第二十六話 動乱の長州
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ー…ガララ…
「晋作さん、お団子、宿の方から頂いたので置いておきますね。」
「おお、すまんな。」
「じゃあここに置いておきま・・・・・・・!!!」
「す…すみません部屋間違えましたーーーーっっ!!!!」
「?」
先日のBW破壊事件以来なにかと忙しく、久しぶりに幕末の地に降り立ったこまは慌てて襖を閉めた。
晋作の部屋だと思って開けた部屋には見知らぬお坊さんが座っており、こまは顔を赤らめ頭を抱えた。
(あ~も~何やってんの私…あの事件以来頭まともに働いてない…それに…)
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「お祖父ちゃんが……私にアンドロイドを…?」
「そうそう、友達だって作ってあげてたじゃない?えっと…博士のアンドロイド試作機の六号機だったから…確かろくちゃんじゃなかったっけ?」
「ろく……ちゃん……?」
「それに博士がこまちゃんに厳しかったって?そんなまさかあ、ずっと一緒にいたじゃない!
お守りだってそう、こまちゃんを大切にしてたからあげたんでしょう?まあ僕も昔の記憶は老化のせいか曖昧なところがあるけど…どうしちゃったのこまちゃん!」
「……え……?」
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(あの日木野さんから聞いた事、どうして私の記憶とこんなにも違うんだろう…?でも確かに私にはろくちゃんって……友達がいた。あれは……)
「ろく…ちゃん…」
「団子。」
「へ?うわあああああああああ!!す…すみませんすみません!!!!!!」
「はあ?お前何言うとるんじゃ、俺じゃ俺。」
「へ…………?し………しししし晋作さん!??そ…その頭……!!」
「ああこれな、藩の奴らがあんまりにも分からん事言うんで暇を貰って出家してやった!!ははは!!!!」
「は…ははは…?」
(デジャヴ……!!!!)
そう言って豪快に笑う晋作の頭は、髷を落としすっかり丸められていた。
久しぶりに幕末に戻ったこまは晋作のその唐突な出家と剃髪行為に、晴信を見上げ苦笑いを浮かべた。
「…流石にこの展開、二度目が来るとは思いませんでした。」
「ははは、一度目は私か。いやいや似合うではないか晋作!」
「法名は西行の真似して東行って名前にした。」
「結構ふざけてますよね。」
「失礼なやつじゃな~藩が俺の意見は今じゃなく数年先に聞きたいなんて言うもんやけんお望み通り数年間暇をもらうと言うただけじゃ。数年間は書物でも読んでのんびり過ごすんじゃ。」
「のんびり…ですか。」
「ああ、のんびりじゃ。」
そう言って晋作はこまの手から団子を取ると、再び部屋の奥で書物に目を落とした。
だがその物言いと横顔はどこかふてくされているようでもあり、こまと晴信は顔を見合わせた。
「大丈夫でしょうか…。」
「大丈夫であろう、世はあのような男を結局放っておくことは出来ない。しばしの休息と思って自由にさせてやろう。」
「……はい。」
晴信の言葉通り、その後晋作が萩の地でのんびりと過ごすことが出来たのはほんの二ヶ月程度であった。
晋作が再び表舞台に引きずり出されることになったその頃、玄瑞は下関の地で外国船との戦いに身を投じていた。
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ー…ドンッ…ドンドンッ……
「砲撃用意…打てっ!!!!!!」
「やった…!!久坂さん、外艦が逃げていきよります!!」
「ああ…これで三隻目だ。でも油断しないで、追撃用意、放て!!!!」
幕府と朝廷がついに攘夷の決行を命じ、藩命で下関に入っていた玄瑞らは”光明寺党”という浪士組を作り善戦を続けていた。
立て続けに三隻の外国船を打ち払い、はやる気持ちを吐き出すように戦う玄瑞らの勢いは凄まじかった。
「それにしても小倉藩は一体何をやってるんだ…一気に異国船を叩いた方がいいっていうのに……。」
「確かにこれじゃあ足並みが揃いませんね。」
「小倉藩はそもそも攘夷活動に消極的だったし…もう一度足並みをそろえるように上から言ってもらった方がいいかもしれないな…。」
玄瑞はそう言うと、口に手を当てなにかを考えるように黙り込んだ。
攘夷の命が出されたと言っても藩によってはその熱量には差がある、報復やリスクを恐れた藩は、おいそれと攻撃を仕掛けることはしなかったのだ。
「…どうするんだ?」
「うん、この戦況の報告も兼ねて京都に行こう。そして朝廷に小倉藩のことも伝えよう。八雲さん蛍さん、随行頼めるかな。」
「ああ、勿論だ。」
「それは大丈夫なんやけど…長州の藩兵にここ任していって大丈夫なん?あの人達まともに戦っとらん気がするんやけど…。」
蛍はそう言うと、今もこれと言って積極的に動くでもない藩兵たちの姿を見やった。
彼らは玄瑞の率いる浪士隊とは違い藩士による正規軍の武士たちで、この戦いでもいまいち活躍しているとはいい難い状況だった。
「まあ…残りの光明寺党の隊士達は残しておくし…彼らも武士で藩の正規兵だ。僕の指揮がなくなっても戦ってくれるだろう。それよりも今は、長州が攘夷を実行できたことを伝え、諸藩にもそれをいち早く徹底させないと…!!」
「分かった…じゃあすぐに行こう。」
この時玄瑞の頭の中には、長州一藩の事よりも日本の国全ての事が頭にあったに違いない。
そう言うと、玄瑞は戦を残りの兵に託し御幸と蛍を伴いすぐさま下関を発った。
だがこのあとすぐ、玄瑞らのいなくなった下関の地は外国艦に砲撃を受け長州の艦三隻も撃沈されてしまう。
それもそのはず玄瑞の予想は大きく外れ、藩の正規兵達はうろたえ逃げ惑うばかりで想像以上に役に立たなかったのだ。
仕舞いには藩兵の武士たちの逃げ惑う情けない姿を見ながら、兵ではない農民達ですら失望し悔しがっていたという有様、結果は火を見るよりも明らかだった。
そんな主軸を欠いた絶望的な状況の中、玄瑞と入れ替わるように戦況をなんとかしろと送られたのが
あの俗世を離れ”のんびり”していたはずの
破天荒坊主だったのだ……。