25.夏空の思い出
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「おや、楽しそうですね。」
「お!九条っち!!」
二人のいた川にかかっていた橋からひょっこり顔を出した九条は、わいわいと釣りを楽しんでいた二人を上から見下ろした。
「美術館どうだった?結構洒落てんだろ!」
「はい、とても楽しかったですよ。アートというものを受信するアンテナがへし折れてそうな和泉には向かないと思いますがね。」
「なんだとこの腹黒電波。」
橋の上から悪態をつく和泉を見て、九条は楽しそうに笑いながら空を見上げた。
真っ青な空と、夏特有のくっきりとした綿あめのような雲。そしてそれを縁取るような木々。
どこをとっても絵になりそうな景色に、九条は大きく息を吸った。
「たまにはいいものですね、自然も。孝之助さんが突然連れてきたくなった理由も分かりました。」
「だろ、何年か後には南在探偵事務所も田舎の自然の中で営業するか!!」
「ヒナが電波が悪いとか言ってスネそうですよ。」
「あはは!!確かにな!!」
孝之助はそう言って九条と笑い合うと、持っていた釣り竿を九条に差し出した。
「そうだ、ほらお前もこっち来て釣れ!!」
「いえ、私はいいですよ。」
「何で。」
「親子水入らずを邪魔しちゃ悪いですから。」
「いいって、ほらこれ釣り竿貸してやるから!!」
「いえ、本当にいいですってば。」
「「………。」」
なぜか頑なに釣りを拒否する九条を不思議がった和泉は、
たった今釣れたばかりのビチビチと生きのいいヤマメを九条の目の前に放り出した。
「ほら、すごくね!?」
「なああああ!!何するんですか和泉!!さっさと魚戻しなさい!!!!!!」
「九条っちまさか…魚嫌い?」
「………へえー…。」
「な…何言ってるんですか、そんなわけないでしょ。私部屋に先に戻って…」
ー…がしっ
「ほら、俺のヤマメちゃんとイワナちゃん。」
「ぎ…ぎゃあああああああああああああああああ気持ち悪!!!!!!!!!!!!」
今まで弱点らしい弱点が見当たらなかった九条。
どうやら生きた魚が苦手だという弱点に気付いた和泉と孝之助は、ここぞとばかりに九条をおちょくり楽しんだ。
そうしてその後、二人が怒った九条にボッコボコのメッタメタにされたのは
言うまでもありませんでしたとさ。
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ー…ガラッ
『あ、おかえりなさーい!!』
「ただいま…。」
「只今戻りました。」
部屋に先に戻っていたヒナと佐奈は、ずぶ濡れでボロボロな状態で戻って来た三人を見てぎょっと驚いた。
『え…何で三人そんなびしょびしょのボロボロなんですか…?』
「…気にしないで下さい。」
九条がそう言って置いてあったタオルで髪を拭きながら、ヒナの髪を結んでいるらしい佐奈を見た。
「佐奈さんは何してるんですか?」
『ヒナさんが髪が暑いって言うんで髪の毛結んでました~。』
「ふん、そんなもん切っちまえ。」
「まあまあ。」
佐奈はヒナの髪を結び終えると、キョロキョロと辺りを見回しながら孝之助に尋ねた。
『それはそうと孝之助さん、ここ広くていいお部屋ですけど…寝室がざっくり一部屋しかないんですけれど…?』
「え?いーじゃん、皆で川の字で寝ればいいだろ~!!」
『ええ~!?でも私一応女子なんですが…』
「いーじゃん、修学旅行みたいじゃねーか!!」
ー…ガタッ!!!!!!
「却下。」
皆がわいわいと言い合っていると、その空気を一刀両断するようにヒナが口を開いた。
今まで見せたことのないようなヒナの有無を言わせぬ圧倒感に皆がたじろいでいると、和泉がそんなヒナに食って掛かった。
「別に襲いやしねえよバアアカ、いつもいつも佐奈独り占めしやがってこのインテリクソメガネ。」
「でかい口を叩くな前科一犯。」
『前科一犯?』
「なっ…いつのなんの話をしてんだろなああはははははは!!」
「まあまあ、まあ正直言うと急に予約したもんだから部屋がこのでかい一部屋しか取れなかったのよ。まあここは俺に免じて許してよヒナ、お前が隣に寝れば問題ねえだろ!!」
「………。」
なだめるように割って入った孝之助にヒナはハアと溜め息をつくと、根負けしたように頷いた。
「分かりました…その代わり寝る順番はこうしてもらいます。」
「なにそれヒナ、俺が一番男として論外ってこと?おじさん切ないんだけど?」
『ははは…。』
ー…ガラッ
「ご飯のご用意が出来ましたので、お食事処へどうぞお越しくださいませ。」
「お、もうそんな時間か、じゃあ行くか。」
『やった~お料理も期待できそうですよね~楽しみ~!!』
「あーまじ腹減ったな~!!」
「全くです、誰かさんたちのせいで余計な体力使いましたので。」
「んな根に持つなよ~あ、今度は生け簀あったりしてな…プププ。」
「…和泉、次変なことしたらPSP人質に取りますからね。」
五人はそうしてわいわいと食事処へと向かうと、季節感溢れる美味しい料理の数々に舌鼓を打ったのでした。