16.凸凹バイリンガル
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「ジャン・ディヴリー…30歳…依頼内容は浮気調査……だってよ…。」
「ヨロシク…オネガイシマース!!」
必死にフランス語で依頼内容を聞き取りぐったりした和泉の横で、孝之助とヒナが代わりに話を聞いていた。
「微妙に日本語使えるのね…。」
「ハイ!!カレノフランスゴ、ヒンガナイデス!!」
「和泉は日本語も品がないですよ。」
「しばくぞてめえら。」
和気あいあいとした空気の中で、依頼人の男性が取り出したのは、彼の愛する彼女の写真。
彼女は皆の予想に反して黒髪の黒人女性で、フランス人でももちろん日本人でも無いことは明らかだった。
(以後、和泉の同時通訳でお送りします。)
「えーっと…彼女はアメリカ人で日本で出会って付き合って二ヶ月、ルームシェアしていたフランス語と英語どちらも話せる友人の仲立ちで付き合うことになったが…
その後その友人がいなくなって、お互いの言葉は勉強中だが意思の疎通が難しくなり彼女が離れていった。」
「ほうほう、それで彼女が浮気をしたと。」
「だがどうしても自分の目で現場を確認したい、そして真意を確認したい。明日浮気相手と遊園地に出かける約束をしたらしい所までは突き止めた……そうだ。」
和泉のたどたどしい通訳で詳しい状況と依頼内容を理解した皆は大変そうな依頼に顔を見合わせた。
「じゃあ明日の遊園地に和泉と一緒に行って確認するしかねぇだろ…自分の目で確認したいんじゃ……。」
『でも彼女さんと上手く会話が出来ないって…もどかしいでしょうね…。』
「まあうちで話せば、ヒナが彼女から話聞いて和泉づてに話せばなんとかなるだろ。」
「和泉とヒナは意思の疎通ができますかね。」
「なあ…あんたは俺をなんだと思ってんのよ…。」
和泉がハアとため息をつきながら明日自分と調査に向かうとジャンに告げると、ジャンはニコッと笑い、お茶を注いでいた佐奈の手を握りキスをした。
『なっ…!?』
「!!!!!!!」
「ユウエンチ、コノコトイキマス!!」
「「はっ!?」」
『…え?!』
「オトコフタリ、イヤデスネ!!」
突然のことに慌てふためく佐奈を横目に、ヒナと和泉は食い気味にその提案を却下した。
「てめえなにさらしてんだ!!てかそのカタコト日本語しか使えねえんだから大人しく俺と行け!!誰が佐奈と行かせるか!!」
「…佐奈行かせるくらいなら俺が行きます。」
「はいはいもうお前ら私情を挟まないでよ…ジャンさん、佐奈はフランス語分かりませんけど…現場を押さえられたらそれでいいんですよね?」
『こ…孝之助さん?』
嬉しそうに頷き佐奈に懐くジャンを見て孝之助はハアとため息を落とすと、
自分を睨むヒナと和泉の痛い視線をはね除け佐奈にジャンとの同行を命じた。
「おーっさんっ!!」
「孝之助さん!!」
「…あーもう依頼人の要望なんだからわきまえろ!!別にホテルに行くわけじゃあるまいし…いいよな、佐奈?」
『は…はあ…私は言葉が心配なだけです…。』
「なら決まり、じゃあ今から下調べしといて。」
「ヨロシクデス、佐奈!!!」
『あ…はい!!宜しくお願いします…!!』
「…。」
.....................
ー…ガチャ
『ヒナさ~ん…?今日の分の書類しまっておきますね。』
問題のカタコト白人依頼人も帰宅した後、
ヒナは部屋に現れた佐奈の腕を引っ張り、佐奈を捕まえた。
『ヒ…ヒナさん…?』
「……明日やっぱり俺が代わる。」
『ふふ…ヒナさんとジャンさん二人だと長身コンビで凄く目立っちゃいますよ?』
「そうだけど…。」
少しふてくされたように佐奈を抱き締めるヒナの顔を嬉しそうに覗きこむと、佐奈はヒナの頬をぎゅっとつまんで笑った。
『心配してくれてるんですか?大丈夫ですよ、遊園地で人目も多いし…何も起きませんよ!!』
「…うん…。」
『浮気調査は相変わらず気が進みませんけど…仕事をきちんとこなしてきますから!!』
「分かった……佐奈…?」
『はい?』
「……いや、なんでもない…。」
『?』
かくして国境を超えた浮気調査に乗り出すこととなった佐奈であったが、
佐奈が感じていた一抹の不安は次の日の朝、孝之助の絶叫とともに現実のものとなったのであった…。