第四話 追放
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....................
ー…ドサッ…
「…や…やめ…!!」
「………。」
「いやあああああああ!!!!」
「はいおしまーい。」
「・・・・・・うー…割といけると思ったんだけどなあー…。」
そう言ってボロボロの姿で立ち上がったのは、蛍にガンウェアの稽古をつけてもらっていたこまだった。
意気揚々と稽古に励んでいたこまだったが、蛍のあまりの強さに手も足も出せないでいた。
「蛍さんにすら手も足も出ない…御幸さん相手なんて…やっぱ無謀だったんでしょうか…。」
「あはは、諦めんの早いなあ!!まあ僕としてはそっちのほうが安心してられるんやけど…でもやるって決めたんやろ?基礎からやってこ!」
「はい!!よろしくお願いします!!」
ー…ドサッ…
「これは?」
「キーパー達の戦い方が載ってるファイル。」
蛍に差し出された分厚いファイルをめくると、そこには数多くのガンウェアの使用例が記載されていた。
そこにはありとあらゆる戦い方の実例が詳しく書かれており、その丁寧な解説にこまも興味津々に見入っていた。
「ガンウェアの良いとこは実体が固定されとらん分自由度が高いことなんよ、やけん剣術とかの枠にとらわれんでいい。やけんこそどう使いたいかで使用方法も変わるしセンスが問われるんよ。」
「センス…ですか…。」
「御幸は二刀、僕は弓の形状にすることが多いけどそれはただ御幸が接近戦用の武器にする事が多いけんそうサポートの為にしとるだけ、状況に応じて形は変えとる。
ガンウェアは使う人によっていろんな使い方もできるけんねえ…例えば…」
蛍はそう言うとパラパラとファイルをめくりトントンとあるページを指差した。
そのページに記載されていた名前に見覚えの合ったこまは、少し嫌そうに顔をしかめた。
「この東間さんって…最初に私にナイフ渡そうとした方ですよね。」
「そうそう、東間さんとかも御幸に引けを取らんキーパーやと思うんやけどまあガンウェアの使い方が軍を抜いてえげつないね。」
「えげつない?」
「戦う前、もしくは最中にガンウェアのほんとに小さい一部を相手に気付かれんように口に放り込むか貼るかしてね、
その後にガンウェアの一部を大きくさせると相手は体内から爆発したみたいに死ぬそうな。」
「・・・・えげつない。」
「やろ。えげつなさはナンバーワンやと思うわ。でもそれはガンウェアをそこまで形体維持と変化できる力量があってこそ、
普通はガンウェアから離れるほど小さい形体で留めとくことは難しいんよ。」
「はああー…。」
「まあ、昔はそんなタイプの人やなかったんやけどね…あの人もすっかり変わったわ。」
「……。」
そう言うと蛍はファイルを閉じこまに手渡した。
先の一瞬蛍が複雑そうな表情を浮かべた気がして気にかかりはしたが、こまはそれ以上追求すること無くファイルを受け取った。
「真っ当に御幸に向かっていってもこの二週間で一本は絶対に取れん。でも何度も言うけどこれは剣術やない、上手く使う方法を探せば十分可能やけん。」
「上手く使う方法…。」
「そ、御幸は攻撃特化型、こまちゃんは防御特化型や。まあ普通にやれば御幸に軍配が上がるやろ。でもね、御幸にも弱点がある。」
「御幸さんの弱点……!?それは?」
御幸の弱点と聞き目を輝かせたこまに、蛍はニッと笑った。だがその後蛍の口から出たのは、こまの予想外の言葉だった。
「御幸はおばけが怖い。」
「……蛍さん、真面目に話してるんですけど。」
「ええ~?僕いたって真面目なんやけど!!まあ…あと挙げるとするならそうやね…御幸は優しすぎるんよね。」
「…へ?や…優しい…!?あの日がなしかめっ面で人を罵倒し睨み倒している御幸さんが優しい…!????…いやいやそれはないでしょ。」
「あはは、そう言うと語弊があるけど…結局御幸は東間さんや僕ほど狡猾にも非情にもなれんとこがある。強さでカバーしとるけど無意識にブレーキをかけるのが御幸の兵士としての最大の弱点や。」
「御幸さんが優しすぎて蛍さんが狡猾って…どっちかと言うと私には反対に思えますけど…。」
そう言って不思議そうに首を傾げるこまに、蛍はニコッと笑って言った。
「………そ?僕こまちゃんが思っとるほど皆に優しいわけやないよ。こまちゃんにだけやん。」
「…へ?もーまたまたあ!!」
「えー?冗談やないんやけどなあ~。」
蛍の口から出た予想外な言葉に、こまは顔を赤らめてごまかすように笑った。
だが蛍は動じることもなく楽しそうにそう言うと、話題を変えるようにもう一度ファイルを開き仕切り直した。
「ま、今はそんなことより試験試験!!とにかくそれも踏まえてヒントはこの中に沢山載っとるはずやけ、戦略よー考えて御幸を出し抜くんよ!!」
「…は…はい…!!」
それからこまは毎日、戦略を考えると並行してガンウェアの基礎練と歴史の勉強の日々を送った。
その日々は想像以上に過酷で、グロス一つ落ちるのさえ嫌がっていたこまが、ほぼすっぴんに近い状態まで追いやられていた程だった。
...................
ー…ガンガンッツ…
「…お、やってますねえ~あの新人さん、頑張ってるじゃないですか。」
「……東間、何しに来た。」
蛍と特訓を続けるこまを眺めていた御幸の隣に、東間がニヤニヤと笑いながら腰を下ろした。
御幸は隣に座る東間に怪訝そうな顔を見せたが、東間はそんなことを気にするでもなく話を続けた。
「すぐ辞めると思ってましたけど、意外といい動きをしますねえ。なんでも御幸くんが無茶な試験をするとかで?」
「……無茶かどうかはあいつ次第だ。」
「へえ…まあ気合の入った掛け声まで出して。」
ー…キイン!!キイン!!!!
「1192作ろう!!」
「鎌倉幕府!!」
「室町幕府の征夷大将軍の名前、全部答えよ!!」
「………。」
「ぷっ………なんか私彼女が可哀想になってきました。」
勉強と戦闘を同時に行うこまに東間は呆れたような笑いを浮かべた。
だがそのこまの差し迫った気迫に、東間は御幸の顔を覗き込んで楽しそうに言った。
「でもあの気合なら、御幸くん本当に一本取られちゃったりするかもしれませんねえ。
私の担当する最強織田家には勝てないでしょうけど武田家もそこそこ優秀なんだからきちんとした担当に付いてもらいたいのですがねえ…。」
「…勘違いしているようだが当時の最強は武田家だ。信玄の病没が無ければ万に一つも織田家にも徳川家にも勝ち目はなかった。」
「はい~?織田家担当に着けなかった負け惜しみはやめて下さい。兵農分離を進めた織田軍に武田軍は勝てません。春になったら国に戻られるんでしょ、どうせ。」
「白兵戦での戦力の話をしてんだろうが。」
「それでも同じことです。」
「武田。」
「織田。」
「「………。」」
「最初に天下を取ったのはうちなんですけどー。」
いがみ合う二人に呆れた顔で割って入ってきたのは、横を通りすがった豊臣家担当の栞奈だった。
キーパーは実力で担当の家を決められる為ある程度皆自分の担当している家に誇りを持っており
今川北条武田の三国を任された御幸と、戦国の代名詞である織田家を任された東間はいつもこの話になるといがみ合っていた。
「それはそうと東間君、部長が呼んでる。」
「そうですか、まあ新人さんに一本取られて悔しがる御幸くんを盛大に笑う準備だけでもしておきますね。」
「一人で勝手に笑い死んでろクソメガネ。」
そう言うと東間は戦いと勉強を同時に行うこまを見ながら楽しそうに去って行った。
残された御幸はなおも練習に励むこま達を一人見下ろしていた。
「……もしかしたら…か。」
ー…キイン…キイン!!
「甲斐国の武田氏が定めた分国法は!!」
「へ!?け…憲法!!」
「ちがーう!!んな訳無いやろ基礎練過去問やり直し!!」
「……ありえねえな。」
呆れたようにガクッと肩を落とす御幸だったが、その顔はどこか楽しそうだった。
そうして蛍と猛特訓を二週間みっちりと積んだこまは、二週間後の試験の日をいよいよ迎えたのだった……。
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ー…ドサッ…
「…や…やめ…!!」
「………。」
「いやあああああああ!!!!」
「はいおしまーい。」
「・・・・・・うー…割といけると思ったんだけどなあー…。」
そう言ってボロボロの姿で立ち上がったのは、蛍にガンウェアの稽古をつけてもらっていたこまだった。
意気揚々と稽古に励んでいたこまだったが、蛍のあまりの強さに手も足も出せないでいた。
「蛍さんにすら手も足も出ない…御幸さん相手なんて…やっぱ無謀だったんでしょうか…。」
「あはは、諦めんの早いなあ!!まあ僕としてはそっちのほうが安心してられるんやけど…でもやるって決めたんやろ?基礎からやってこ!」
「はい!!よろしくお願いします!!」
ー…ドサッ…
「これは?」
「キーパー達の戦い方が載ってるファイル。」
蛍に差し出された分厚いファイルをめくると、そこには数多くのガンウェアの使用例が記載されていた。
そこにはありとあらゆる戦い方の実例が詳しく書かれており、その丁寧な解説にこまも興味津々に見入っていた。
「ガンウェアの良いとこは実体が固定されとらん分自由度が高いことなんよ、やけん剣術とかの枠にとらわれんでいい。やけんこそどう使いたいかで使用方法も変わるしセンスが問われるんよ。」
「センス…ですか…。」
「御幸は二刀、僕は弓の形状にすることが多いけどそれはただ御幸が接近戦用の武器にする事が多いけんそうサポートの為にしとるだけ、状況に応じて形は変えとる。
ガンウェアは使う人によっていろんな使い方もできるけんねえ…例えば…」
蛍はそう言うとパラパラとファイルをめくりトントンとあるページを指差した。
そのページに記載されていた名前に見覚えの合ったこまは、少し嫌そうに顔をしかめた。
「この東間さんって…最初に私にナイフ渡そうとした方ですよね。」
「そうそう、東間さんとかも御幸に引けを取らんキーパーやと思うんやけどまあガンウェアの使い方が軍を抜いてえげつないね。」
「えげつない?」
「戦う前、もしくは最中にガンウェアのほんとに小さい一部を相手に気付かれんように口に放り込むか貼るかしてね、
その後にガンウェアの一部を大きくさせると相手は体内から爆発したみたいに死ぬそうな。」
「・・・・えげつない。」
「やろ。えげつなさはナンバーワンやと思うわ。でもそれはガンウェアをそこまで形体維持と変化できる力量があってこそ、
普通はガンウェアから離れるほど小さい形体で留めとくことは難しいんよ。」
「はああー…。」
「まあ、昔はそんなタイプの人やなかったんやけどね…あの人もすっかり変わったわ。」
「……。」
そう言うと蛍はファイルを閉じこまに手渡した。
先の一瞬蛍が複雑そうな表情を浮かべた気がして気にかかりはしたが、こまはそれ以上追求すること無くファイルを受け取った。
「真っ当に御幸に向かっていってもこの二週間で一本は絶対に取れん。でも何度も言うけどこれは剣術やない、上手く使う方法を探せば十分可能やけん。」
「上手く使う方法…。」
「そ、御幸は攻撃特化型、こまちゃんは防御特化型や。まあ普通にやれば御幸に軍配が上がるやろ。でもね、御幸にも弱点がある。」
「御幸さんの弱点……!?それは?」
御幸の弱点と聞き目を輝かせたこまに、蛍はニッと笑った。だがその後蛍の口から出たのは、こまの予想外の言葉だった。
「御幸はおばけが怖い。」
「……蛍さん、真面目に話してるんですけど。」
「ええ~?僕いたって真面目なんやけど!!まあ…あと挙げるとするならそうやね…御幸は優しすぎるんよね。」
「…へ?や…優しい…!?あの日がなしかめっ面で人を罵倒し睨み倒している御幸さんが優しい…!????…いやいやそれはないでしょ。」
「あはは、そう言うと語弊があるけど…結局御幸は東間さんや僕ほど狡猾にも非情にもなれんとこがある。強さでカバーしとるけど無意識にブレーキをかけるのが御幸の兵士としての最大の弱点や。」
「御幸さんが優しすぎて蛍さんが狡猾って…どっちかと言うと私には反対に思えますけど…。」
そう言って不思議そうに首を傾げるこまに、蛍はニコッと笑って言った。
「………そ?僕こまちゃんが思っとるほど皆に優しいわけやないよ。こまちゃんにだけやん。」
「…へ?もーまたまたあ!!」
「えー?冗談やないんやけどなあ~。」
蛍の口から出た予想外な言葉に、こまは顔を赤らめてごまかすように笑った。
だが蛍は動じることもなく楽しそうにそう言うと、話題を変えるようにもう一度ファイルを開き仕切り直した。
「ま、今はそんなことより試験試験!!とにかくそれも踏まえてヒントはこの中に沢山載っとるはずやけ、戦略よー考えて御幸を出し抜くんよ!!」
「…は…はい…!!」
それからこまは毎日、戦略を考えると並行してガンウェアの基礎練と歴史の勉強の日々を送った。
その日々は想像以上に過酷で、グロス一つ落ちるのさえ嫌がっていたこまが、ほぼすっぴんに近い状態まで追いやられていた程だった。
...................
ー…ガンガンッツ…
「…お、やってますねえ~あの新人さん、頑張ってるじゃないですか。」
「……東間、何しに来た。」
蛍と特訓を続けるこまを眺めていた御幸の隣に、東間がニヤニヤと笑いながら腰を下ろした。
御幸は隣に座る東間に怪訝そうな顔を見せたが、東間はそんなことを気にするでもなく話を続けた。
「すぐ辞めると思ってましたけど、意外といい動きをしますねえ。なんでも御幸くんが無茶な試験をするとかで?」
「……無茶かどうかはあいつ次第だ。」
「へえ…まあ気合の入った掛け声まで出して。」
ー…キイン!!キイン!!!!
「1192作ろう!!」
「鎌倉幕府!!」
「室町幕府の征夷大将軍の名前、全部答えよ!!」
「………。」
「ぷっ………なんか私彼女が可哀想になってきました。」
勉強と戦闘を同時に行うこまに東間は呆れたような笑いを浮かべた。
だがそのこまの差し迫った気迫に、東間は御幸の顔を覗き込んで楽しそうに言った。
「でもあの気合なら、御幸くん本当に一本取られちゃったりするかもしれませんねえ。
私の担当する最強織田家には勝てないでしょうけど武田家もそこそこ優秀なんだからきちんとした担当に付いてもらいたいのですがねえ…。」
「…勘違いしているようだが当時の最強は武田家だ。信玄の病没が無ければ万に一つも織田家にも徳川家にも勝ち目はなかった。」
「はい~?織田家担当に着けなかった負け惜しみはやめて下さい。兵農分離を進めた織田軍に武田軍は勝てません。春になったら国に戻られるんでしょ、どうせ。」
「白兵戦での戦力の話をしてんだろうが。」
「それでも同じことです。」
「武田。」
「織田。」
「「………。」」
「最初に天下を取ったのはうちなんですけどー。」
いがみ合う二人に呆れた顔で割って入ってきたのは、横を通りすがった豊臣家担当の栞奈だった。
キーパーは実力で担当の家を決められる為ある程度皆自分の担当している家に誇りを持っており
今川北条武田の三国を任された御幸と、戦国の代名詞である織田家を任された東間はいつもこの話になるといがみ合っていた。
「それはそうと東間君、部長が呼んでる。」
「そうですか、まあ新人さんに一本取られて悔しがる御幸くんを盛大に笑う準備だけでもしておきますね。」
「一人で勝手に笑い死んでろクソメガネ。」
そう言うと東間は戦いと勉強を同時に行うこまを見ながら楽しそうに去って行った。
残された御幸はなおも練習に励むこま達を一人見下ろしていた。
「……もしかしたら…か。」
ー…キイン…キイン!!
「甲斐国の武田氏が定めた分国法は!!」
「へ!?け…憲法!!」
「ちがーう!!んな訳無いやろ基礎練過去問やり直し!!」
「……ありえねえな。」
呆れたようにガクッと肩を落とす御幸だったが、その顔はどこか楽しそうだった。
そうして蛍と猛特訓を二週間みっちりと積んだこまは、二週間後の試験の日をいよいよ迎えたのだった……。
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