奈は一人静かに書類を書き進めた。
前警視総監という人間を果たしてペット捜索などにこき使ってもいいものなのか、佐奈は募りに募った不安に、一人顔を曇らせていたのだった…。
ー…バタン…
『ペットの捜索ではありますが依頼は依頼です。明日から捜索しますので!!』
「……猫をか?」
怪訝そうな顔でそう言った進一郎に、佐奈は深く頷きながら笑顔で答えた。
『当たり前です…!!依頼人の為なら大小かかわらずに依頼解決に取り組む、それが我が探偵事務所でありますからっ!!進一郎さんも南在探偵事務所に入社した以上、お手伝いしていただきます!!』
「……。」
相変わらず無愛想な顔のまま進一郎は言葉を返さなかったが、
佐奈はそんなことはお構いなしと言わんばかりに、満面の笑みでニッと笑ってみせたのであった。