16.凸凹バイリンガル
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「九~条~てめええええ…!!!!」
「あっははははははははははははは!!!!」
事務所に帰った佐奈達を出迎えたのは、この惨状を完全に面白がっている九条の笑い声だった。
「ははは…まさか本当に二人共着ぐるみで行くとは……でも見守りやすくて邪魔しても弊害もなくバッチリだったでしょ?私なら絶対しませんけどねーあははははは!!」
「おっさん…あの男窓から放り投げていい?正当防衛にしてくれる?」
「もう何からツッコんだらいいか分かんねえよ…これどういう状況なのよ…。」
もこもこの着ぐるみを抱えたヒナと事務所までドット柄の犬に着いて来られたボロボロの和泉。
そして青ざめた顔でジャンと彼女の間を必死で取り持とうとする佐奈を前に、孝之助は深々と溜め息をついた。
「とりあえずジャンさん達…応接室入って話し合いましょう…和泉とヒナ、通訳で間に入れ。」
「…ハイ…。」
そうして孝之助に言われるがまま応接室に入ったジャンとオリビアは、お互い目も合わせることもなくあたりには冷たい空気が流れていた。
だがその空気を作り出しているのは、なにもジャン達だけではなかったのだ。
「ヒナ…てめえよくも俺にドッグフード突っ込んでくれたな…。」
「…。」
「無視決め込んでんじゃねえぞこのインテリメガネ。」
「…和泉なんて(ちっさくて)視界に入った覚えないけど。」
「なんだとうう…?」
元来佐奈を巡ってライバル同士の二人が静かに火花を散らしていると、その空気に触発されたようにジャンも口を開いた。
ジャンは現場を抑えた事で怒りが収まらない様子だったが、オリビアもまた、探偵を使って調べられていた事に怒り心頭であった。
※以後()内は英語とフランス語でお送りします。
「(あの男は何なんだ!!もう君が信じられなくなったよオリビア!!)」
「クソ女もう信用ならねぇってよ。根暗インテリメガネバーカバーカ。」
「(そもそもはあなたが悪いのよ、女好きですぐ誰にでも手を出して…だから私は…!!)」
「女好き、消えろ。脳ミソ筋肉の単細胞バカ。」
「(お前にそんな風に言われる筋合いはない!!俺は君を愛していたから英語も勉強しようとしていたのに…君はちっともフランス語を学ぼうともしなかったじゃないか!!)」
「黙れクソ女、怒ってる暇があるなら勉強しろ。調子に乗ってんじゃねえぞこのパソコンオタクが。」
「(調子に乗ってるですって!?それはあなたの方でしょ!!下っっつ手くそな英語でドヤ顔される此こっちの身にもなって欲しいものね!!!)」
「自意識過剰のドヤ顔やめろ。ハゲ。」
「ハゲてねぇわ!!!」
「…。」
『…。』
最高に口の悪い翻訳をする和泉と、ほとんど一言にまとめて翻訳するヒナ。
取り繕う気もない上にいがみ合っている二人の翻訳は、ジャン達の怒りをさらにヒートアップさせていった。
「孝之助さん…バイリンガルの表記は消した方が良さそうですね。」
「九条っち…英語とフランス語習ってよ…。」
「ワン!!ワンワン!!」
『ど…どうしたの?』
孝之助達が応接室の様子を不安げに見守っていると、それまで大人しくしていた和泉についてきていた犬が突如応接室へと入って行った。
「ワン!!」
「(い…犬…?なんでこんな所に…や、やめろよ、あはは…くすぐったい…!!)」
「ワンワン!!」
「(まあ可愛い…おいでおいで…よしよしいい子ね…。)」
「わふっ!!わふっ!!」
「(な…何だお前ひっぱるなよ…)」
「(どうしたのワンちゃん…?)」
「……!!」
とても人懐っこい様子のその犬はいがみ合う二人の間に割って入り二人をくっつけると、二人の空気を和ませるようにじゃれついた。
元々大の犬好きだった二人は犬が間に入ったことによって頬が緩みギスギスした雰囲気も消え去っていた。
「ジャン…」
「…オリビア…」
「ジャン……!!」
「ほ~…なんか知らんがまとまったぞ、やるじゃんあの犬。」
『愛に言葉なんかいらなかったって事ですね…!!素敵じゃないですか…めでたしめでたしです!!』
「あっちはそうでもないみたいですよ、止めなくていいんですか?」
『「え?」』
「…てめえちょっと佐奈に好かれてるからって調子のってんじゃねえぞ!!」
「そっちこそいいかげん佐奈の事諦めろ。」
「てめえがくっつけたのは俺が情けをかけてやったからでなあ!!」
「…。」
『…。』
「……さーて、一件落着したし俺はこの犬の餌でも買ってくるかな~お前使えるしうちに住むか?
にしても変なペイントされて可哀想に…あの遊園地動物虐待で裁判かけてやろうか?」
『あ、私も飼うの賛成ですっ!!じゃあ名前つけないとですね!!何にしましょうか、水玉のワンちゃんだからタマちゃんはどうでしょう!!』
「ワンワン♪」
「こらそこ、現実逃避しない。」
【16.】凸凹バイリンガル -END-
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