18.姿なき断罪人
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ー…カタン
「何作ってるんですか。」
『え?わああああああ!!九条さん!?』
佐奈が九条にお粥を作ろうと台所に立っていると、
風呂から上がって半裸状態の九条が耳元で突然声をかけ、佐奈は顔を真っ赤にして驚いた。
『び…病人なんですからふざけないで下さい!!服着て下さい!!』
「あ、お粥こげちゃいますよ。」
『えっ!?ああっ…!!!!』
「こんなに火強くするからですよ、塩入れました?」
『あ…いや、まだです!!』
「ほら、貸してごらん。」
明らかに佐奈よりも慣れた様子で手際よく料理する九条を見て、佐奈は感心しながら九条を見た。
『九条さんは本当に何でも出来ちゃうんですね…』
「まあ十年以上一人で暮らしてると出来ないこともなくなってくわけです。」
『…でも今日は病人なんですから早くベッドに横になって下さい!!』
「え~せっかく佐奈さんがいてくれるのに勿体無いなあ~。」
『いいですから~~~っ!!』
佐奈に促され渋々服を着てベッドに横になると、九条は台所に立つ佐奈を嬉しそうに眺めた。
「ここに来ることヒナも知ってるんですか?」
『はい、もちろん…!!』
「そうですか…それはなめられたものですねぇ。」
『へ?』
「いえ、こちらの話です。」
九条はそう言ってニコリと笑うと、佐奈が作ってくれたお粥を口に運んだ。
「うん、美味しいです!!」
『良かったです~!!ゆっくりとでいいので、沢山食べて元気になって下さいね!!』
「はい…ありがとうございます…!!」
箸を進める自分をを見て安心したように笑う佐奈。そんな佐奈に、九条はずっと気になっていたことを尋ねた。
「佐奈さん…佐奈さんは私が嘘をついているとか騙されるんじゃないかとか…思わないのですか?」
『え…?』
「私の素性を知っている人は私と話をする時大抵騙されまいと警戒した目をしています…きっとそれが当然の反応だと思うのです。」
『はあ…。』
「はあって…佐奈さん…」
突然の突拍子もない九条からの疑問。
九条にとっては意を決した質問だったのだが、当の佐奈はあまりそれを気にも留めていない様子であっけらかんと答えた。
『だって嘘なんて誰でもつくじゃないですか。現に私もさっきこのお粥に間違って砂糖を入れちゃったのですが、黙っていたので私も騙したっていうことになりますね?』
「…へ?」
『そんな事気にしてる暇があるならご飯もっと食べてくださいよ、ホラ、九条さん!!』
「…………はい…!!」
九条はそう言っておかわりを注ごうとする佐奈を見て少し霞みそうになる目をこすりながら嬉しそうに笑った。
「どうりでなんか甘いと思ったんです…おはぎ的な…。」
『あはは、すみません~でもこれが意外と美味しくて!!なんか砂糖が功を奏した感が…』
「ふふ…そうですね……。」
九条はそうしてよそってもらっていたお粥を全て食べきると、ベッドにうつ伏せに倒れ込んだ。
佐奈の手前、なんとか元気に振る舞おうとしていたのと九条だったが、やはり体はもう既に限界にきていた。
『九条さん大丈夫ですか!?』
「はい…でも佐奈さんが折角来て頂いているのに送れそうもなくてすみません…これ…タクシーのチケット使って下さいね…。」
『いやいや、私のことは気にしなくて大丈夫ですよ!!歩いてもたいした距離じゃないですし!!』
「ダメです、それでは私の気が済みません。」
九条は遠慮する佐奈にタクシーのチケットを握らせると、そのまま佐奈の手を握った。
『九条さん…?』
「佐奈さんは……うちに入って初めからヒナの事が好きだったんですか?」
『へ…?』
突然の思わぬ質問に佐奈は顔を赤くして動揺した。
だが九条は佐奈が答えるのをじっと待っているようで、黙って佐奈を見つめていた。
『えーと…さ…最初の最初は九条さんにときめいてましたよ…だって本当に凄く素敵だったので…!!でも九条さんに彼女がいるって聞いて諦めましたけど……。』
「それは…心底惜しいことをしました…ではタイミングさえ合っていれば佐奈さんはずっとここにいてくれてた筈だったんですね。」
『え……?』
「ヒナに嫌気がさしたらいつでもおいで。」
九条はそう言ってニコッと笑うと、佐奈にタクシーのチケットを余分にもう一枚握らせすぐに眠りに落ちた。
その綺麗で無防備な寝顔を見ながら、佐奈はバクバク言う心臓を必死に落ち着かせていた。
(ああああもうヒナさんすみません!!本気でときめいちゃいました~~~!!!!)
佐奈は益々赤くなる自分の頬をベシベシと叩くと、貰ったタクシーのチケットを握りしめ九条の部屋を後にした。
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ー…カチカチカチ…
「南在…探偵事務所…?」
カチカチとタイプ音だけが響く室内で、モニタの明かりに照らされた男はニッと奇妙な笑みを浮かべた。
ー…カチカチカチ……カチッ……
「そうか…あの男……九条誠一…そっか、ふふふ、ふふふふふふ……!!!!!!」