15.かけがえのないヒーロー
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ー…ギイ……
「…!!」
『ふふ…懐かしいですか?』
日も暮れ久しぶりに事務所に戻ったヒナは、半年前と何も変わらない自分のデスクを見て驚いていた。
その懐かしい感覚にヒナと佐奈が顔を見合わせて笑うと、和泉と九条が思い付いたように言った。
「そういや俺今日用事あんだ、そろそろ上がろっかな。」
「…私もそろそろ失礼しますね。」
「え?何でよ歓迎会しようよ!!今から飲ん…ムググ!!」
「孝之助さん、空気読みましょう。そんなんだからいつまでたっても独身なんですよ。ヒナ、佐奈さんじゃあまた!!歓迎会はつもる話もあるでしょうからまた来週にしましょう。」
そう言って笑顔で手を振ると、二人は孝之助をズルズルと引っ張り出し、佐奈とヒナを残して事務所を後にした。
ー…バタン
「和泉にしては珍しく素晴らしい気遣いだったじゃないですか。」
「"珍しく"は余計だ。」
足早に事務所を離れようとする和泉は、そう言って嬉しいような寂しいような複雑な表情を浮かべた。
「さすがに今日は手を引くだろーよ…にしても俺の天下短かったな~…半年か…何なら本当に最後までやっときゃよかったわ。」
「「え?」」
「へ…?あ、いや冗談だよ冗談……」
和泉が自分の思わぬ失言を慌てて取り繕うと、九条と孝之助は顔を合わせてまじまじと和泉を見つめた。
「半年もあったのに最後までいけなかったんですか………?」
「中学生かよ…和泉…。」
「う…うるせええええ!!俺は佐奈の気持ちを尊重していてだなぁ!!!!!!」
「和泉…俺がおごってやるから好きなだけ飲めよ、ププッ…。」
「そうですよ、半年何にも出来ないならどうせずっと一緒ですよ………ククク…。」
「笑ってんじゃねー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
...................................................
ー…バタン……
『よし…これで今日から元通りの生活が出来ますね!!』
「…うん。」
一方、事務所に残った佐奈とヒナは荷物を戻し、ようやく以前と変わらない風景を取り戻していた。
『あ…えっと…じゃああとは…』
「……。」
どちらも話したいこと聞きたいことは山のようにあったが、何から話せばいいか分からずお互い言葉をつまらせた。
だがその状況を打ち破るようにヒナが佐奈を抱き寄せると、佐奈もヒナをぎゅっと抱き締めた。
「佐奈…ごめん…。」
『ヒナさん…?』
「……俺のせいで盗撮なんてされて…流出しなかったとはいえ……」
『…謝らなくていいって何度も言ってるのに…どうしても気が済まないみたいですね…。』
ヒナはいまだ佐奈が盗撮された責任を感じており、申し訳無さそうに俯いていた。
佐奈はそんなヒナの頬を引っ張り笑うと、思いついたように言った。
『じゃあ……私の質問に全部答えてくれたら許します。』
「…へ…?」
『じゃあまず…ヒナさんの誕生日は?』
「え…?12月…24日…。」
『えっ!?クリスマスイブが誕生日なんですか!!へええ~!!じゃあ…じゃあ血液型は?』
「O型…。」
『出身地は?』
「…東京…って佐奈…何を…」
突然の質問攻めにヒナが戸惑っていると、佐奈はとても嬉しそうな顔で笑った。
『私…ヒナさんの事全然知らなかった…だから戻ってきたらいっぱい聞こうって決めてたんです!!ヒナさんの事だったら…どんな事だって知りたいから…』
「佐奈…。」
『じゃあ…もういなくなったりしませんか…?』
「うん。」
『ずっと一緒にいてくれますか…?』
「…うん。」
『私の事………好きですか…?』
「うん………大好き………」
ヒナはそう呟くと佐奈の唇を塞ぎ、片付けたばかりのベッドに倒れこんだ。
服をたくし上げ白く柔らかい胸にヒナが触れると、佐奈はビクッと体を震わせた。
『ん…』
「ごめん、手…冷たい?」
『ううん…ヒナさんあったかいです…。』
「佐奈……ずっと会いたかった…。」
『私もです…』
ずっと触れたかった一回り大きな手に、不器用に切られた長い髪。
懐かしい匂いに、安心する低い声。
その、どれもが愛しくてたまらなくて…
体中が、好きだと震えた。
『……っ…ヒナ……さん…………!!!!』
「佐奈……」
『ヒナさん…大好き…………』
夜も更け真っ暗になった部屋で二人は体を重ねた。
それはずっと会いたかった愛する人が、今自分のそばにいることを、
お互いに確かめるようだった……。