26.奪われた日常
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ー…バタン
「只今戻りました。」
「おう、九条っちおかえり!!オタク君は大丈夫そうだった?」
「はい…でもそのことで少しお話したいことがあるのですが…皆は…?」
事務所に戻った九条がそう言って事務所の見渡すと、
和泉が仮眠室から出て来ただけで、ヒナと佐奈の姿はどこにも見当たらなかった。
「ああ、佐奈とヒナはこの間の聞き込みで漁業組合の倉庫街に行ってるよ、もうすぐ戻ってくると思うけど…そういや遅いなあいつら。」
「どうせまた二人でデートがてらに寄り道でもしてんだろーよー。」
「…漁業組合の…倉庫…?」
その言葉に九条は少し考えこみ顔を曇らせると、佐奈とヒナの携帯を鳴らした。
だが二人共携帯には出ず、九条は孝之助に尋ねた。
「孝之助さん、二人の居場所分かりますか?」
「へ?だから漁業組合の倉庫だって…」
「そうじゃなくてGPSを辿った詳細な場所です。和泉、念の為二人を探しに行って下さい。」
「念の為って…何のだよ。」
「いいから早く!!」
状況をまるで理解できていない和泉は不思議そうに首をかしげた。
何の根拠もないと言えばそれまでだが、九条はなんとなく感じたその嫌な予感に、和泉を強引に二人の元に向かわせたのだった…。
....................................................................
『今日はお忙しい中ありがとうございました!!』
「いやいや、こんな可愛い女探偵さんなら大歓迎だよ!!頑張ってね!」
『はい!ありがとうございます!!』
九条の心配とは裏腹に何事もなく聞き込みを行っていたヒナと佐奈は、予想以上の収穫に意気揚々と事務所へと戻っていた。
『ふふ~可愛いですって。』
「知ってる。」
『ヒ…ヒナさんってば…照れるじゃないですか!!もうっ!!』
「自分でふったくせに…。」
いつもと変わらず和気あいあいと仲良く歩く二人。
そんな二人が人気のない倉庫街を歩いて事務所に戻っていると、ヒナの携帯がけたたましく鳴り響いた。
「九条さん…?はい、朝比奈です。」
「ヒナ?良かった繋がって…佐奈さんも一緒にいる?」
「はい…いますけど。」
どこか焦ったような声色の九条にヒナが不思議そうに返事を返すと、九条はヒナに指示を出した。
「状況は後で話す、最大限に注意を払ってすぐに事務所まで戻って、いいね。」
「はい、分かりま…ーガシャンッ!!」
「…ヒナ?どうしました、ヒナ!?」
「ツー…ツー…ツー…」
「……!!」
突如言葉途中に切れたヒナの電話に九条はすぐにかけ直したが、ヒナが呼び出しに応じることはなかった。
九条は動揺を隠せずに立ち上がると、二人が持っているGPSを辿って現在の位置情報を割り出した。
「どうしたんだ?」
「孝之助さん、私達もヒナ達の元に向かいましょう。」
「?」
「私達の事務所は恐らく…次のターゲットになっています…!!」
.............................................................
ー…カラン…
『ヒ…ヒナさん…!!』
「……!?」
突如背後に感じた気配にヒナが振り返ると周囲には殺気立った男が四人立っており、
ヒナの持っていた携帯は金属バットのような鈍器で殴り飛ばされていた。
『な…なんなんですかあなた達…通して下さい!!』
「黒髪長髪のメガネと連れの女、この二人で間違いないんでしょ?」
『…!?』
男達の一人がそう他の男に尋ねると、男は深く頷いた。
その様子を見た残りの男達はニヤッと笑うと、それぞれ持っていた禍々しい凶器を佐奈とヒナに向けた。
「間違いないそうなんで、じゃ、そゆことで。」
「『!?』」
ー…ガンッ!!!!!!
振り下ろされた凶器を間一髪でかわしたヒナは、佐奈の手を持ってその場から走り去った。
だが男達の一人が発砲した銃が佐奈の足と手をかすめ、佐奈はその場に崩れ落ちた。
「佐奈!!」
『痛っ…!!ヒナさ…早く逃げ……』
ー…ガツッッ!!!!!!
「……っ……!!!!」
追いついた男達に鈍器で殴られたヒナは、出血で意識が朦朧としながらも動けない佐奈を守ろうと必死に抵抗した。
だがこの圧倒的な劣勢に為す術はなく、ついに攻撃の標的は佐奈にも向けられた。
「大人しくしててくれよ、あんたはここじゃ殺さないからさ。」
『……やっ…!!』
「佐奈!!」
ー…ガンッ!!!!
『ヒ…ヒナさんっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
動けない佐奈に振り下ろされた鈍器だったがそれが佐奈を直撃することはなく、
代わりに佐奈が見たのは、自分を庇うように盾になり頭から血を流したヒナの姿だった。
「ちっ…この死にぞこないが!!どけ!!」
『ヒナさんどいて!!!!死んじゃう!!やめて!!お願いやめて!!!!やめてーーーーーー!!!!』
ー…バキイッツ!!!!!!………ドサッ……
佐奈の必死の呼びかけも虚しく最後の一撃でヒナの意識は途絶え、その場に倒れこんだ。
床一面には自分の大好きな人の血でできた血だまりが広がっていた。
佐奈はその凄惨な光景の恐怖と痛みで、ヒナの後を追うようにその場で気を失ってしまったのだった…。