27.「26.5」
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「ヒナ、お前もここを出たら俺のとこに来い!!」
「………はい?」
突然キラキラした目で接見に訪れた孝之助。
その孝之助の言葉に、ヒナは何のことを言っているのか分からず不思議そうな顔を浮かべた。
「昨日言ってただろ、もう普通の生活は出来ないって…」
「……。」
「お前の弁護が終わったら俺は弁護士を辞める!!そして探偵事務所を作って人助けをする、俺と一緒に働こう、ヒナ!!」
「コナンですか。」
「ばっか誰が殺人事件解決したいって言ったよ。普通に働くんだよ、個人の依頼を安価で解決できるようなさ、そんでゆくゆくはお前らが日本を救うんだ!!!!」
「…………話が飛躍しています。」
「飛躍なんてしてるもんか、もう一人いるんだがそいつも一緒に…鬼に金棒だ!!お前がここから出てくるまで席あけて待ってるからよ、絶対に生きて出て来ような、ヒナ!!」
「……。」
何かが吹っ切れたかのようにそう明るい笑顔でこれからの夢を語る孝之助に、
ヒナも呆れたようにキョトンとしながらも、思わず少し頬をゆるめていた。
「じゃあ……また生きて日本に戻ることが出来た時は…仲間に入れて下さい。」
「おう!!ってえ…?」
「朝比奈、時間だ。」
「……どういうことだ…?おい、ヒナ!?ヒナ!!」
ー…バタン
「……!?」
意味深な言葉を一言残したまま接見の時間を終えたヒナ。
孝之助はまた次に聞けばいいかと思っていたのだが、その機会は当分訪れることはなかったのだった…。
.............................................................
ー…ガタッ
「取り下げ……!?」
「ああ、朝比奈の案件にはもう関わるな。」
数日後、突然呼び出された先で告げられたのは、ヒナの釈放及び被害届の棄却だった。
突然のあり得ない展開に孝之助が釈然としない顔をしていると、男は更に苛ついた様子で孝之助に言った。
「もみ消しだ、それ以上は詮索無用の機密内容だ。お前はただ後の残りの処理を終わらせるだけでいい。」
「そんな…じゃあ朝比奈はどこに…!?」
「もうとっくにこの国にはいない。お前がモタモタとしているからこうなったのだ、役立たずにも程がある。」
「………。」
そう言うと男は怒りが収まらないようで、持っていた書類をバンと机に叩きつけた。
孝之助はその様子を終始見つめてはいたが、頭の中はアメリカに連れ帰られたのであろうヒナのことと、あの言葉ばかりが胸にざわついていた。
ヒナはどこからかもう自分が連れ帰らされることに気が付いていたのか。
"生きて帰れたら"とは…一体どういうことなのか……。
男の言う役立たずとは意味する事こそ違っていたが、
孝之助はあの時無理にでももっと話を聞いてやればよかったと、自分の不甲斐なさを責めていた。
「こちらの手駒にするつもりだった朝比奈を取られた上に警察組織は被害を受け損だ。今度こそきちんと働け、孝之助。」
男はそう言うと不躾に孝之助に新たな弁護の依頼書を手渡した。
だが孝之助はその書類を握り締めると、意を決したようにそれを突き返した。
「俺はもう…弁護士辞めます。他の弁護士に当たって下さい…。」
「何をふざけたことを言っている、"一族の恥さらし"の分際で。」
「………兄さん…。」
孝之助はそれ以上言葉を出すことが出来ず、ギュッと唇を噛み締めた。
孝之助が兄と呼んだ目の前のその人は孝之助より11歳年上の兄であり、日本の警察のトップである警視庁の、警視監であったのだ。
圧倒的な存在感を放つ兄は、なにか言いたげな弟を前に高圧的に命令した。
「今度の依頼は冴嶋組組長の孫息子の弁護だ。この男が跡目になるかどうかで今の冴嶋組は割れている、こいつを火種に冴嶋組の壊滅を狙え、いいな。」
「……。」
否応なしに依頼書類を握らされた孝之助は、添付されていた写真に写るハーフだと思われる銀髪の少年に目を留めた。
冴嶋組の内情のことは知っていたし、この少年が跡目にされるために無理矢理連れて来られた少年だということも孝之助は知っていた。
救うことすら取りこぼし続ける自分に、陰謀がらみの依頼ばかりを押し付けられ断ることすら出来ない自分、
そしてその陰謀に巻き込まれようとするまだ未来のある若者達。
体裁と自分の地位ばかりを気にして他者を物のようにしか見れない一族へ怒りは、ついに孝之助の限界大きくオーバーしていた。
ー…バンッ…!!
「…俺は…あんた達みたいにあいつらを利用する駒だなんて思えないし思いたくもない…。」
「……何だと?」
「冴嶋和泉の弁護は受けるが彼にとって一番いいようにする、朝比奈のことだって放っておいたりしない、これからはもう二度と…兄貴の指図は受けない!!俺は好きな様に生きる!!」
「由緒ある南在家に泥を塗る気か。」
「そんなもん…クソ食らえだ…!!」
「……救えないバカだな。」
今まで一度も自分に声を荒らげたことなど無かった弟を、兄は黙ってじっと睨み付けた。
だが当の孝之助も腹をくくったのか一歩も引かず、その勢いに押された兄は面白くなさそうに勝手にしろと言い捨て部屋を出たのだった。