22.父親は誰だ
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『うわあああ!!九条さん似合います!!本当にお医者さんみたいです!!』
「そうですか?佐奈さんもナース服凄く可愛いですよ♪」
あれから数日後、事務所には白衣を着て準備を進める九条と佐奈の姿があった。
そんな二人の姿を見ながら、和泉はソファでふてくされたように言った。
「絶対お前ら楽しんでるだろ~!!てか何で俺とヒナはダメなんだよ~。」
「お前らはどう転んでも医療関係者に見えないからだ。九条っち、じゃあ手筈通りに子供の無料検診ってことで対象の子供の口腔粘膜でサンプル採取と…あくまで母親にばれないように頼むよ。」
「はい、勿論です。」
『検診自体は全部嘘なんですか?それって問題には…』
「いえ、一人本物の医師の方がボランティアでお手伝いしてくださるそうなので、その方と現地で合流して私は助手という形で付きます。
和泉とヒナは対象親子が手筈通りこちらに受かっているか監視して下さい。受付予約貰ってるんで大丈夫とは思いますが念の為。」
「…分かりました。」
「はいはーい。」
声を揃えて返事をした和泉とヒナだったが、和泉はヒナをチラリと見るとプイッと顔を背けてしまった。
何も知らないヒナはその和泉の態度の理由が分からず不思議そうな顔を浮かべると、和泉とともに事務所を後にした。
「じゃあ、私達も行きましょうか。あ、荷物持ちますよ。」
『??あ、ありがとうございます…!!』
.....................
ー…ガヤガヤガヤ…
『えーと、待ち合わせてるお医者様どこでしょう…。』
「ん~…背の高い方なのでいたらすぐ分かると思うんですが…」
「すみません!!お待たせいたしました…!!」
突然掛けられた声に二人が振り向くと、そこには優しそうに笑う背の高い男性が立っていた。
『えっ…!?あ…あなたは…!!』
「才原侑と申します、今日はどうぞ宜しくお願い致します。」
そのどこかで見たことのある顔に佐奈が一人目を丸くしていると、九条は一度会ったことがあったようで再会を懐かしみながら話を進めた。
「今日は本当にボランティアなんて受けて頂いて良かったのですか?報酬をお支払いしても構わないのですが…。」
「いえいえいいんですよ!いつもやってることですし私なんかで力になるのであればいつでも言ってやって下さいね!!」
「本当に助かります…!!佐奈さん、才原さんはこの歳で個人病院開いてるんですよ~!!」
『へええ!!すごいです!!だってまだお若いですよね!!』
「いえいえ…田舎の病院ですしそんな凄いものじゃないですよ…!!」
侑はそう言って謙遜しながら笑うと、九条と佐奈と共に歩き始めた。
だが少し足を引きずるように歩く侑の様子を見て、思わず佐奈は侑を支えるように手を差し出した。
『大丈夫ですか?』
「あ…ありがとうございます…!!足が少し不自由で…申し訳ないです。」
侑はそう言って佐奈に笑顔で頭を下げると、佐奈もつられて笑顔で頭を下げた。
...............................................................
ー…ザザザッ
「はいこちら異常なし~どうぞ~。」
「そんな報告してくる暇あんならしっかり見張れ和泉!!」
「ええー。」
一方こちらヒナと和泉の見張り組は、相変わらずの険悪ムードのまま場をもてあましていた。
「だって暇なんだよー。」
「じゃあヒナとでも喋ってろ!!俺は今忙しいんだからじゃー切るぞ!!…ーブツッ!!」
「……。」
孝之助から一方的に電話を切られた和泉はふてくされたように電話をポケットにしまった。
正直俺は今ヒナと全く話したくない、というか出来るなら顔も見たくない。
和泉がヒナと距離を保ちながら監視を続けていると、二人のそばに幼児が物珍しそうな顔で近づいて来た。
「お兄ちゃん達そんなとこでなにしてるの?かくれんぼ?」
「ああ?かくれんぼじゃねーよ仕事仕事。母ちゃんどこ行った?迷子か?」
女の子は笑顔でううんと首を横に振ると、今度は傍らにいたヒナの方に目を向けた。
「お兄ちゃんはなにしてるの?お仕事?それなあに?なんでお兄ちゃんは男の人なのに髪長いの?」
「………。」
「?」
「おい、聞いてるんだから答えてやれよ。」
「……仕事、そう、パソコン、切りに行くのが面倒だから。」
「……………。」
全ての質問を無表情のまままとめて答えたヒナに、和泉のイライラは更に倍増していた。
そうだ、最近佐奈のおかげでか改善した気がしてたけどもやっぱりコイツはこういう奴なんだ。
こんな奴が…佐奈と結婚するなんて…有り得ない。
黙々と一人考え込みイライラが頂点に達した和泉は、くるりとヒナの方に向き直り怖い顔でヒナを睨み付けた。
「子供苦手だとか言ってねえでもっとちゃんと相手できるようになれよ…。」
「?…何で。」
「何でじゃねーよ!!お前がそんなんだとなあ、苦労すんのは佐奈なんだよこのクソメガネ!!」
「…?」
和泉が何でこんなにも怒っているのか、そしてなんでこんな事を言うのか一つも理解できておらず呆気にとられた様子のヒナ。
そのあまりの鈍さにしびれを切らした和泉は、ヒナの胸ぐらをガッと掴んだ。
「佐奈の腹にはなあ…お前の子供がいるんだよ!!父親のお前がそんなんでどうすんだよ!!本当なら俺が父親になってやりたかったわ!!!!!!!!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
「もう俺は帰る!!お前なんか知らん!!」
「い…和泉!!」
ー…バタバタバタ…
「お兄ちゃん大丈夫?ケンカはだめだよ?」
「…あ…ああ…すみません。」
突然和泉の口により知らされた思いもよらなかった事実。
ヒナは呆然とその場に立ち尽くしながら、
混乱する頭の中を一人必死で整理していたのであった…。