17.片思いリバーシ
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朝比奈了、28歳。
俺はこいつが嫌いだ。
無口、無表情、無愛想と三拍子揃った筋金入りのパソコンオタクで基本的に何に対しても無頓着。
年齢も四つ年上で事務所で言うところの先輩な訳だが、特に何か教わった記憶はない。
身長189㎝という高身長もほとんど持ち腐れのようにだいたいパソコンの前に座っているが、
立てば立ったでその身長故に完全に見下されているようなのも非常に腹が立つ。
だが、俺が何より一番気にくわないのは、
そんな体たらくのくせして、あっさりと俺の一番欲しかったものを手に入れたことだ。
『ヒナさ~ん!!』
「………。」
訂正する、俺はこいつが大っっ嫌いだ。
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「それで次の仕事だけど、明日から…」
『はい!!…あっ!!』
ー…ガチャン!!!!
『あああああああああ!!!!!!』
「…?」
ヒナから仕事の案件について説明を受けていた佐奈は、書類に気を取られ机の脚に引っかかった。
よろけて倒れこんだ佐奈は、目の前の惨状に、思わず肩を落とした。
『…割れた…ああ~…』
「…何?」
『あ…いや…大したものじゃないんですが……。』
少し残念そうにする佐奈の手には、パッキリと割れてしまった小さな木箱があった。
年季の入った古びた木箱、佐奈はいつもそれにUSBや印鑑などを入れて持ち歩いていたのだ。
『小さい頃おばあちゃんに貰った小物入れだったので…でももう古いものだったのでいいんです!!すみません。』
「…大事なものを適当に入れておくからだ、とりあえず後にして。」
『は…はい………すみません…。』
……あの態度だよ。
明らかに落ち込んだ様子の佐奈を前によくもぬけぬけとあんな風に言えたもんだ。
佐奈は何度も何度も何度もこいつの為に泣いてたのに。
こいつを想って、泣いてたのに。
俺だったら泣かせたりなんかしない。
ずっとそばにいて、笑わせる。
一人デスクに戻り少し寂しそうに木箱を見つめる佐奈の頭を、和泉はポンと叩いた。
「お前さぁ…あんな奴のどこがいいわけ?」
『あはは…いや…ヒナさん優しいですよ、言葉は相変わらずですけど……和泉さんにもそうじゃないですか?』
「さあ…男の俺にゃサッパリだな。」
佐奈がヒナのことを好きなのは嫌というほど分かっている。
でも和泉自身は、やっぱり納得出来ないし諦めきれていなかった。
和泉はふてくされたように佐奈とヒナを視界から外すと、ドカドカと事務所玄関の扉に手を掛けた。
「…おっさーん、俺今日の仕事終わったら直帰するわ~。」
「はあ?お前は作らないといけない報告書が山ほどあるだろ!!和泉っ!?」
ー…バタン!!!!!!!!!!!!バタバタバタ……
「ったく~…あいつ勝手に直帰にして…。」
「おや、和泉は何怒ってたんですか?」
「知らん。」
ー…グラグラッ
『わっ……地震!?』
突如ぐらついた足元と書類の山に佐奈は驚き立ちすくんだ。
だが揺れはすぐに止み、三人はホッとしたように顔を合わせた。
「…なんだか最近地震多いですね…。」
『はい…何も起こらないといいですけど…』
そんな中ふてくされたように一人強引に事務所を後にした和泉。
この時はまだ、明日起こる信じられない事態など、知るよしもなかった……。
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