第二十一話 新たな縁
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ー…コンコン…
「晴信さーん、できましたか?」
「ああ。」
「入りまー……おおおっ!!」
聞こえた声にわくわくしながら扉を開けたこまは、驚きに声を上げた。
そこには御幸から借りた洋服に身を包んだ晴信が立っており、見慣れないその姿にこまは嬉しそうに目を輝かせた。
「まだ慣れぬが動きやすいな。これでよいのだろうか?」
「よい…よいです!!!!」
「ははっ、そうか、よいか。」
食い気味にそう答えたこまに、晴信は少し照れながら笑った。
晴信がこの時代に来て数日、随分と変わってしまった生活様式に戸惑いながらも晴信は一つ一つこの生活を受け入れようとしていた。
「何から何まで貸してもらってすまないな、八雲。それにしても着物を普段でも着ている者は未来ではもういないのか?私は着物でも良いのだが…」
「いないことはないですけれど、寧ろ普段着と言うより式典や祝い事などの特別な日に着るものとなっていますね。まあ普段から着ている人は少数です。」
「格式張りすぎて自分で着ることの出来る人が減っていますしね。」
「着物が自分で着れない…?そういうものなのか…。」
「まあとりあえずはそれでいいと思いますので後はいくつかサイズの合うものを見繕って下さい。寿が案内しますので。」
「はい!!お任せ下さい!!」
こまはそう言うと、嬉しそうに頷いてみせた。
だが片や晴信はまだどこか緊張した面持ちで、これから出かける賑やかすぎる窓の外を眺めていた。
「この街に…本当に馴染めるのだろうか。やはりまだどこかおかしくはないか?」
「全然、大丈夫ですよ!!髪もちょうど短くなっていたのでちょうど良かったですし…。」
「だが出陣するには最善の準備をしてもっと入念な下調べをしなければならぬであろう…!!」
「晴信さん…一体何と戦うつもりですか…?」
「それにしても…お前はえらくめかしこんで浮かれてるようだが、遊びに行くんじゃねーからな。分かってるんだろうな。」
「うっ…嫌だなあ、分かってますよ。久しぶりに私服着たからそう見えるだけですってば~…。」
御幸の言う通り、今日は服の見繕いの他に晴信に外の一般常識や注意点などを教えて回る予定になっていた。
だがここ数日この時代についてのことを御幸に教わり続けていた晴信と久しぶりに二人でいられることに、こまは傍目から見ても分かる程に浮足立っていたのだ。
(だって二人で出掛けられるなんてデートみたいだし…それにどうせ見て回るなら楽しんでもらいたいもん。)
「おい…そのカバンから猛烈にはみ出してる浮かれたパンフレットの束はなんだ…。」
「あっ…ちょっと人のカバン覗かないで下さい!!!!」
「分かってると思うが若が着てるのは俺の服だからな…あんまりベタベタくっついてその厚化粧をつけんじゃねーぞ。」
「はーい…晴信さん若干ズボンの丈足りてないようですしね~…早々に買い替えにいきますからご心配なくうう~。」
「・・・・殺されたいようだな。」
「さあさあ行きましょう晴信さんっっ!!行ってきまーす!!!」
「え?あ、おお。ではしばし服を借りるぞ八雲!!」
ー…バタバタ…
「ったく……呑気なもんだなあいつは…。」
バタバタと慌ただしく晴信の腕を掴み駆けて行くこまに、御幸は一人ハアと呆れたようにため息を吐いた。
ー……ピピピ…
「ああ、蛍か。どうだ?」
「うーんまあ多分戸籍関係はなんとかなると思う。存在してなかった人間を存在させるってのもまあ厄介なもんやわ。」
ガンウェアの通話に出た蛍は役場で書類に埋もれているようで、困ったように頭をかいた。
「そうか…すまねえな。あとの処理は俺がしておく。」
「あとはまあここでどうやって生活していくかやろ、いつまでも宿泊棟に泊めとくわけにはいかんし仕事とかもせなお金ないやろうし。」
「仕事なあ~…それが難問だよなー…。」
「で、その当の本人は?」
「寿と一緒に服買いに出掛けた。」
「うえええええ!?僕がせっせと働いてやっとるっていうのにいい!!!!こまちゃんとデーーーートーーー!!??許せん!!帰ったらこの書類ぶん投げてやる!!」
「はは……まあ着飾んのはあいつの十八番だろ。着せ替え人形にされなきゃいいがな…。」
御幸はそう言うと、一階から街に出かけるこまと晴信の姿を見下ろした。
洋服を着せてもその立ち居振る舞いに未だ違和感が残る晴信と、そんな晴信と一緒で嬉しくてしょうがないと言ったこまに御幸も目を細めた。
「まあ…取り敢えず仕事のことは俺に少し考えがある、そっちはそっちで作業を進めといてくれ。頼んだぞ。」
「?」