26.奪われた日常
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ー…ドンドンドン!!
「すみません!!開けて下さい!!」
一方、ビルから出て助けを求めようとしていたヒナは、最後の鍵の閉まった扉に足止めを食っていた。
何度も扉を壊そうと体当たりを繰り返したが頑丈な扉はびくともせず、代わりにヒナの腕からは大量の血が滲んでいた。
「くそ…そうだ…携帯…!!」
ヒナは全身のポケットから携帯を探したが見つけることは出来なかった。
だがヒナはハッと自分の頭にあるBCIの事を思い出すと、焦る自分を抑えて意識を頭に集中させた。
(和泉にメールを送れば…!!佐奈の家からならすぐに来れる…頼む…見てくれ…!!)
ヒナは自分のパソコンを介して和泉と佐奈、そして九条にもメールを送ることに成功すると、
和泉がそのメールに気付いて駆けつけてくれることを祈りながらその場に倒れこんだのだった…。
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ー…ポタ…ポタ…
「……っ…!!」
一方、必死の応戦が続いていた孝之助だったが、既に体には数カ所の切り傷がついていた
滲み滴る血にフラフラになりながら、孝之助はその場に立っているのがやっとの状況だった。
「…ハア…ハア…今なら傷害罪で見逃してやるぞ、どうだ?」
「…死ね。」
「…ワンワンワンッワンッツ!!!!」
「タマ!?」
瀕死の孝之助に男がトドメを刺そうとナイフを振り下ろした瞬間、間に飛び込んできたのはタマだった。
タマは果敢にも男の手に噛み付くと、男はそれに怯み持っていたナイフを手から滑り落とした。
「チッ…!!この犬…離せ!!!!!!!!」
ー…ガンッッ!!!!!!
「!!!!」
手に噛み付いていたタマを引き剥がそうとする男に、孝之助はその隙を逃さず持っていた棒を振り下ろした。
気絶し倒れこんだ犯人の息を確認すると、孝之助は痛む体を引きずりながら、その場にあったロープで犯人を拘束した。
「これでよしと。痛て…くっそー…お前についた弁護士にものっそい圧力かけてやるからな~…。にしてもタマお前やっぱ名犬だなぁ…助かったよ。ついでにもう一つ…俺の携帯取ってきてくれるか…?」
孝之助は流れる血にもう立ち上がる気力も無いようで、そう言って力なく笑った。
タマはいつも孝之助に言われたものを取ってくる遊びをしており、すぐに机に置いてあった携帯を孝之助のもとに届けた。
「ありがとな、タマ……えっと…番号はと…」
孝之助はそう言うと、力を振り絞り何処かへ電話をつないだ。
咳き込みながらもひと通りの話を終えた孝之助は、だらんと力が尽きたように携帯を手から滑り落とした。
「…ハア…ハア………ったく……ご丁寧に走馬灯が見えやがる…。」
孝之助は薄れゆく意識の中で、事務所の皆の顔を思い出していた。
自分の意志で生きようと決めたあの日から、いつもそばにいたのはあいつらだった。
ぶつかって、喧嘩して、一緒に泣いて、本当の家族以上に家族だと思っていた。
「もう少し…一緒に生きててやりたかったんだがなぁ…」
孝之助はそうポツリとそう呟くと、気を失った。
孝之助がつい先程まで咥えていた煙草は
鮮紅色の血の海に落ち、その火を消したのだった…。
【26】奪われた日常 -END-
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