20.天狗祭り
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ー…パタパタ
『わ~もうこんな時間…!!案内場所は…!?』
一人寝坊した佐奈は先に祭りの案内所に向かったらしい家族とヒナのもとに慌てて到着した。
佐奈が皆を探し辺りをキョロキョロ見回していると、外国人の観光客の相手をする父の姿が目に入った。
(…お父さん英語大丈夫なのかな。)
外国人の観光客用の案内文は予めある程度は用意されているのだが、
父はどうもイレギュラーな事を聞かれたようで、ジェスチャーを含めながら必死に会話を試みていたが中々伝わらないようだった。
「えーっと…なんて言っとるんやろうなあ…」
「…This festival admission fee does not need. Please pay money, only when you buy food.」
(この祭りに入場料はいりません、屋台で食べ物を買う時にだけお金を払って下さい。)
「あ…朝比奈くん!!」
「oh!!thanks!!」(そうかい、ありがとう!!)
ー…パタパタパタ…
「おお、すまんね助かったよ!!英語はどうも苦手でなあ…。」
「いえ、とんでもないです。」
「朝比奈くん朝比奈くん、こっちの棚の上のもとってもらっていいかのう?」
「朝比奈くん、こっちのも頼むわい!!」
「はい。」
「じいちゃん達、あんまりうちの客人を脚立がわりにこき使わんでくださいよ~!!」
「あはは!!そりゃすまんかったのう!!」

『…!!』
父に助け舟を出し、周りの皆とも打ち解けたように話すヒナ。
頼もしくて優しいそんなヒナの姿に佐奈はしみじみ素敵だなあと感慨深く見とれていた。
「佐奈、やっと来たのにボーっとしてっ!!朝比奈さんのほうがよっぽどあんたより働いてくれてるわよ!!」
『ボ…ボーっとしてたんじゃないもんっ!!感慨にふけってたんです!!』
「お!!姉ちゃんしごかれてるねえ~ドンマイ☆」
『佐々!!』
そう言って佐奈の肩をポンと叩いたのは、舞台の練習途中で抜け出して買い物をしてきたらしい佐々だった。
化粧をしたまま佐奈とヒナの所に遊びに来た佐々を、ヒナは驚きながらまじまじと見た。
「本当に日舞やるんだな。」
「朝比奈さん…昨日から俺のこと一体何だと思ってたんすか…?」
『また抜け出して…じいちゃんに怒られるよ。』
「いーのいーの、人気者はつらいんだから息抜きくらいさせてもらわないと~!!」
『あ、じゃあ私も見て回っちゃおうかな~…ねえヒナさ…』
「佐奈ー!!早く手伝いなさーいっっ!!!!!!!!!!」
『…。』
母の罵声に佐々とヒナはアハハと笑うと、佐奈もヒナのそばにいたいのを我慢して渋々手伝いに向かった。
それから数時間屋台で食べ物を買う暇すら無いまま働き続け、
佐奈が手伝いから開放されたのはすっかり夜も暮れ祭りも終わりに差し掛かった頃だった…。
....................................................
…ドサッ…
『つ‥疲れた…相変わらずこの日だけはどこから来たのか不思議なくらい人が増えるんだから…。』
佐奈はやっとの休憩に祭りの舞台が見える高台で浴衣姿のまま寝転んでいた。
夜といえども浴衣姿で動き回るのは暑くてたまらず、ひんやりした草の感触に佐奈はハアと息をついた。
ー…ドンドンドンッツ
『あ…神楽始まったみたい…。』
佐々が踊る神楽の舞台を彩る太鼓の音。
昔からこの音が聞こえるともうすぐ祭りが終わるなあと寂しくなったものだった。
ポツポツと静かに灯る提灯の色と賑やかに灯る出店の明かりをぼんやりと眺めながら佐奈は一人ヒナのことを思っていた。
(結局出店の一つもヒナさんと回れなかったなぁ…というか話すら出来てない…。まだ手伝わされてるのかな…ヒナさん…)
ー…ガサッ
『ん?』
(…あれ…気のせい…?)
突如背後の草むらで聞こえた物音に佐奈は少し怖くなり辺りをくまなく見回した。
昔からよく遊んでいる場所だからと油断していたが、女一人でそれも動きづらい浴衣でいる場所じゃなかったと佐奈は思い直し立ち上がろうとした、その瞬間だった。
ー…ザザザッツ

「見つけた。」

『ぎ…ぎゃあああああああああああああ!!』
突如暗闇から眼前数センチに現れた人ではない禍々しい顔。
そのあまりの恐ろしさに佐奈は腰が砕けてその場から動けなくなってしまっていた。
「ごめん、そんなに驚くとは。」
『ひっ…ヒナさん~~~~~~!!????』
想像以上に驚いた佐奈に逆に驚いた様子のヒナがかぶっていたお面を取ると、佐奈は涙目でヒナをポカポカと叩いた。
『怖いじゃないですかあああ!!し…死ぬかと思いましたよおおおお!!何ですかそのお面…』
「みんなが付けてみてって言うから。」
『ヒナさん黒髪ロングだから何か余計リアルに怖いんですよ~…。』
「でもこれ被るとメガネかけられないから見えない。本当はこうしたい。」

ヒナはそう言うと懐からメガネを取り出し、お面の上から被ってみせた。
黒縁メガネをかけたおもしろ天狗面に佐奈も思わず吹き出すと、強張った顔から一転笑顔を見せた。
『お父さん達がこき使って本当にすみません…大丈夫ですか?きつくありませんでしたか?』
「うん、大丈夫。楽しかったよ。」
『そうですか…良かった…』
「佐奈?」
佐奈はポツリとそう呟くと、不思議そうにするヒナの肩にもたれかかった。
さっきまでの心細さは消え去り、やっと触れられたヒナに佐奈は安心したように笑った。
『お祭りヒナさんと見て回りたかったです…また…お祭り一緒に行きましょうね?』
「うん。」
『ヒナさん…あの…』
「ん?」
佐奈はそう言って顔を赤くしながらヒナを見つめると、ヒナの唇に自分の唇を重ねた。
今まで抑えていた気持ちが溢れるようにヒナを抱きしめると、二人はその場に倒れこんだ。
「佐奈、浴衣かわいい。」
『本当ですか?嬉しいです…!!』
「それってはだけても自分で着れる?」
『…はい、浴衣もヒナさんの着物も着付けられますのでご心配なく...』
「なら良かった。」

二人はお互いの言わんとする事が一致しているのに顔を合わせて笑うと、ずっと触れたかったお互いを確かめるようにもう一度キスをした。
浴衣から顕になった首筋や胸にヒナの指が優しく触れるたび、その心地よい感覚に佐奈はびくっと体を震わせた。
『ヒナさん…大好きです…』
「うん、俺も大好き。」
時折漏れる二人の吐息と声をかき消すように太鼓の音が響く。
いつもの日常とは違った雰囲気に飲まれ体を重ねた二人が家に戻ったのは、
もう祭りの灯が下火になった頃のことだった。
