15.かけがえのないヒーロー
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ー…ギシッ…
『ん……。』
「…おはよう。」
『ヒ…ヒナさん!?』
まだ陽の昇る前の薄暗い部屋の中、どうやら終わってすぐ眠ってしまっていた佐奈は目の前のヒナを見て顔を赤らめた。
『すみません私すぐ寝ちゃって…!!今何時…』
「朝の5時。まだ寝てていいよ、明日も休みだし。」
そう優しく言うヒナの言葉に甘え、佐奈は嬉しそうにごろんと枕に顔をうずめた。
『…ヒナさんは何やってたんですか?』
「佐奈の寝顔見てた。」
『ええっ!?私…変な顔してませんでした?!!!』
「してた。」
『ええっ!!うそ?!』
「うそ。」
そう言って佐奈の頭を撫でながら楽しそうに笑うヒナに、佐奈は不覚にも目を奪われた。
私がさせた、というにはおこがましいが、今まで見たことのないような無防備な笑顔。
思わずキュンとした佐奈は、ヒナの首に手を回しキスをした。
『ヒナさん……ヒナさんって…やるの私が初めてとかじゃないですよね…?』
「…何でいきなりそんな……」
佐奈の思わぬ問いに、ヒナは言葉を濁そうとしたが、じっと自分を見つめる佐奈に負け正直に自白した。
「初めてでは…ないけど……」
『!!!!!!!!!!(ガーンッ!!)………ですよね~………因みにそれは…元カノとか…?』
「いやー…アメリカにいる時何か流れで……ってなんの話…楽しくないからこの話…。」
自分で聞いておきながら地味にショックを受けた佐奈は、少しいじけたようにヒナに抱き付いた。
『ヒナさんのこんな顔……独り占めしたいなぁと思っただけです…。』
「佐奈…。」
「………本当に好きな人とするのは…佐奈が初めてだから。」
『………ヒナさん…!!好きですーっっ!!』
あまりの嬉しさに感極まって佐奈がまた抱き付くと、ふいに佐奈の手がヒナの首の傷に触れた。
『あ…すみません…!!痛くなかったですか…?』
「うん、大丈夫…これのこと…もう孝之助さんから聞いた…?」
『あ……はい…。』
佐奈が気まずそうに頷くと、ヒナは言い出しづらそうに尋ねた。
「佐奈が好きだって言ってくれて嬉しい…でも、俺はずっとこの機械が体にあるままで、これから予期しない後遺症が出る可能性だってある、明日死んだっておかしくない…
そんな不安定で…本当に…もう人間なのかも怪しい俺で…本当にいいのか…?」
言葉を詰まらせながら、ヒナは必死に言葉を絞り出した。
ヒナにとっての最大の負い目であり、一生背負わなくてはならなくなった傷。
佐奈が嫌だと返せば、自分には引き留める権利はないとヒナも覚悟をしていた。
だが佐奈はそんなヒナの不安をかき消すようにニコッと笑うと、震えるヒナの手を握りしめた。
『私…あれからBCIについて調べたんです……この技術が実用化すれば腕や足を失った人が頭で思うだけで義手が義足が自分の手足のように動かせるようになるんですって。それって…すごく素敵なことだなあって思ったんです。』
「……。」
『それだって、ヒナさんのような人が協力してくれたからこの技術が実現に近づいているわけで…もしかしたら50年後には、頭に機械を入れるなんて当たり前になってるのかもしれませんよ?それに………』
『これはヒナさんがお姉さんの為に頑張った証でしょう……?私はそんなヒナさんを純粋に凄いと思うし、誇らしく思います………!!!!!』
「…………!!」
思いもよらなかった、初めて言われた言葉。
佐奈の真っ直ぐな言葉と笑顔は、十数年に渡ってヒナを縛り付けていた枷を溶かしていくようだった。
「佐奈…………ありがとう……。」
『こちらこそ…!!私なんかの為に…いっぱいいっぱいありがとうですよ…!!』
涙をにじませるヒナをこれ以上ないくらいの愛をこめて抱きしめた。
この不器用で優しい人が、もう泣かなくていいように。もう、二度と心を閉ざしてしまわないように。
ただ、そう祈りながら…。
『…でも本当にヒナさんには助けられてばっかりです。今回だって、ホテルでだって冴島組の人に捕まった時だって…』
「…そんな事…。」
『いーえっありますっ!!……そういえば…冴島組に捕まった時、ヒナさんがメールを送ってくれたんですよね?あれってどういう風にやるんですか?私の携帯とかも操作できちゃったりするんですか?』
佐奈が興味津々に尋ねると、ヒナは少し笑って首を横に振った。
「いや…俺が動かせるのはリンクしてある自分のパソコンだけで人のパソコンを動かしたりしてるのは俺が自分のパソコンからハッキングしてるだけ。疲れるからあんまり使わないけど…。」
『はあ~!!…そういうシステムだったんですね!!』
「まあ…これくらいならすぐに…。」
ー…ピピピピッ
『!!』
ヒナがそう言うと、枕元に置いてあった佐奈の携帯がメールの受信を知らせた。
佐奈が携帯を確認すると、そこには"佐奈は?"とだけ書かれたヒナからのメールが届いていた。
『"佐奈は?"…何がですか…?』
「やるの初めてじゃないの?」
『えっ……!?』
そう言ってニッと笑うヒナに、自分が聞いた質問の仕返しをされているのだと気付いた佐奈は、聞いた事を後悔しながら渋々答えた。
『えっ……とまあ……元彼と一回だけですけど……いや私もこの話楽しくないので…。』
「……ふーん。」
『えっ…ヒナさん何か…怒ってます?』
「別に…佐奈、もっかい。」
『えっ!?…もう一回って…ヒナさん!?ヒナさん…~~~~!!』
【15.】かけがえのないヒーロー -END-
6/6ページ