31.リバースヒーロー
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ー…ミーンミンミンミン…
「…暑い…さすが九州ですね…。」

あれから半年、
九条は都会の東京を離れ、スーツ姿のまま人里離れた村に足を踏み入れていた。
「無人駅に無人販売……このご時世に…平和ですねぇ…。」
季節はようやく梅雨を終えて7月に差し掛かろうとしている中、
じめじめと汗ばむ気候に、九条はシャツの袖を折りながら携帯電話を取り出した。
「げっ…圏外…!?この人に会えなさそうな山々からどうやって探せと…?」
ー…ブロロロ…
『九条さーん!!お待たせしましたー!!』
「佐奈さん!!」
電波を拾わない広大な自然の中で途方に暮れる九条の前に現れたのは、半年ぶりに会った佐奈だった。
佐奈は九条の隣に車を停めて九条を乗せると、右も左も緑ばかりののどかな道を走り始めた。
「助かりました、電波も届かないですしどうやって探そうかと思っていたところでした。」
『孝之助さんにもうすぐ九条さんが着くって聞いてたので…ここ人にも中々遭遇しないですからねぇ…アハハ…』
「みんな変わりないですか?」
『はい…そうですね…』
...............................................................
ー…ピーチチチ…
「……やっと見つけたぜ…今日こそ観念しやがれ。」

「……グルルルル…。」
「うおりゃああああああ!!!!」
「ギャアアアアアア!!!!」
ー…ドガシャーン!!!!…ピチチチチチ……
突如生い茂ったのどかな山中からは雄叫びと、何かが倒れるような物音が響き渡った。
一斉に飛び立つ鳥達を見送りながら、老人たちはそれを気にも留めること無く作業を続けていた。
「お、今日は大物があがったみたいやのう。」
「ついに山の主かえ?アハハハ。」
老人たちは農作物の世話を続けながらそう笑い合うと、
木陰に座り込むこの農村に強烈な違和感を発する人影に目を向けた。
「そういえばあそこの兄ちゃんは毎日あの木の下でアルミのノート抱えて何しよるんじゃろうか?」
「あの兄ちゃんはなんでも凄い"ワクチン"を作るプロごたあよ、孝之助ちゃんが言いよったけえ間違いねえ。」
「ワクチンちゃ何ね?」
「アホ、薬たい薬。うちにもいい農薬作ってもらおうかのう。」
「おお、そりゃええ、この時期になると虫がついてかなわんからのう。」
ー…カチカチカチ…
「…おーい、兄ちゃん!!」
「?」
「今度うちにもいい農薬作ってくれんかねえ?」
「………………はい?」

あれから半年、九条を除く四人は佐奈の実家のある九州の農村部に身を寄せていた。
一連の事件でのほとぼりを冷ます為でもあったが薬漬けになっていた和泉と、あの日以来BCIが壊れ全く使えなくなるほど酷く衰弱してしまっていたヒナの体の療養のためでもあったのだ。
『ヒナさーん!!九条さんが到着されましたよ~!!』
「…何でヒナはあんな所でパソコンを…?」
『何か不思議なことにあそこがものすごく電波を拾うんでですね、家にいなければだいたいあそこがヒナさんの定位置です。』
よっこらせと気だるそうに木陰から立ち上がるヒナを見て、九条は少し呆れたように笑った。
「引きこもりを強制的に引きずり出す村ですね…ここは……ん?」
…ドスッ…ドスッ…ドスッ…
「……は?」
「おう、腹黒男じゃねーか!!相変わらずの腹黒顔だな!!」
そう言って笑いながら山から降りてきた和泉に、九条は思わず言葉を失った。
和泉の肩には明らかに和泉よりも大きなイノシシが担がれており、和泉はその獲物を駆除依頼のあった家にいつもの様に運んでいった。
「佐奈さん、あれは一体…?」
『ああ、和泉さん体が鈍ったって言って猪や熊と格闘するうちに周りのお家からよく猪の駆除依頼貰うようになっちゃって…今じゃこの村のちょっとしたヒーローなんですよ!!』
「あの、ヒーローというよりも私にはもののけ姫的なものにしか見えないんですけど…。」

「おおーい!!九条っち~!!」
九条がドン引きながら和泉を見送っていると、長靴に麦わら帽子、首にはタオルと完全に農家に馴染みきった風貌の孝之助が現れた。
額の汗を首にかけたタオルで拭いながら爽やかな笑顔を見せる孝之助に、九条はまたも呆れながら言った。
「孝之助さん、郷に入りすぎってただのおじさんと化していますが。」
「んなっはっは!!こんな人気のねえとこでめかしこんでたって浮くわ暑いわ動きにくいわでな、それよりもどうよ、そっちは?」
「こちらはいつでも大丈夫です、再開するための初期費用の回収は十分出来ましたから。」
「マジか!?すげえな、こんな半年で?」
孝之助達と離れ、九条はこの半年間一人で資金調達をしていた。
驚く孝之助に九条はニコッと笑顔を見せると、懐から一冊の預金通帳を取り出した。
「何この額…通帳のゼロの数が見たことねえ数になってんだけど…。」
「あれからヒナのバベルワクチンの需要が跳ね上がり、それを売って回ったら大金が舞い込み続けてましてね。(現在進行形)」

「……相変わらず転んでもタダじゃ起きないよね、九条っち…てかバベルもう無いじゃん!!」
「いいんですよ、バベルと類似したウイルス兵器が今後出ないとも限りませんし、ヒナの自動更新付きなんですから安いくらいですよ。」
「ほほう…。」
「それにもうヒナは"ただのパソコンオタク"です、名前が出たとしても問題ないでしょう。」
「……そだな…!!」
そう言って通帳をしまいながら言う九条に孝之助は感心したように頷くと、よしっと気合を入れて立ち上がった。
「じゃあ、もう一回やり直しますかね…南在探偵事務所!!」
「はい。」
「おーい!!お前ら来週からまた東京戻るぞ~~~!!!!!!!!」
「えっ!!俺まだ山の主との決着がまだなんだけど…」
「構いませんよ和泉はもう都会の喧騒に馴染めないでしょうからこの山の中に置いて帰りましょう。」
「てめえ人を野生動物のように言ってんじゃねえ!!!!」
懐かしい言い争う声に笑い声、
再び揃った五人の姿に佐奈は顔をほころばせると、隣にいたヒナを見上げた。
『やっとこれで元通りですね。』
「うん。」
『……電波良くなるって喜んでます?』
「うん。」
『ふふふ…じゃあ今日はみんなで盛大に酒盛りしましょう!!私もお母さんと料理沢山作りますので…行きましょう!!』
「うん。」

「おーい!!ヒナ、佐奈先行くぞっ!!」
「『はーいっ!!!!』」

-END-
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