Re:1 最恐の新入社員
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ー…ガタッ!!
『し…新入社員が入るんですか!?』
「はい、そうみたいですよ。」
『…あっ、皆さんお久しぶりです!!これからもどうぞ宜しくお願いします!!』
「…誰に言ってるんですか。」
うららかな日差しの指す春の日。
あの事件のほとぼりも冷めた穏やかな事務所に、歓喜にも似た佐奈の声が響き渡った。
佐奈はコホンと咳払いをすると、話を戻し興味津々に九条に問い掛けた。
『九条さん面接したんですか!?女の子ですか?男の子ですか?』
「…………んー…。」
『九条さん?』
興奮気味に質問を投げかける佐奈に九条は少し言葉をつまらせ微笑んだ。
その様子に佐奈が少し不思議そうに首を傾げると、和泉が佐奈の背後からため息混じりに声をかけた。
「お前よく懲りねえなあ、新入社員。」
『懲りないって…だって後輩が入るのってワクワクするじゃないですか!!』
「こき使えるから?」
『違いますよ!!それは和泉さんでしょ!!』
「ハア…まあこき使えるもんなら使ってみてください…。」
「『?』」
和気あいあいと楽しそうに思案する二人をよそに、九条は一人ハアと大きな溜め息を吐きながら言葉を返した。
その様子に二人は不思議そうに首を傾げながらも、楽しそうに話を続けていた。
「九条さんこれ、昨日のデータです。」
「ああヒナ…ありがとう。」
「…どうしたんですか?」
「ん?ああ、いや…ちょっとね。」
ー…バタンッ…
「おはようさん~。」
『孝之助さん!!おはようございまーす……ん?』
事務所のドアが開き、出社してきたどこか浮かない顔の孝之助に佐奈が挨拶すると、
孝之助の背後にいたなにやら見覚えのある顔に、佐奈は思わず驚き口をつぐんだ。
『……へ?』
「……えー…今日は皆に新しく入る新入社員を紹介いたします…。」
「……。」
そう言った孝之助に続いて現れたのは、他でもない孝之助の兄、南在進一郎だった。
進一郎の登場に顔を強ばらせた面々は、突然の新入社員は恐らく進一郎に縁のある警視庁の人間なのだと悟り、ゴクリと唾を飲みこんだ。
だが次の瞬間、進一郎の口から出た予想外の言葉に一同は更に困惑し硬直した。
「南在進一郎だ、以後宜しく頼む。」
「『!!!!!????????』」
「えーっと…みんな…どうぞ宜しくしてやってね……?」
「『え…えええええええええええええええ!?』」
「……。」
苦笑いで困ったような顔を浮かべる孝之助、
そんな孝之助の言葉を遮るように佐奈と和泉はあまりの事態に声を上げ、ヒナと九条は表情を変えること無く目を細めていた。
そう、新入社員はこの男、南在進一郎本人だったのだ……。
「だはははは!!!!どうせ性格難有りでどこにも天下り出来なかったんだろざまあ!!!!」
『ひいいい和泉さん後ろっ!!後ろっ!!!!』
「和泉、地雷をわざわざ踏み抜きに行きましたね。」
「……バカですね。」
確実に進一郎の地雷を踏み抜いた和泉が一人笑い転げていると、進一郎は有無を言わせぬ威圧感と殺気を放ちながら和泉を捕まえた。
「…南在家の人間として認められたくば少しは恥ずかしくない振る舞いをしろ低能。お前らもだ、もう既に就業時間は開始しているはずであろう、呆けている暇があるのか…!?」
「『ひっ…!!は…はいっ…!!』」
進一郎の言葉と威圧感にその場にいた一同は肩をすくませ、わらわらと蜘蛛の子を散らすようにそれぞれのデスクへと戻っていった。
デスクに戻りながら和泉は小さくチッと舌打ちすると、不満気な様子で小言をもらした。
「アレのどこが新入社員なんだよ…新入社員なら新入社員らしくしろっつの。」
『新入社員というよりかは社長の現場視察のようですが…孝之助さんは一体何でまた…。』
「孝之助さんが一番困惑してるんですよ、なんせ昨日の突然の連絡から、翌日の押し掛け入社ですからね。」
『そ…そうなんですか…?』
「めんどくさい…。」
「…ぶつくさ文句を言っている暇はあるようだな…。」
「『ひいい!!はい、ありませんね、はい!!』」
「あの…所長俺なんだけど……。」
"最恐"の新入社員を迎えどよめき立つ南在探偵事務所。
南在は南在でも"南在進一郎探偵事務所"になってしまいそうな危機をひしひしと感じながら、
孝之助は未だ理解できない進一郎の行動に、ガシガシと頭をかきながらタバコに火を落としたのだった…。