26.奪われた日常
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ー…ドサッ
「よし、今のうちに男の方はさっさとバラしちまうぞ。」
「女の方はどうしてここで殺さないんすか?」
「そんなこと知らねえよ、俺らは取り敢えず言われた通りするだけ…」
「おーい、佐奈~!!ヒナ~!!」
「…?」
男達が倒れたヒナにトドメを刺そうとしていたその瞬間、背後から二人を探していた和泉が現れた。
和泉は男達の集団を見つけて不思議そうに近寄ると、足元に倒れている二人の姿を見つけ表情を一変させた。
「え……佐奈…ヒナ…?」
「おい、あいつも事務所の従業員の奴じゃなかったか?冴嶋和泉とかいう…」
「…本当だ、探す手間が省けたな。」
「お…おい!!しっかりしろよ!!おい!!!!!!」
和泉はそんな男達の言葉など気にも留めず男達をかき分け二人に駆け寄った。
二人はかろうじて息こそしているものの、和泉の呼びかけに反応することはなくかなり危険な状態だった。
涙を流したまま気を失った佐奈と、きっとそれを守ろうとしてボロボロになったヒナ。
そんな二人の変わり果てた姿を見た和泉の手は、抑えきれない感情にガクガクと震えていた。
「てめえらが……やったのか…?」
「ははっ!!ビビって助けに来たとこ悪いが、お前も一緒にしてや…」
ー…バキイッツ!!!!!!!!!!……ガシャーン!!
「…な……!?」
和泉はポツリと一言呟いたかと思うと背後にいた男を壁際までふっ飛ばした。
飛ばされた男がうめき声を上げ起き上がろうとすると、更に和泉は男に馬乗りになり男の顔を容赦なく殴った。
ー…バキッ……バキイッッ!!!!!!
「か…はっ…や…やめ…」
ー…バキイイイッツ……ドサ…
「……っ…あ…あ…!!」
「ひっ…バ…バケモノだ……!!」
和泉は血のついた鈍器で殴りかかってきた男達をいとも簡単にねじ伏せ、
あまりの力の差を感じ許しを請う男達を、顔の原形が分からなくなるまで執拗に殴り続けた。
男達の声は既に消え失せ耳障りな音だけが響く中、
残りの男達は正気を失った血まみれの鬼を前に、ただただ震えて立ち上がることすら出来ずにいた。
そして和泉が戦意喪失してガクガクと震える男に手を上げた、その時だった。
ー…ガッ!!!!
「和泉!!止めろ!!!!!!」
「……!?」
もう抵抗する気のない相手を殴りつけようとした和泉を止めたのは、九条とともに駆けつけた孝之助だった。
和泉は孝之助の声にハッと我に返ると、血で真っ赤になった自分の手を見て足元に倒れた男達から離れた。
「おっ…さん……?俺……ごめん…俺…!!」
「正当防衛ってことにしといてやる、それよりもあいつらを病院に運ぶぞ!!」
「そうだ……ヒナ…佐奈…!!!!!!」
やっと正気を取り戻した和泉は慌てて佐奈とヒナを支えると、事務所の車に二人を乗せた。
ー…カツッ
「ひっ……!!」
「あなた方がうちの従業員を殺そうとしたんです、警察には言わないでおいてあげますが、分かってますね。」
「はっ…はい…はい…!!」
「二度と私達の前に現れないと約束して下さいますね。」
九条は怯えて動けずにいた男にそう詰め寄ると、
男はすでに何の反論をする気力も無いようで、ただひたすら九条の言葉に首を縦に振り続けたのだった…。
ー…ブロロロロ
「あいつら…いいのか?」
「本丸がこんなとこにわざわざ顔を出すわけがありません。
どうせ小金欲しさに雇われただけの他人の寄せ集めでしょう、問い詰めても何も出て来ません。」
「そうか…。」
ー…ギチッ…
「おっさんごめん…俺…また…こんな…こんな事……!!」
「和泉…。」
病院へと向かう車の中、和泉は正気を失った自分自身をひたすら責め続けていた。
だが孝之助はそんな和泉を責めることもなく、いつもと何ら変わらぬ調子で和泉に言葉をかけた。
「お前がいなきゃ佐奈とヒナは死んでた。嫌な役目をさせて悪かったな…でも俺はお前に心底感謝してるよ、和泉。」
「……!!」
「孝之助さん…。」
うなだれ動揺しきっていた和泉だったが、孝之助の言葉で少し落ち着きを取り戻し顔を上げた。
そして車はある個人病院に到着し、孝之助は病院の裏口に車を停車させた。
「よし着いた、俺の知り合いの医者に話通してあるから裏口から入れる、運ぶぞ。」
「「はい!!」」
そうして佐奈とヒナは孝之助の知人の医師の手当を受ける為、秘密裏に病院に搬送された。
ケガをして動けない二人の身を案じてとった苦肉の策だったが幸いにもそれが功を奏し、
二人はなんとかこの病院で一命を取り留めたのだった…。