24.置かれたハニーポット
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ー…バサッ
「佐奈さんっ!!今日の事案の報告書出来ましたっ!!」
『おおっ仕事が速い!!千咲ちゃん凄い手際がいいですねっ!!』
「佐奈よりも飲み込みが早いじゃねえか~佐奈抜かれるんじゃね?」
「和泉さんっ!!佐奈さんの教え方がいいんですから~っ!!」
あれから数週間、歓迎会が功を奏してか千咲も事務所の皆ともすっかり打ち解け、ある程度の仕事も一人でこなせるようになってきていた。
元々人当たりもよく小柄で可愛らしい千咲は、事務所のメンバーだけでなく依頼人からも評判も上々で、中には千咲目当てで訪れていそうな依頼人さえいた。
「えーと次の予約は…椎名さん…ですか…。」
『椎名さん?』
不安げな顔で予約表を握り締める千咲を見て、佐奈はハッとその理由に気が付いた。
この椎名という依頼人は前回の経過報告の時に千咲をいたく気に入り、セクハラまがいのことをしていたのだった。
『大丈夫です!!私も一緒に今日は付きますので千咲ちゃんには指一本触れさせませんから!!』
「佐奈さん…ありがとうございます…!!」
「でも女の子二人じゃ心配ですね…私もこの仕事終わらせたらすぐに一緒に応接室に入りますから、佐奈さんも千咲さんも無理しないようにね。」
「『…はいっ!!』」
そう言って九条は元気に返事をした二人を見て笑うと、二人の頭をポンっと優しく叩いた。
佐奈は相変わらず九条は優しいなぁとその背中を見送ったが、隣にいた千咲は顔を真っ赤に赤らめてぼうっと九条の姿を見つめていた。
『…千咲ちゃん?』
「えっ?あ、いえ…九条さんって素敵ですよね…何か大人でかっこ良くて…。」
『ですよね~!!私もここに入社した当初は九条さんにときめいてましたもん~!!まさしく王子様ですよね~!!』
佐奈の言葉に千咲はブンブンと首を縦に振り頷くと、興奮気味に佐奈の方を振り返った。
「でもこの事務所の皆さん本当にイケメンですよ!!入った時驚きましたもん、気持ち悪いおじさんとか一切いなくて!!紅一点だった佐奈さんが羨ましいです!!」
『そうですねえ~暑苦しいおじさんならいますけどね。』
「おいコラ聞こえたぞ佐奈!!お前来月減給決定!!!!!!」
『う…嘘に決まってるじゃないですか孝之助さん~~!!!!私はどんなに暑苦しくてもうざったくても孝之助さんの事お父さんだと思ってるんですよ!?』
「うざってえとも思ってたのかよ!!来月タダ働き決定ーーー!!!!」
「ふふ…もう、ホント羨ましいなあ…佐奈さん…。」
ー…バタン
「やあ千咲ちゃん、こんにちは。」
「し…椎名さん…。」
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ー…トントン
「あの…すみません、ちょっといいですか…?」
『千咲ちゃん、どうしたの?』
今日の仕事を終え佐奈が帰りの準備をしていると、千咲が青ざめた顔で話しかけた。
その只ならぬ様子に佐奈が心配そうに駆け寄ると、握りしめていた携帯を千咲は佐奈に差し出した。
「さっき椎名さんから渡された紙に書かれてあったサイトにアクセスしたんです…そしたら…こんな事に…。」
『…!!何これ……!?』
震える手で渡された携帯の画面を見た佐奈は、思わず言葉を失った。
そこは恐らく依頼人の椎名が運営する個人サイトで、千咲を隠し撮りした写真が掲載されていた。
佐奈は震える手で画面をスクロールしているとそのサイトはある掲示板に繋がり、そこには千咲への一方的な思いと、それを妨害したと佐奈への怨念めいた誹謗中傷が嫌というほどに綴られていた。
「いつの間にかこんな…私一体もう…どうしたらいいか…ごめんなさい…佐奈さんにまでこんな迷惑を……私…私……!!!!」
『だ…大丈夫よ、すぐにヒナさんに言って削除してもらうから!!私のことは気にしないでいいよ、千咲ちゃん!!』
「ひっ…ひっく…は…はい……。」
佐奈は泣き崩れる千咲と嫌な脈を打つ自分自身を落ち着けると、すぐさま千咲を連れてヒナの部屋に向かった。
事情を聞いたヒナはすぐにプロバイダに削除要請を出し、証拠としてサイトの情報を保存し始めた。
椎名のサイトをくまなく調べていたヒナの隣で画面を見ていた佐奈は、改めて自分に当てて綴られた恨みつらみを見て言葉を失っていた。
面白がった周囲の名も知らぬ人物と一緒になって、自分を誘拐して襲おうだの殺そうだの、
本気ではないと分かってはいても字面で突きつけられると震える手を止められなかった。
「佐奈大丈夫…?このサイトすぐに消すから。」
『わ…私は大丈夫ですよ?本名も出てないし本気じゃないって分かってますし!!今はそれよりも千咲ちゃんの方が……!!』
「……。」
心配するヒナに佐奈は必死に笑顔を作ると、部屋の隅で泣きじゃくっていた千咲の背中をさすった。
今大変なのは自分じゃないんだと佐奈は自分を落ち着けながら、椎名のサイトや掲示板がインターネット上から消されるのを黙って見守っていた。
だがサイトの掲示板が消されてから数日後、次第に異変が起こり始めたのだった。
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ー…プルルルルル
「はい、南在探偵事務所です。」
「あんたが使えない女探偵さん?ねえ、一回やらせてよ。」
『…!!』
ー…ガチャン!!!!!!
「佐奈さん…どうしました…?」
『あ…はい!!間違い電話だったみたいです、最近多いんですよねえ~あはは…。』
「……。」
頻繁に佐奈に当てた嫌がらせの電話が佐奈の仕事用の携帯に届くようになり、次第に電話もメールも量を増していった。
それはサイトを消されたことで逆上した椎名とその周辺の人間が、まさに怒りのはけ口として佐奈をいたぶっているようで、
佐奈は皆に特に千咲とヒナに心配をかけまいと、必死で隠し一人耐え続けていたのだった。
(大丈夫大丈夫…きっとすぐに飽きてなくなる…千咲ちゃんだってやっと落ち着いてきたんだし…今思い出させちゃ…ダメ……だ………)
ー…ガターン!!!!!!!!!!!!
「…佐奈さん!?」
「え…佐奈!?おい大丈夫か!?佐奈!?」