24.置かれたハニーポット
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「歓迎会?」
『はいっ!!皆さんと千咲ちゃんの親睦を深めるためにいかがでしょう!?』
あれから黙々と何かを考えこんでいた佐奈は、何かを決意したように孝之助に千咲の歓迎会を提案していた。
『千咲ちゃんにバベルのことと東雲さんの事を伏せておいたほうがいいのは分かります…でもそのせいで一人のけものにされているというのをなんとなく感じて千咲ちゃんも気にしています…
だからせめて歓迎会でぱあっと飲み会でもして仲良くなれれば…最近"皆さん"疲れているようにも思いますしここは息抜きもかねていかがでしょう…!!』
「…お…おう。」
圧倒する勢いで孝之助を説き伏せる佐奈の必死さに、孝之助は佐奈のもう一つの思いにもピンときていた。
(それと…ヒナが塞ぎ込んでるの元気づけてやりたいんだな…)
『それに…』
「?」
『私が入社して皆さんがケーキとクラッカーで歓迎してくれた時、私自分の居場所ができたようで本当に本当に嬉しかったんです…!!だから…』
「…ああ、そだな。よし!!皆には俺から言っとくよ、今日は午後依頼も入ってないし早めに切り上げて飲み行くか!!」
『…はいっ!!!!』
佐奈はそう返事をすると嬉しそうにニコッと笑った。
そうして一日の仕事が終わり帰ろうとする和泉達を佐奈が引き止めると、南在探偵事務所の一同は孝之助の予約した店へと向かったのだった。
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ー…ガヤガヤ…
「では、千咲ちゃんの入社を祝って…カンパーイ!!」
「『乾杯~!!』」
皆が一同にグラスを重ねると、千咲は嬉しそうにその場で涙ぐんだ目をこすった。
「皆さん…わざわざありがとうございます!!私なんかのために…こんな…嬉しいですうう~…!!」
「まあまあ今日は親睦会も兼ねた歓迎会だから!!無礼講で飲め飲め!!」
『そうですよ千咲ちゃん飲んで飲んで~!!』
「じゃあ俺も遠慮なく!!チョコサンデーと黒蜜アイスと~♪」
「お前な、ビールと一緒にアイス食うなよ…見てるだけで食欲なくすわ…。ヒナ、ほらお前もそんな端っこにいないでこっち来て飲め!!」
「……。」
『ヒナさん、一緒に食べませんか?』
「…うん。」
わいわいと楽しそうにお酒を飲む皆の中で、相変わらずヒナは一人浮かない顔だった。
お酒や料理を進めても気のない返事をするばかりのヒナに佐奈もどうしていいか分からず、ヒナの隣で持っていたお酒を一杯二杯と空にしていた。
「あはは!!和泉さんって面白いですね!!」
「いやいやこれマジでうまいんだからな~。」
「和泉だけだろ~…もう…」
(でも千咲ちゃんは楽しそう…良かった…。)
「浮かない顔ですね、佐奈さん?」
『九条さん…。』
明らかに気まずそうな雰囲気の二人の空気を察し、二人の間に入ってくれたのは九条だった。
九条は空になっていた佐奈のグラスを手に取ると、隣でぼうっとしていたヒナを見て言った。
「佐奈さん多少飲み過ぎのようですので風に当たらせてあげなさい、ヒナ。」
「…。」
『く…九条さん…!?』
「まあヒナがいかないなら私が行きますけど。」
「…行きます。」
そう言うとヒナはムスッとした顔で席を立ち、皆がお酒を飲んでいる個室から出て行った。
そのやりとりを見て一人戸惑っていた佐奈に九条がニコッと笑って目配せすると、佐奈は九条に頭を下げヒナの後を追ったのだった。
「あれ、佐奈さんは朝比奈さんとどこに…?」
「全く世話が焼けますよね、あの二人は。」
「……。」
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ー…ヒュウウウウウウウ……
『か…風…強いですね…。』
「…うん。」
『……。』
居酒屋の中庭のような場所に出て外の空気を吸っていた二人だったが、
相変わらず重苦しい沈黙を繰り出すヒナにさすがの佐奈もしびれを切らせ始めていた。
『あの…ヒナさん、何かあったんですか…?最近ずっと元気ないですし…』
「………大丈夫、何でもない。」
『…………何でもない訳ないです。それとも私が原因ですか?私…何かしましたか…?』
「いや、何もしてない。」
『なら何なんですか…!!!!言ってくれなきゃ分からないです!!好きな人が辛いなら話を聞きたいと思うし力になりたいと思うのが当たり前じゃないですか!?それとも私には話せないこと…なんですか…?』
「……。」
思いの丈を必死に伝えた佐奈だったが返ってきたのはまたも重苦しい沈黙だった。
その沈黙に佐奈の目からは思わず涙がこぼれ、佐奈は涙を拭いながら顔を押さえた。
『ヒナさんはいつもそうです…自分一人で抱え込んで勝手に結論を出して……私はもっとどんなことでも相談して欲しいです…!!!!私はヒナさんの彼女なんですらかああああ……!!』
「佐奈……」
目の前で泣きじゃくる佐奈を見てさすがに少し慌てたヒナは、佐奈の手をぎゅっと握った。
『…!!』
「佐奈が嫌いだとかそんなのじゃない…。」
『ヒナさん…?』
ヒナはそう言うと俯いたまま佐奈の手を握りしめ続けた。
だがその時佐奈の手を握り締めたヒナの手が震えていることに気付き、佐奈は思わず目の前のヒナを見上げた。
「絶対に話す……でも今はまだ……ごめん……。」
『………ヒナさ…』
ー…ガタッ
『「!?」』
突如背後から聞こえた物音に佐奈とヒナが驚き振り返ると、そこにはトイレに行っていたらしい千咲の姿があった。
千咲は二人に気付きペコリと頭を下げると、二人のいた中庭にひょっこり顔を出した。
「お邪魔してすみません…佐奈さんの頼んでたお料理来ましたのでお知らせにと…。」
『あ、そうなんですね!!じゃあ…戻りましょうかヒナさん…!!』
「うん…。」
「……。」