23.バベル
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ー…タタタタ…
「おはようございます佐奈さん。」
『あ…高虎さん!!』
東雲大臣が事務所を訪れてから二週間。
コンビニから沢山の荷物が入ったビニール袋を抱えて戻って来ていた佐奈は、事務所への帰り道の途中に高虎と遭遇していた。
「今から事務所へお戻りですか?」
『はい!!今ちょっと買い出しに出てて今戻るところです!!』
「私もちょうど事務所に用事があって向かうところだったのでご一緒しても宜しいですか?お荷物お持ちしますよ。」
『えっ…あ、いや大丈夫ですよ!?重いですし…』
「いえ、このぐらいはさせて下さい。」
そう言うと高虎は佐奈が持っていた袋を代わりに持って笑った。
相変わらずとても優しい高虎に佐奈は少し照れたように礼を言うと、一緒に事務所までの道を歩き始めた。
『相変わらず普通にしていると極道の方だとはとても思えませんね。』
「あはは、やっぱりそうですか?私この顔で軽自動車乗ってると下手すれば大学生に間違えられるんですよ。」
『そ…それはそれで平和なような怖いような。』
佐奈がそう怪訝な顔で言うと、高虎は更にアハハと楽しそうに笑っていた。
この自分の隣で穏やかに笑う青年は間違いなく冴嶋組次期組長だ。
脳ある鷹は爪を隠すとでも言うのか、普段高虎が組員に対してはどのような顔をしているのかを考えると佐奈は少しぞっとした。
「時に佐奈さん、佐奈さんは若のこと、どう思っておられるんですか?」
『へっ…?』
高虎の突然の思わぬ言葉に佐奈がなんと答えればよいのか動揺していると、高虎は少しはにかみながら続けた。
「若は近頃は本当に穏やかになりました…それは佐奈さんを初め事務所の方のおかげだと思っていますし、私はそれがとても嬉しいんです。」
『…高虎さん…。』
「宜しければ若のこと…これからもどうぞ宜しくお願いいたします…。若は大切なものの為なら身の犠牲など考えず突っ走ってしまう優しい人です、いくら強いとはいえ私はそれが心配でならない…だから…どうか…!!」
『そ…そんな頭を上げて下さい高虎さん…!!和泉さんは私の大切な仲間です!!そんなこと…当然ですよ!!』
「佐奈さん……ありがとうございます…!!」
高虎はそう言って何度も何度も佐奈に頭を下げると、佐奈もまた笑顔で何度も頷いたのだった。
ー…ドタドタドタ…バタンッ!!
『「!?」』
「だからちゃんと調べてるって言ってるだろうが!!こんなとこ来て監視してる暇あんなら少しでも日本の為に尽くしやがれ!!」
「ですが南在さ…」
「いいから帰れ!!」
ー…バンッ!!!!!!
『孝之助さん…?』
事務所に到着した二人が事務所への階段を登っていると、孝之助と思われる怒鳴り声が聞こえそれと同時に黒服を着た男達が事務所から現れた。
高虎はその男達の姿を見た途端顔を強ばらせ、突如佐奈の手を引き身を隠した。
『へ…?た…高虎さん?』
「すみません…少しじっとしていて下さい…!!」
『……!?』
ー…カツカツカツ…
階段のそばの狭い物置に身を隠した佐奈と高虎は、息を潜めて男達が通り過ぎるのを待った。
何が起こっているのか分からない佐奈は、言われるがまま高虎の胸に顔をうずめ息を殺していた。
『…ぷはっ!!ど…どうしたんですか!?』
「あ…突然申し訳ございません…!!ですがさっきの男達に私と事務所が関わりがあると気づかれない方がいい。」
『さっきの男達って…東雲大臣の…?』
佐奈が状況がつかめず首を傾げると、高虎は難しい顔を戻し、困ったような顔で笑った。
「まあ…暴力団と関わりがある事が知れてもいい事はないものです。行きましょう。」
『…?はい…。』
..................................................................
ー…ガタタン!!
「く…組長になったああああ!?」
「はい。若輩者ですが…以後宜しくお願い致します!!」
事務所に着いて突如告げられた事実に皆が驚きの声を上げると、高虎もまた改まったように頭を下げて笑った。
「おいおい…冴嶋組組長ともあろう奴が供の一人も付けずにフラフラしてんなよ…虎…。」
『わ…私知らぬこととはいえ組長さんにコンビニの袋三つも持たせてしまいましたあああああすみません……!!』
「いえ、いきなりそんな態度を変えないで下さい!!組長になったとはいえそれは組内の事、事務所の皆さんには今まで通り接して頂きたいのです。」
「じゃあ冴嶋さんは引退したってことかい?高虎くん。」
「…はい、組長は数カ月前から体調を崩していて…今は都内の病院に入院しています。」
「え…ジジイが入院…?」
「はい、あまり病状はいいとはいえません…。」
高虎から聞いた思わぬ事実に少し驚いたような顔を見せた和泉だったが、それを皆に気付かれまいとすぐに顔をプイと背けてしまった。
その様子を見た高虎は、分かってはいたものの少し寂しそうな表情を浮かべた。
「今日は…一応そのご挨拶と報告に伺ったまでですので。所で南在さん、先程出て行かれたのは…政界の関係者ですよね?何かあったのですか…?」
「ああ…見てたのか、いや、見苦しいもん見せちまったなぁ…あはは…。」
「いえ…実はうちの組にも一時期佐橋防衛大臣の秘書がよく顔を出していまして…。私が組長になってからは手を切っていますが気になってしまい…いや、出すぎたことを申し上げま…」
「「・・・佐橋!?」」
「へ…?佐橋が……何か‥?」
「高虎くん…ちょーっとその話…詳しく聞かせてもらえないかな?」
「は…はあ…。」