Re:1 最恐の新入社員
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ー…ドサッ!!
「この資料、一枚10部ずつコピーしとけよ。」
「…………。」
「はいすみません自分でやりますー忘れて下さーい。」
翌日、相も変わらず皆と打ち解けようともしない恐怖の新入社員を、和泉はなんとかこき使おうと悪戦苦闘していた。
だが進一郎に睨まれあっさりすごすごと撤退した和泉に、九条は呆れたように言った。
「バカですねぇ…。」
「だってムカつくだろ何なんだあいつは!!没落オールドルーキーのくせに生意気だ!!なあ佐奈!!」
『……。』
「佐奈?…佐奈ーーーーー!!」
『えっ?あっ?何か言いました?』
ぼうっと何かを見つめる佐奈の視線の先にあるものを見て、和泉は少しいじけながら佐奈を呼んだ。
佐奈の視線の先には、先程仕事場に現れた少し髪を切ったらしいヒナがいたのだ。
『ヒナさん髪切ったんですよ…!!長い髪も好きだったんですけど、何だかヒナさんのトラウマが少し軽くなった気がして…嬉しくて…かっこよくて…!!』
「あんだけ長くて10センチそこら切ったって変わんねーわ!!そしてあいつただ鬱陶しくなって適当にざくざく切っただけだろ絶対!!」
『なにを言うんですか!!あれには深い深い心の葛藤と理由がですねぇ!!』
ー…ギャーギャー…
「…深い理由があるの?その散髪。」
「…いえ別に。」
今朝も変わらず楽しそうに過ごす佐奈達を、進一郎は一人遠巻きに見ていた。
皆との距離を一定に保ちつつ解せないという顔を浮かべる進一郎、そんな進一郎を見た孝之助は佐奈に声をかけた。
「佐奈!!ちょっといいか?」
『あ、はーい!!』
それから連れられるまま応接室に腰を下ろした佐奈だったが、
孝之助から告げられた予想外の言葉に、思わず驚き立ち上がっていた。
『わっ……私が進一郎さんと一緒に仕事をですか……!?』
「おう、よろしく頼むわ!!」
『そんな…孝之助さん…私が使えないからって人柱に…!!』
「いや別に進一郎バケモノの類とかじゃないからね?取って食ったりしないからね?」
怯えて恐れおののく佐奈に孝之助はフッと笑うと、少し困ったように煙草に火を灯した。
「正直ね、俺も進一郎の考えが分からねえのよ、昔から俺は兄貴のこと苦手だったし、突然お前の元で働かせろって言って奇襲されたようなもんだしな。」
『……。』
「でも今回あいつは何か思うところがあってお前らのそばに来たと思うんだ、目下の人間に興味をもつことなんて皆無だったあいつがさ…だからこそ、お前に任せたいなと思ったんだ。」
『え…?』
孝之助の言葉に佐奈は不思議そうな顔で顔を上げると、孝之助は佐奈の頭をポンポンと撫でて笑った。
「佐奈は人の気持ちを解くのが上手いからなぁ。」
『そ…そんなこと…!!』
「初期のヒナをああもあっさりと手懐けたじゃねーの、俺なんかより全然凄いよ、お前は。」
『手懐けたって…でも…そ…そうですかねぇ…?』
「そうだとも!!じゃあ次の依頼お前と進一郎に渡すから、頼むな~♪」
『はい!!……って何か乗せられてません?私…。』
「あはは!!考え過ぎだぞ佐奈~!!」
................................................................
ー…バタン
「佐奈。」
『…ヒナさん!!』
孝之助の部屋から出て来た佐奈を迎えたのは、心配そうな顔を浮かべるヒナだった。
ヒナは孝之助から話を聞いていたようで、不安げな佐奈に声をかけた。
「…大丈夫?」
『大丈夫ですよ!!進一郎さんだって何だかんだ言っても孝之助さんの血のつながったお兄さんなんですし…!!きっと根っこは優しいに決まってます!!』
「…今の依頼、終わったらすぐに手伝うから。」
『…ありがとうございます!!でもヒナさん徹夜とかして無理しないで下さいね?私の方が心配になっちゃいますから!!』
「…うん。」
そう言ってニッコリ明るい笑顔を見せた佐奈に、ヒナも思わず頬を緩めた。
いつも自分の身を一番に気遣ってくれる優しい佐奈、ヒナはふとこみ上げる感情に押されるままに佐奈の頬に手を伸ばした。
『…ヒナさん…?』
「……。」
「職場の風紀を乱すな働け。」
「『!!!!!???』」
その瞬間、突然二人の背後に現れた進一郎は溢れんばかりの威圧感で二人を睨み付けた。
せっかくのいい雰囲気を邪魔されたヒナは不機嫌そうに進一郎を見ると、一人部屋へと戻っていった。
「おおっ!!進一郎グッジョブ!あいつ中々使えるじゃねえか!!」
「……次は和泉でしょ…PSP没収されても知りませんからね。」
こうして孝之助になかば言いくるめられたように進一郎とともに依頼を受けることとなった佐奈。
不安にかられる佐奈を前に、恐怖の新入社員は淡々と仕事をこなしていたのだった…。