23.バベル
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ー…バタン
『おはようございまー…!?』
いつもと変わらぬ朝、
何の気なしに出社した佐奈は、事務所内にいた見知らぬ黒服の男達に目を丸くして驚いていた。
「何だ貴様は。」
『えっ…!?わ…私はここの社員で…というかあなた達こそ何ですか…!?』
「佐奈さん!!」
ギロリと睨みをきかせる男と口論になりそうになる佐奈を九条は静止すると、佐奈を連れて皆がいる事務所の奥に引っ込んだ。
事務所の奥の仮眠室には九条の他にもヒナと和泉もおり、狭い部屋で皆窮屈そうに時間を潰していた。
『皆さんおはようございます…あの九条さん…あの人達は一体…?』
「SPだよ、政府要人の。」
『せ…政府要人!?応接室に誰か来てらっしゃるということですか!?』
「東雲賢三(シノノメケンゾウ)。」
『しののめ…って…ええええっ!?あの…最近テレビでよく見る…?』
驚き慌てる佐奈に三人が頷くと、佐奈は更に事態が飲み込めなくなり思わず口をつぐんだ。
東雲賢三議員といえば今の政界で次期総理大臣候補として名高く、政治に疎い佐奈ですらテレビで見ない日はないと言うほどの超有名議員だったからだ。
『ど…どうしてそんな有名なお方がうちにいらっしゃってるんですか…?』
「孝之助さんが昔、東雲さんの顧問弁護士やってたらしくってね、その時のよしみでどうしても頼みたい依頼があるそうなんだけど…」
「おっさんと二人で話したいから俺らは出てけってあのクソSPに人払いされてここにいるってわけ。」
「…。」
『そんな…予約もしないでなんか傲慢ですね。』
「庶民の悩み相談なんて二の次だとでもいう態度ですよね、次の選挙で間違いなく彼は四票失いましたね。」
呆れたようにそう言って椅子に腰を下ろす九条に、佐奈も頷きながらその場に腰を下ろした。
『それにしても政治家の顧問弁護士なんてやってたんですね、孝之助さん…私初めて知りました…。』
「皆知りませんでしたよ、私と会うよりも前のことでしょうし孝之助さん弁護士時代のことあんまり話したがりませんからね。」
『そんなに凄い弁護士だったのに…なんで辞めちゃったんでしょう。』
佐奈のもっともな疑問に九条は少し微笑みながら首を横に振った。
ここにいる全員"孝之助に拾われた"という事実こそ共通しているも、実際孝之助のことについては詳しく知らないことだらけだった。
そんな中、仕事途中で部屋から追い出されたヒナは、少し困ったように九条に言った。
「あの…九条さん、俺受けてる仕事の納期今日の午前中なんですけど…」
「そうだよねえ…私もここで油売ってるほど暇じゃあないんですけど…困りましたね。」
「よし!!じゃあ俺があの胸クソ悪いSPぶっ倒してきてやんぜ!!」
「明日のワイドショーに出たくなければ大人しくしてなさい和泉。」
ー…ガターン!!
「… …!!」
『孝之助さん…?』
「怒ってますね。」
突如仮眠室まで聞こえた物音と孝之助の声に佐奈は心配そうに応接室の方を見た。
ぼんやりと聞こえた孝之助の声は怒っているようで、その声は状況の掴めない佐奈を更に不安にさせた。
「あまり、上手くいっていたというわけではなさそうですね。」
「おっさんあーゆう奴嫌いそうだもんな。」
『…確かに。』
ー…バタン…
「!!」
扉の閉まる音に皆が目を向けると、そこには孝之助とともに応接室から出てきた東雲賢三が立っていた。
怪訝な表情を浮かべる佐奈達を東雲は一瞥すると、少し笑みを浮かべながら四人のもとに近づいた。
「朝から突然の訪問誠に申し訳ございません、急ぎの所用でしたので…お許し下さい、九条誠一さんに冴嶋和泉さん、そして朝比奈了さん…。」
「…?」
「では、よろしくお願い致しますね。失礼致します。」
突如名前を呼ばれて驚いた三人に東雲はニコッと意味深な笑顔を見せると、
軽く会釈をしてSPや部下を引き連れ事務所を後にしたのだった。
「なんであいつ俺達の名前知ってんだ…?」
「さあ…。」
ー…ガチャ
『孝之助さん!!』
「お前ら…朝から悪かったな突然…。」
「構いませんが…何かありましたか?」
「ん…ああ…依頼っちゃ依頼なんだけど…どうもヤボ用でな…。」
応接室から出てきた孝之助はそう言うと、笑顔を見せること無く難しい顔でソファに腰を下ろした。
その様子はどこか疲れて参っているようで、佐奈は心配そうに孝之助のそばに駆け寄った。
『大丈夫ですか?孝之助さん…。』
「ああ、ありがとな。あと、後で全員話がある、仕事一段落したらみんな集まってくれ。」
『…はい!!』
孝之助の何か引っかかる態度と物言いが皆気にはなったものの、
各々デスクに腰を下ろし、東雲一同のお陰で滞っていた仕事を片付け始めたのだった。
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