17.片思いリバーシ
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ー…ピーチチチ…
「『…は?』」
「だから、体が入れ替わっちまったんだって。」
ー…ピーチチチ…
いつもと変わらないうららかな朝、
突拍子もない事を言う和泉とヒナに、孝之助達は呆れた顔を返した。
「ったく、拾い食いで頭までついにやられたか!!」
「まったく…ヒナまで一緒になってふざけてる場合ですか、今日依頼が多くて忙しいんだから。」
「本当なんだって!!頼むよ、どうやったら戻るか考えてくれよ!!」
「……。」
『ヒナさん…?』
明らかに信じられない内容に、仕事に追われた孝之助と九条はまともに取り合ってくれなかったが、
佐奈は今まで見たことのないヒナの挙動に、一人戸惑いを隠せないでいた。
「とにかく遊びは後にして下さい!!いいですね、二人共!!」
ー…ガシャーン!!!!!!!
「「…ー!?」」
「冴島和泉出てこいコラアアア!!!!!よくもウチのもんに手ぇ出してくれたなあ顔貸せや!!!!」
「あ、この間絡んできた奴ら、しつこいな~。」
「和泉いいいい早く何とかしなさいっっ!!!!」
「了解~。」
突然事務所の下から響き渡ったガラの悪い大声、それ自体はこの事務所では大して珍しいことではなかった。
だが次の瞬間、そのチンピラ達をねじ伏せに表に飛び出していったのはヒナだったのだ。
ー…ガシャーン!!!!!
「ああ…?誰や貴様…」
「お前らのお目当ての…冴嶋和泉だろうがよ…。」
ー…バキッ!!!!ベキッ…!!!
『あわわわ!???ヒ…ヒナさんがアクティブに動いてますっ…!!!!』
「ど…どゆこと?」
目の前には明らかに戦い慣れしている様子のヒナ、
皆が呆気にとられながらその信じられないヒナを見ていると、今度はけたたましい電話の音が事務所中に鳴り響いた。
ー…プルルルルル
「はい、南在事務所…え?昨日頼んだプログラムが送られてきてない!?ヒナ!!昨日頼んでた仕事どうした!?」
「孝之助さん、坂上商事からも苦情の電話が入ってます…。」
「ヒナ!!!!てめえ喧嘩なんぞしてる場合じゃねえ!!さっさと仕事しろ!!」
「…俺がやります、その書類どこですか?一時間で仕上げますって伝えて下さい。」
「……は?いやいや和泉…お前に出来る依頼じゃねえって…。」
『あのっ…書類…昨日の多分これです!!!』
「ありがと。」
ー…カタカタカタカタ……
ー…カタカタカタカタ……
「おいおい嘘だろ…マジかよ…。」
「い…和泉がプログラミングしてる…?デタラメ打ってるわけじゃなさそうですね…。」
『本当に…ヒナさんなんですか…?』
「うん。」
「「……。」」
この後ヒナは事務所下でチンピラ全員に三指つかせて土下座させ、和泉は一時間で5件のネット依頼を完了させた。
完全に信用していなかった三人もこの信じざる得ない状況に、大方の仕事を片付けた上で再度話し合いが行われたのだった…。
.......................
「タマ、和泉はどっち?」
(こっち。)
「……。」
二人が入れ替わったことを信じてはみたものの、初めて直面する非現実的な事態に九条と孝之助は完全に頭を抱えてしまった。
「昨日階段転げ落ちて入れ替わったって…どんだけベタなのよ…。」
「戻る方法もベタに同じようにすればいいんですかねえ…。」
「てかもうそのままでもいいじゃん、紛らわしいけど。」
「良くねえ!!!」
「無理です。」
『……全然気付かなかった……ん…?』
外見と中身が二分してしまったらしい自分の好きな人。
それを目の前にして、佐奈は戸惑うとともにあることを思い出し顔を真っ赤にして声を上げた。
『ああああああああ!!』
「?」
『あ…あのっ…入れ替わったって…あの、いつからですか…?もしかして昨日出勤した時にはもう…?』
「ちちちちちち違うっ!!!!お前が帰った後だ!!!昨日は変わってなかった!!!」
「?」
自分の悪事がバレるのを必死に隠そうと和泉が頑張っている最中、またも突然の揺れが五人と一匹を襲った。
ー…ゴゴゴゴゴ
『また地震…!?今度は大きい…!!!』
「お…お前ら机の下に潜れ!!!早く!!」
「棚が倒れる…!!!!!!」
ー…ガシャーン!!!!!!!!!
『……ハア…ハア…。』
「……おさまった…皆さん大丈夫ですか!?」
『私はなんとかヒ…ヒナさん!!和泉さん孝之助さん!!タマ!!』
「…うっ…。」
揺れがおさまりぐちゃぐちゃになった事務所で、九条と佐奈は棚の下敷きになった三人とタマを助け出した。
幸い三人と一匹共に外傷はなく、すぐにムクリと目を覚ました。
「痛ぇ…最近まじで地震多すぎだろ…」
「……うん…。」
『あれ…?もしかして…戻ってます…?』
「「!!!!!!!」」
佐奈の言葉に和泉とヒナはお互い顔を合わせると、そこには自分自身ではない、元に戻ったお互いの姿があった。
懐かしい自分の体の感覚に、和泉は飛び跳ねて喜んだ。
「やっ…たあああああああ!!!!戻ったあああ!!!!」
「…良かった。」
『良かったです~!!!二人共怪我もないし元に戻って…ねえ孝之助さん!!』
「ワン!!」
『ん?』
「ちょっと孝之助さん冗談やめて下さいよ、ワンてなんですかタマじゃあるまいし…。」
「ワンワン!!!」
「「………・・・。」」
「…俺、こっちなんだけど。」
「「で……出たあああああああああああああああ!!!!!!」」
二足歩行で歩く人面犬と四足で飛び跳ねるおっさん。
その奇っ怪な生物がこの界隈で後に都市伝説となったのは、言うまでもなかった。
【17】片思いリバーシ -END-
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