第三十三話 君の好きな色
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ー…カチカチカチ……
「沿岸のアンドロイドは撃退、過去の人間たちはキーパー達が全て元の時代に戻したようです。」
「そうか…勝手に後処理までしてくれて助かったな…やはりキーパー達に関わりのある軍を呼び寄せて正解だった…。」
「ですが………タイムレーンの方は予備電源ももう残り僅か…」
「それだよ……対アンドロイド部隊をあれだけ向かわせてなぜタイムレーンを奪取できない!!タイムレーンだけは…タイムレーンだけは失うわけにはいかないというのに……!!」
「そうですね、寿博士がご存命でしたら良かったのですが…今追加の部隊を向かわせています。」
「寿……」
「…総理?」
ー…バンッツ………!!!!!!
「そうか……寿博士がいればいいのか……なんだ、簡単な話じゃないか…!!!!!!!!」
「……え…?」
...................................................................
ー…ダダダダ……
「ちょ……ちょっと待って…状況の全く分からんおじさんに全力疾走させないで……。」
「瀬名さん!!状況は走りながら伝えますので急いで!!走って!!」
「栞奈……お前なんか随分たくましくなったのね……。」
一方、過去から呼び出された皆を無事元の時代に送り返しアンドロイドの脅威を退けたキーパー達は、事情も話しきれてない瀬名を引き連れ市街地を全力疾走していた。
「栞奈さん…この方がもしかして伝説の……!!!!」
「ハアッ…ハアッ…で…?伝説??…いや俺は……」
「……徳川家担当のおじさん瀬名さんよ。」
「栞奈雑!!紹介がめちゃくちゃ雑!!!!」
「瀬名さんが亡くなってから噂に尾ひれが付きまくって伝説って言われてるんです!!みんなの夢壊さないようにもうちょっとしゃきっとしてください!!!!!!」
タイムレーンの残り電力は先程の大規模なタイムレーン使用で更に減少、稼働時間はもう一時間を切っていると思われた。
急ぎ木野達の待つタイムレーン本部に向かってはいたものの、すでに通信機能も使えなくなってしまったガンウェアを見ながら蛍は心配そうに呟いた。
「タイムレーンはあと一時間ほどで沈黙する…ただそれを黙ってやらせてくれるもんなんか…なんか企んどるかもしれん、急がな。」
「あちらには最低限の戦力だけであったな…木野殿らが心配だ。」
「それと……いつ寝返るとも分からないアンドロイド警察だけだから。」(根に持ってる)
「ははは、雲母さん、言葉に棘がガッツリありますね!!」
「美しい花には棘があるんっすね!」
「というか榎田に霰…いたんですね、戦いの最中影が薄すぎて気が付きませんでした。」
「いましたよ!!!!!!ナウマンゾウも古代人もいませんでしたからね武田軍の後詰めに混ぜて頂いておりましたがそれはもうバッサバッサと敵を(前衛の武田さんを始めとした武田の兵達が)なぎ倒しましたとも!!!!!!」
「へー。」
「非常に気のない返事をありがとうございます東間さんっっ!!!!」
そう言って笑う榎田らを前に、一人一回り年上の瀬名は切れる息によれよれと足を止め栞奈に尋ねた。
「ハアッ…ハアッ……あれ、緊急事態だから俺走らされてるんだよね…めっちゃ平和じゃない?栞奈少し休んで……」
「あいつらが呑気すぎるだけなの!!いいから瀬名さん走って走って!!」
「ええええ~~~んな殺生な~~!!」
「伝説の……歴代トップキーパー………?」
「虎目くん、言いたいこと分からなくもないけど不思議そうな顔で瀬名さんを見るのやめてくれるかな?」
非常事態ですっかり満身創痍であるにも関わらず通常運転な皆が更に足をすすめると、タイムレーン本社の周りには人だかりができていた。
不穏な様子に皆が警戒しながら近づくと、そこにいたのはアンドロイド警察と新たに派遣されたと見られる国の警備部隊の人間だった。
「一足遅かったわ……!!やっぱり僕らに沿岸のアンドロイド排除やらせとううちにここを一緒になって占拠されたんや…アンドロイド警察なんて信じたんがアホやったわ…。」
「で…でもちょっと待って下さい蛍さん…アンドロイド警察の方…止めようとしてくれてませんか?」
「え……?」
こまの言葉に蛍がもう一度様子をうかがうと、確かになにか口論をしながら中に入れまいとしているのが見て取れた。
殆どが住民の避難誘導に向かった後、どうやらここに戻り警備をしていてくれたように思われるその様子に蛍は信じられないように目を丸くした。
「助けに行きましょう、そしてタイムレーンを止めましょう。」
「……そうやね。」
こまと蛍の言葉に皆が頷いた。
そうして皆が覚悟を決めて飛び出そうとした瞬間、それを一人の手が静止した。
「ちょっと待て。」
「せっ…瀬名さん何を……!?あの今急いでるんですよ、話は後で……」
「詳しくは分からねえけど、お前らガンウェア切れかかったボロボロの状態であの完全武装の銃相手に丸腰で戦うんか。死ににいくようなもんだろ。」
「「!!」」
瀬名の言葉通り皆のガンウェアは一様に点滅もしくは沈黙しており、電源が完全に落ちれば満身創痍の身で銃を持った相手と丸腰で戦わなければいけない。
このまま飛び出していけばキーパー達は一斉に射撃され命を落とす最悪な結末さえあり得た。
「大丈夫です……僕なら、みんなはここにおっとって。」
「アンドロイドだって完全に壊れりゃ終わりだ。いいからよ、ここは任せてくれないかね。要は時間を稼げばいいんだろ?」
「せっ……瀬名さん駄目です!!行くなら私も…私も行きます!!!!」
「まったく…信用ねえなあ。」
「当たり前です!!!!そうやって……一度死んでるんですから…!!!!」
薄っすらと涙を浮かべた瞳で瀬名の腕を掴む栞奈に、瀬名はあっけらかんと笑ってみせた。
「じゃあやばいと思ったら飛び出してきてくれて構わんからよ。」
「せっ……瀬名さん!!!!!!」
「栞奈………すぐに助けに出られるように準備して、相手がトリガーに手をかけた時点で飛び出すから。」
「瑠璃……。」
瑠璃はそう静かに言うと、懐の刀を抜き臨戦態勢をとった。
あの日を絶対に繰り返すまいとじっと息を潜めるキーパー達は、スタスタと歩きだした歴代トップキーパーと言われた男の背を見守った。
ー…スタスタスタ…
「「!!!!」」
「あれ?ここ俺の会社なんっすけど…これー…なんかあったんっすかね?」
「・・・・は?」
((すごい普通に話しかけた!!!!!!!!!!!!))
「何だ貴様は………ってえ……?瀬名キーパーじゃないか……?数年前に殉職した……!!!!」
「え……えええええ!?ゆ…幽霊!?幽霊なのか!?」
突如フラフラと現れた不審すぎる鎧を着た男に警戒心むき出しの警備兵だったが、それが亡くなったはずの瀬名だと分かると一気に皆困惑したような顔を浮かべ頓珍漢な問いを大真面目に返した。
「ちょ…問いかけとしてそれおかしくない…?違うよ!!さっきのほら大規模なタイムレーンからの移動で引っ張り戻されてさ、意味が分かんないままでさ!!中に俺の私物があると思うから入りたいんだけど…君たちの上の人…あ、敬三ちゃんにさ、連絡取ってくんない?」
「け……敬三ちゃん……?誰だそれは…」
「お前…!!防衛大臣の木崎敬三大臣のことだろ…!!」
「そーそー!親友なのよ、ほら。」
「「!!!!!!!」」
瀬名はそう言うと、ガンウェアからいくつかの写真を引っ張り出し警備兵達に見せた。
そこには防衛大臣だけにとどまらず政財界の大物や警視総監、名の知れた政治家などと多数の人間と楽しそうに写真に収まる瀬名の姿があった。
「栞奈さん………これ…どういうことですか……?」
「今のトップキーパーの八雲くんがバリバリの戦闘特化型だから勘違いしてる人も多いけど…瀬名さんのすごいところは戦闘力とかじゃないのよ。あの天性の人たらしと言うかコミュ力というか…人の懐に入るのが本当に上手くて。だから顔の広さが尋常じゃないの。」
「なるほど……確かにキーパーとしてはこれ以上ない才能ですね…。」
なんだかいつの間にか警備兵たちとすら打ち解け始めた様子の瀬名の姿に、栞奈はハアと長い息を吐いた。
警備兵達は自分の上層部と繋がりのある一般人の瀬名に手を上げることはできず、防衛大臣に連絡をつなごうと必死の連絡リレーを繰り返し、
瀬名の思惑通り、刻一刻と時間は過ぎていったのだった…。