21.封の開かない手紙
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ー…ゴオオオオオオオ……
「さて…じゃあ私は最後の鎖をほどきに行きますか……。」
......................................................
ー…バタン
「最近そういやあいつ見ねえな、どうしたんだ?」
『琴子さんですか?そういえばなんか先週から旅行に行くって言ってましたけど…?』
「そうか…。」
あの事件からちょうど一ヶ月、
最近めっきり姿を見せなくなっていた琴子の所在を和泉が気にし始めたちょうどその頃、事務所の前でゴロゴロと騒がしい音が響いた。
ー…ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…バタン!!!!
「和泉ちゃん!!たっだいま~!!」
「おわっ!?琴子!!」
『あっ!琴子さん!!旅行から戻って来たんですね!!』
キャリーケースを転がし颯爽と事務所に現れた琴子に和泉が驚いていると、琴子は早速皆に買ってきたお土産を手渡し始めた。
「はいっ、これは事務所みんなにマカロンでしょ~、で、このワインは南在さんと九条さんに一本ずつ!!で、メガネ君にはコーヒーと…はい、佐奈には私とお揃いのラデュレのバッグチャーム!!」
『うわああああ!!可愛いー!!ありがとうございます~!!』
「ありがとうございます、フランスに行ってきたんですね。」
皆が琴子からもらったお土産を喜んで開けている最中、琴子は相も変わらず事務所のソファで寝ていた和泉に近づいた。
「和泉ちゃんにはハイこれ、お土産。」
「なんだこれ…俺には絵葉書ってえらく簡素だな。」
「絵葉書じゃないわよ、開けてみて。」
琴子はそう言うと小さな包を差し出し微笑んだ。
その様子に和泉が首を傾げながら袋の封を開けると、そこには一通の手紙が入っていた。
「…なんだよこれ。」
「手紙よ、和泉ちゃんのお母さんからの。」
「はああああ!?……………お前さ…ストーカーって意味知ってる…?」
「はいはいもうストーカーで結構ですよ、でも別にこれは和泉ちゃんの為だけにした訳じゃないからね。」
「はあ?どういう意味だよ?!」
「知らなくていいわよ。」
琴子はそう言ってニコッと笑うと、持っていたキャリーバックの蓋を閉め立ち上がった。
一方の和泉は訳がわからないようで琴子の腕を掴み慌てた様子で問い詰めると、琴子は和泉の頬をつまんで笑った。
「和泉ちゃんのお母さん、和泉ちゃんが来た後すぐに和泉ちゃんだって気付いて後を追ったけど見つけられなかったんだって。今は再婚して子供がいるけど子供達にはずっとお兄ちゃんがいるんだって言ってるそうよ、遊びに行ってあげたら?フランスに。」
「…え…!?」
「和泉ちゃん親子の関係を修復して欲しいって心から願ってる人がいるの。だから和泉ちゃん、幸せになってね。」
「ちょ…琴子!!!!」
「じゃあね、私まだお土産渡しに行くとこあるから行くわ。」
『琴子さんもう帰っちゃうんですか?今お茶いれようと…』
「あ、いいのいいの気使わないで!!それと佐奈、私ね、当分髪切らないことにしたから!!」
『へ?』
「じゃあね~☆」
琴子が去り嵐が過ぎ去ったように静かになった事務所、
何十年かぶりの母親からの手紙を受け取り放心状態だった和泉は、恐る恐るも手紙を手に一人仮眠室へと入っていった。
『和泉さん…。』
「…ほっといてあげましょうか、泣いてるかもしれませんし。」
『…はい!!』
それから和泉の手紙の内容を深く詮索する者はいなかったが、
仮眠室から出てきた和泉の赤くなった目と嬉しそうな明るい笑顔が、その全てを物語っていたのだった。
ー…ピンポーン…
「私よ私、開けて~!!」
「あ、琴子姐さんちわっす!!高虎さん今ちょうどあっちに…」
【21】封の開かない手紙 -END-
7/7ページ