24.置かれたハニーポット
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ー…バタン
「おはようございます。」
「おう九条っちおはよ、なあ千咲が出勤してねえんだけど何か聞いてる?電話かけても繋がらねえのよ。」
翌日、事務所には出勤しない千咲の事を心配して電話を繋げようとしていた孝之助の姿があった。
少し遅めに事務所に出勤した九条は、孝之助の言葉に首を横に振ってその手を止めた。
「そのことについてお話があります、全員揃って少し時間を頂いてもいいですか…?」
「…?」
.................................................................
ー…ガタッ…
『千咲ちゃんが…スパイ…!?』
「はい。」
「……まじかよ…。」
「……。」
九条から思いもよらぬ事実を告げられた面々は、皆一様に信じられない様子で言葉をなくしていた。
九条はことの経緯をざっくりと話すと、バベルの情報がコピーされている千咲のUSBを皆の前に差し出した。
「彼女は佐橋のバックにある組織の諜報員です。欲しかったバベルの情報を持っているのが私だと分かり、狙いを定めて近づいたようですね。」
「何だよ…じゃあずっと…俺達を騙してたってことなのか…?」
「初めからそのつもりで入社したと思った方がいいでしょう。」
昨日まで同僚として一緒に仕事をしていた千咲の真実を知った和泉は、困惑しながらも湧き上がるイラつきに頭をガシガシとかいた。
「…ありえねぇ…お前はじゃあ初めから気付いてたって言うのか…?」
「はい、大体は…ですがただ確証がなかったので泳がせていました。情報は聞き出せましたし、彼女は絶対にこれ以上うちの情報を口外できないようにして自由にしました。あとは彼女次第でしょう。」
「………。」
「失うものがある人間は諜報員には向きません、脅されたくらいで口を割る程度の諜報員なんてはなから使い物になりませんから。」
『九条さん…。』
全てを聞いた佐奈は複雑そうな顔で立ちすくんでいると、九条は佐奈の頭をポンポンと撫でた。
「尻尾を出させるためとはいえ辛い思いをさせました…頑張りましたね、もう嫌がらせの電話は来ないから大丈夫ですよ。」
『………!!じゃあ…椎名さんも、あの晒されていたサイトもまさか…!?』
「はい、彼女とグルだったようです。」
『……そんな…!!』
その事実を知らされた佐奈は、怒りのような憤りのような複雑な感情に襲われていた。
少しながらも先輩後輩として自分を慕ってくれていた間、彼女は何を思っていたのだろう。
かわいそうだとか言えるほどの心の余裕はなかったが、佐奈は行き場のない気持ちにギリリと拳を握り締めた。
「すまんかったな九条っち…俺が見抜けてれば…。」
「いいんですよ、これが私の役目ですから。それにこれではっきりしました、このバベルの情報が本物であるということも、佐橋がそれに繋がっていることも。」
「ああ…こうなった以上、向こうがなりふり構わず攻撃に出ないとも限らねえな。」
「…。」
『…そんな…。』
ー…ガタッ
「…ヒナ?」
今まで一連の話を黙って聞いていたヒナは、突如その場に立ち上がった。
ヒナは顔を深く俯けその表情をうかがい知ることは出来なかったが、その震えるほど固く握られた拳に、皆は驚きヒナを見上げた。
「話します…俺が知ってるバベルのことについて…。」
「!?」
『知ってる…って…?』
「……。」
「だからお願いします……早く…早くこの件から手を引いて下さい………!!」
蝉の音が聞こえ始めていたこの季節。
うるさいほどに響くその鳴き声をかき分けるように、ヒナはその重たい口を開いたのだった。
【24】置かれたハニーポット -END-
7/7ページ