第三話 5日間の忘れ物
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.....................
ー…ピーチチチ……
「……はっ…!!」
翌朝、鳥のさえずる声に目を覚ましたこまは少し期待を込めて周囲を見渡した。
だが自分の置かれた状況がやはり夢ではないのだと分かると、再びばたりと布団に倒れこんだ。
「………戦国時代よね…やっぱ。」
ー…バタバタバタ…
「…ん?」
「おっはようございまーす!!こまさんこまさん!!朝餉お持ちしますけどどうです~?」
「何でお前がこまの世話を甲斐甲斐しく焼いておるのだっ!!侍女に任せよと言うのが分からぬのか!!」
「あだだだだだだ兄上何もそんなに焦って目一杯掴まなくったって…あいだだだだ!!」
「ぷっ…信繁さんに…晴信さん?」
障子の向こう側で何やら騒がしくする二人の影にこまは思わず吹き出すと、襖からひょこっと顔を出した。
「身支度を整えたら頂きます。」
「さ…左様か!!では…って信繁!!待て!!」
ー…バタバタバタ…
「はは…若いなー朝から元気だ…。」
こまはそう言って眠たそうに自分の着物を整えると、
充電は忘れていたものの忘れずしっかり持って来ていた化粧ポーチを取り出し、手慣れた様子で化粧を始めたのであった。
.....................
ー…ドサッツ!!
「まだまだぁー!!もう一回!!」
「ははは!!懲りぬなあ。」
「相撲ですか?」
朝ごはんを食べ終えて部屋を出たこまは、外で楽しそうに相撲をとる晴信と信繁に出くわした。
当然ながらこてんぱんにやられている信繁だったが、それでも嬉しそうに晴信に向かっていっていた。
「ああ~兄上に勝ちたい!!でも兄上に勝てないっ!!というか寒いっす!」
「はは…力でかなわぬなら技巧を凝らすしかあるまい、お前にはその才がある。励めばきっと私に勝つのもすぐだろう。」
「は……はいっ!!」
晴信のその激励の言葉に、信繁は嬉しそうに頷いた。
信繁のそのキラキラした目に、本当に信繁が晴信のことを慕っている様子が見て取れこまも思わず目を細めた。
「じゃあ…信繁さん、これ割れます?」
「へ?石?んんんんん!!……って割れるわけ無いっすよ石なんて!!」
「ええ~じゃあまだ晴信さんには勝てないですよ~修行のやり直し!!」
「ええ~!?」
「ははは…。」
ー…ギシッ…
「朝から精が出るな、信繁。」
笑い合っていた三人の背後から響いた声に皆が驚き振り返ると、そこには威厳あふれる出で立ちの男性が立っていた。
先程まで和やかだった周囲の空気が一気に張りつめるのを見て、こまは瞬時にこの男性が板垣の言っていた"武田信虎"なのだと悟り頭を下げた。
「あっ…父上、おはようございます!!」
「おはようございます。」
「……。」
信虎は挨拶を返した二人の息子を見ると、あからさまに晴信を一瞥し信繁の肩にポンと手を置いた。
「信繁、お前には私も期待している。しっかり励んで武田家を"継げる"立派な武人となるのだぞ。」
「え…?」
「……。」
(さっきからこの人…分かりやすいくらい晴信さんを…)
(感じ悪い。)
信虎が貼り付いたような笑顔でそう言うと、少しざわついた空気の中晴信は表情を変えること無く淡々としていた。
嫡男であるはずの晴信を蔑ろにしているとの話は初めて会ったこまにもすぐに見て取れいたたまれない思いになったが、
そんな空気を割るように、信繁は晴信の手を取りはつらつとした笑顔で言葉を返した。
「父上、私はこれからも立派な兄上の"右腕"となれるようしっかり精進していく所存にございます!!」
「信繁…。」
「……お前は本当に謙虚で可愛らしいのう信繁。のう、晴信?」
「……はい。」
信繁の予想外の言葉に信虎はそれ以上晴信に突っかかることをやめると、頭を下げていたこまの方を見やった。
晴信はそんな信虎に一瞬警戒したような素振りを見せたが、信虎は気にも留めること無くこまに声をかけた。
「うぬがこまか。晴信のことを助けていただいたとのこと礼を言う、ごゆるりと過ごされよ。」
「え…あ…ありがとうございます…!!」
「晴信、せっかくだ城下を案内したら良いではないか。部屋にこもっていてもつまらぬであろう。」
「は…はい…!!」
晴信は信虎の予想外の言葉に少し驚いたようだったが、嬉しそうに返事を返した。
虐げられてもまだ父への期待を捨てきることの出来ない様子の晴信の嬉しそうな横顔に、こまの胸はチクリと痛んだ。
「こま、では行こう。私が案内する!!」
「あ…は、はいっ!!」
「あ、兄上!!俺も一緒に行くっす……」
「信繁。」
「え…?」
「お前にはまだ他にやらねばならぬことがあるだろう。あのおなごのことは晴信に任せていればよい。」
「は…はい……。」
そう言う信虎の有無を言わせぬ様子に、信繁はただ黙って従うしかなかった。
だが二人の後ろ姿とそれを眺め笑みを浮かべる信虎の横顔に、
信繁の胸にはほんの少しの違和感と不安がざわついていたのだった…。
.
ー…ピーチチチ……
「……はっ…!!」
翌朝、鳥のさえずる声に目を覚ましたこまは少し期待を込めて周囲を見渡した。
だが自分の置かれた状況がやはり夢ではないのだと分かると、再びばたりと布団に倒れこんだ。
「………戦国時代よね…やっぱ。」
ー…バタバタバタ…
「…ん?」
「おっはようございまーす!!こまさんこまさん!!朝餉お持ちしますけどどうです~?」
「何でお前がこまの世話を甲斐甲斐しく焼いておるのだっ!!侍女に任せよと言うのが分からぬのか!!」
「あだだだだだだ兄上何もそんなに焦って目一杯掴まなくったって…あいだだだだ!!」
「ぷっ…信繁さんに…晴信さん?」
障子の向こう側で何やら騒がしくする二人の影にこまは思わず吹き出すと、襖からひょこっと顔を出した。
「身支度を整えたら頂きます。」
「さ…左様か!!では…って信繁!!待て!!」
ー…バタバタバタ…
「はは…若いなー朝から元気だ…。」
こまはそう言って眠たそうに自分の着物を整えると、
充電は忘れていたものの忘れずしっかり持って来ていた化粧ポーチを取り出し、手慣れた様子で化粧を始めたのであった。
.....................
ー…ドサッツ!!
「まだまだぁー!!もう一回!!」
「ははは!!懲りぬなあ。」
「相撲ですか?」
朝ごはんを食べ終えて部屋を出たこまは、外で楽しそうに相撲をとる晴信と信繁に出くわした。
当然ながらこてんぱんにやられている信繁だったが、それでも嬉しそうに晴信に向かっていっていた。
「ああ~兄上に勝ちたい!!でも兄上に勝てないっ!!というか寒いっす!」
「はは…力でかなわぬなら技巧を凝らすしかあるまい、お前にはその才がある。励めばきっと私に勝つのもすぐだろう。」
「は……はいっ!!」
晴信のその激励の言葉に、信繁は嬉しそうに頷いた。
信繁のそのキラキラした目に、本当に信繁が晴信のことを慕っている様子が見て取れこまも思わず目を細めた。
「じゃあ…信繁さん、これ割れます?」
「へ?石?んんんんん!!……って割れるわけ無いっすよ石なんて!!」
「ええ~じゃあまだ晴信さんには勝てないですよ~修行のやり直し!!」
「ええ~!?」
「ははは…。」
ー…ギシッ…
「朝から精が出るな、信繁。」
笑い合っていた三人の背後から響いた声に皆が驚き振り返ると、そこには威厳あふれる出で立ちの男性が立っていた。
先程まで和やかだった周囲の空気が一気に張りつめるのを見て、こまは瞬時にこの男性が板垣の言っていた"武田信虎"なのだと悟り頭を下げた。
「あっ…父上、おはようございます!!」
「おはようございます。」
「……。」
信虎は挨拶を返した二人の息子を見ると、あからさまに晴信を一瞥し信繁の肩にポンと手を置いた。
「信繁、お前には私も期待している。しっかり励んで武田家を"継げる"立派な武人となるのだぞ。」
「え…?」
「……。」
(さっきからこの人…分かりやすいくらい晴信さんを…)
(感じ悪い。)
信虎が貼り付いたような笑顔でそう言うと、少しざわついた空気の中晴信は表情を変えること無く淡々としていた。
嫡男であるはずの晴信を蔑ろにしているとの話は初めて会ったこまにもすぐに見て取れいたたまれない思いになったが、
そんな空気を割るように、信繁は晴信の手を取りはつらつとした笑顔で言葉を返した。
「父上、私はこれからも立派な兄上の"右腕"となれるようしっかり精進していく所存にございます!!」
「信繁…。」
「……お前は本当に謙虚で可愛らしいのう信繁。のう、晴信?」
「……はい。」
信繁の予想外の言葉に信虎はそれ以上晴信に突っかかることをやめると、頭を下げていたこまの方を見やった。
晴信はそんな信虎に一瞬警戒したような素振りを見せたが、信虎は気にも留めること無くこまに声をかけた。
「うぬがこまか。晴信のことを助けていただいたとのこと礼を言う、ごゆるりと過ごされよ。」
「え…あ…ありがとうございます…!!」
「晴信、せっかくだ城下を案内したら良いではないか。部屋にこもっていてもつまらぬであろう。」
「は…はい…!!」
晴信は信虎の予想外の言葉に少し驚いたようだったが、嬉しそうに返事を返した。
虐げられてもまだ父への期待を捨てきることの出来ない様子の晴信の嬉しそうな横顔に、こまの胸はチクリと痛んだ。
「こま、では行こう。私が案内する!!」
「あ…は、はいっ!!」
「あ、兄上!!俺も一緒に行くっす……」
「信繁。」
「え…?」
「お前にはまだ他にやらねばならぬことがあるだろう。あのおなごのことは晴信に任せていればよい。」
「は…はい……。」
そう言う信虎の有無を言わせぬ様子に、信繁はただ黙って従うしかなかった。
だが二人の後ろ姿とそれを眺め笑みを浮かべる信虎の横顔に、
信繁の胸にはほんの少しの違和感と不安がざわついていたのだった…。
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