【茶トガ】ハート花火と恋心。
「え!?ヒミコちゃん、浴衣で夏祭り行ったことないん!?」
「んー、ないですねぇ。昔1回お友達と行った時は制服だったから」
「夜に制服なんてアウトやん!てかそれなら今年一緒に行かへん?身長ほとんど変わらんし私の浴衣貸してあげる」
「いいの?なら私の初めてはお茶子ちゃんに捧げるねぇ」
「ちょっと!言い方!」
真っ赤になったお茶子ちゃんはポカポカと私を叩いてくる。
ピュアで可愛いからついイタズラしたくなるのだ。
お茶子ちゃんは夏祭り当日のプランを考えているらしくぶつぶつ何かを言っている。
そんなお茶子ちゃんが可愛くて、眺めているだけで幸せな気持ちになった。
それから1週間後、私はお茶子ちゃんに連れられて夏祭りに来ていた。
その前にお茶子ちゃんの家で浴衣を借り、着付けまでしてもらった。
「ヒミコちゃん浴衣似合っとる。可愛い」
「本当?かぁいいお茶子ちゃんにかぁいいって言ってもらえて嬉しい」
紺地にピンクの花が描かれた浴衣は大人可愛い雰囲気でとても気に入った。
お茶子ちゃんは白地に大きい向日葵が描かれた浴衣だ。
笑顔が眩しいお茶子ちゃんにとても似合う。
髪型はいつもと違ってお団子ひとつにしてみた。お茶子ちゃんが簪も貸してあげると言ってくれたからだ。
お団子に蝶がついた簪を挿す。一気に夏祭り感が増した。
「わー!やっぱりお団子ええね!頑張ろ」
鏡の前で意気込んだお茶子ちゃんはハーフアップにし、頭の上で小さなお団子を作った。
色違いの蝶がついた簪を挿すと私の方を見て笑った。
「短いからちゃんと出来へんけど少し似とるやろ?」
「うん、似てる!オソロなんて嬉しいなぁ」
「私も嬉しいよ!ヒミコちゃんの真似出来て良かった。髪伸ばそかなぁ」
「お茶子ちゃんはそのままでも世界一かぁいい」
にっこり笑って言うとお茶子ちゃんは照れ笑いしてから私に抱き着いた。
「ありがと、ヒミコちゃん!」
そうしてバタバタと準備を終えた私たちは18時頃、夏祭り会場に到着した。
「あー、お祭りって美味しいもん沢山あるんだよねぇ。太っちゃう」
「そんなの気にしなくていいのに。美味しそうに食べるお茶子ちゃんが大好きだから」
「ヒミコちゃんが甘いから私だけ太っていくやん!」
「ふふっ、それが狙いかもしれません」
カランコロンと下駄を鳴らしつつ屋台が並んだ場所へ向かうと既に混雑していた。
お茶子ちゃんは「離れ離れになったら困るから」と私の手を握った。
頷いてぎゅっと握り返してから人の波へと入っていく。
わたあめの甘い香り、フライドポテトを揚げた匂い、かき氷を削る音──祭ならではの雰囲気に心が踊る。
「お茶子ちゃん、何食べる?」
少し大声で聞くとお茶子ちゃんは繋いでいない方の手で屋台を3つ指差した。じゃがバター、焼きそば、かき氷の3つに決めたらしい。
2人で人の合間を縫って屋台へ向かう。
目当ての物を買ってようやく人混みから脱出したのは19時過ぎだった。
「はぁ、すごいねぇ。こんなに人がいるなんて」
「皆お祭り好きなんやなぁ。あ、ちょうどあの席空いたから取っちゃお」
運良く空いたベンチに並んで座る。腿に買ってきた食べ物を置いた。
「いただきます」
溶け始めていたかき氷から口にする。冷たい甘さが口の中に広がった。
私はイチゴ味でお茶子ちゃんはメロン味だ。
「一口交換せぇへん?本当は同じ味らしいけど」
「ふふっ、同じ味かどうか確認してみましょうか」
メロン味を掬って食べてみる。違う味に思えるから不思議だ。
そう言おうとしてお茶子ちゃんを見ると苦しげに額を押さえていた。
「あ、もしかして」
「うぅ……やっちゃった……」
冷たいものを一気に食べると額が痛くなるやつだ。申し訳ないけれど笑ってしまう。
「本当にお茶子ちゃんはかぁいいねぇ」
「可愛くないやろ。だっさいわぁ……」
その後のじゃがバターと焼きそばはニコニコと笑いながら食べていた。
美味しそうに食べるお茶子ちゃんは本当に幸せそうで──どんどん好きになっていく。
「あー、美味しかった。ゴミ捨ててくるね」
「ありがとう」
食べ終えたゴミをゴミ箱まで捨てに行ったお茶子ちゃんの背中を眺める。
お茶子ちゃんに恋してからずっとお茶子ちゃんの気持ちが分からなかった。
私に対してどういう感情を抱いているのだろう。
「友達」以上の感情に変わることなどあるのだろうか。
きっと聞けば答えてくれる。けれど否定されたらと思うと聞くことが出来ない。
「ヒミコちゃん!ヒミコちゃん!」
声を掛けられてハッとする。いつの間にか戻ってきたお茶子ちゃんは私の手を引っ張った。
「そろそろ打ち上げ花火やって。あっちに穴場あるから行こ!」
「行きましょう。花火、楽しみだなぁ」
ベンチから立ち上がり、穴場へと向かう。そこは確かに人が少ししかいなかった。
「ここからよく見えるって噂で聞いて……」
説明するお茶子ちゃんの後ろに大輪の花が咲いた。遅れて爆音が鳴る。
「わっ!すごーい!」
「わあぁぁ!綺麗」
色とりどりの花火が夜空に飛んでいく。見上げていた私の手をお茶子ちゃんが握った。
「私もヒミコちゃんのこと、大好きやから」
「え……?」
どうして知っているのだろう。
お茶子ちゃんの気持ちが知りたかったことを。
「人の笑顔が好きやからかなぁ。側にいればいるほどそういう細かいとこまで分かっちゃうみたい。特にヒミコちゃんのことはよく見とったから」
「お茶子ちゃん……」
「恋心にも結構前から気付いとったよ。だから私も自分の気持ちが分かったら言おうと思ってたの。やっぱり私も好きなんやって自覚したから」
大きな笑顔を見せたお茶子ちゃんと私の間に花火が飛んだ。
「あっ!」
それはタイミングを計ったかのようなピンクのハートだった。
2人で目を見合わせて笑う。
握った手と手が更に熱を持った気がしたのは、暑さの所為だけではないはずだ。
「んー、ないですねぇ。昔1回お友達と行った時は制服だったから」
「夜に制服なんてアウトやん!てかそれなら今年一緒に行かへん?身長ほとんど変わらんし私の浴衣貸してあげる」
「いいの?なら私の初めてはお茶子ちゃんに捧げるねぇ」
「ちょっと!言い方!」
真っ赤になったお茶子ちゃんはポカポカと私を叩いてくる。
ピュアで可愛いからついイタズラしたくなるのだ。
お茶子ちゃんは夏祭り当日のプランを考えているらしくぶつぶつ何かを言っている。
そんなお茶子ちゃんが可愛くて、眺めているだけで幸せな気持ちになった。
それから1週間後、私はお茶子ちゃんに連れられて夏祭りに来ていた。
その前にお茶子ちゃんの家で浴衣を借り、着付けまでしてもらった。
「ヒミコちゃん浴衣似合っとる。可愛い」
「本当?かぁいいお茶子ちゃんにかぁいいって言ってもらえて嬉しい」
紺地にピンクの花が描かれた浴衣は大人可愛い雰囲気でとても気に入った。
お茶子ちゃんは白地に大きい向日葵が描かれた浴衣だ。
笑顔が眩しいお茶子ちゃんにとても似合う。
髪型はいつもと違ってお団子ひとつにしてみた。お茶子ちゃんが簪も貸してあげると言ってくれたからだ。
お団子に蝶がついた簪を挿す。一気に夏祭り感が増した。
「わー!やっぱりお団子ええね!頑張ろ」
鏡の前で意気込んだお茶子ちゃんはハーフアップにし、頭の上で小さなお団子を作った。
色違いの蝶がついた簪を挿すと私の方を見て笑った。
「短いからちゃんと出来へんけど少し似とるやろ?」
「うん、似てる!オソロなんて嬉しいなぁ」
「私も嬉しいよ!ヒミコちゃんの真似出来て良かった。髪伸ばそかなぁ」
「お茶子ちゃんはそのままでも世界一かぁいい」
にっこり笑って言うとお茶子ちゃんは照れ笑いしてから私に抱き着いた。
「ありがと、ヒミコちゃん!」
そうしてバタバタと準備を終えた私たちは18時頃、夏祭り会場に到着した。
「あー、お祭りって美味しいもん沢山あるんだよねぇ。太っちゃう」
「そんなの気にしなくていいのに。美味しそうに食べるお茶子ちゃんが大好きだから」
「ヒミコちゃんが甘いから私だけ太っていくやん!」
「ふふっ、それが狙いかもしれません」
カランコロンと下駄を鳴らしつつ屋台が並んだ場所へ向かうと既に混雑していた。
お茶子ちゃんは「離れ離れになったら困るから」と私の手を握った。
頷いてぎゅっと握り返してから人の波へと入っていく。
わたあめの甘い香り、フライドポテトを揚げた匂い、かき氷を削る音──祭ならではの雰囲気に心が踊る。
「お茶子ちゃん、何食べる?」
少し大声で聞くとお茶子ちゃんは繋いでいない方の手で屋台を3つ指差した。じゃがバター、焼きそば、かき氷の3つに決めたらしい。
2人で人の合間を縫って屋台へ向かう。
目当ての物を買ってようやく人混みから脱出したのは19時過ぎだった。
「はぁ、すごいねぇ。こんなに人がいるなんて」
「皆お祭り好きなんやなぁ。あ、ちょうどあの席空いたから取っちゃお」
運良く空いたベンチに並んで座る。腿に買ってきた食べ物を置いた。
「いただきます」
溶け始めていたかき氷から口にする。冷たい甘さが口の中に広がった。
私はイチゴ味でお茶子ちゃんはメロン味だ。
「一口交換せぇへん?本当は同じ味らしいけど」
「ふふっ、同じ味かどうか確認してみましょうか」
メロン味を掬って食べてみる。違う味に思えるから不思議だ。
そう言おうとしてお茶子ちゃんを見ると苦しげに額を押さえていた。
「あ、もしかして」
「うぅ……やっちゃった……」
冷たいものを一気に食べると額が痛くなるやつだ。申し訳ないけれど笑ってしまう。
「本当にお茶子ちゃんはかぁいいねぇ」
「可愛くないやろ。だっさいわぁ……」
その後のじゃがバターと焼きそばはニコニコと笑いながら食べていた。
美味しそうに食べるお茶子ちゃんは本当に幸せそうで──どんどん好きになっていく。
「あー、美味しかった。ゴミ捨ててくるね」
「ありがとう」
食べ終えたゴミをゴミ箱まで捨てに行ったお茶子ちゃんの背中を眺める。
お茶子ちゃんに恋してからずっとお茶子ちゃんの気持ちが分からなかった。
私に対してどういう感情を抱いているのだろう。
「友達」以上の感情に変わることなどあるのだろうか。
きっと聞けば答えてくれる。けれど否定されたらと思うと聞くことが出来ない。
「ヒミコちゃん!ヒミコちゃん!」
声を掛けられてハッとする。いつの間にか戻ってきたお茶子ちゃんは私の手を引っ張った。
「そろそろ打ち上げ花火やって。あっちに穴場あるから行こ!」
「行きましょう。花火、楽しみだなぁ」
ベンチから立ち上がり、穴場へと向かう。そこは確かに人が少ししかいなかった。
「ここからよく見えるって噂で聞いて……」
説明するお茶子ちゃんの後ろに大輪の花が咲いた。遅れて爆音が鳴る。
「わっ!すごーい!」
「わあぁぁ!綺麗」
色とりどりの花火が夜空に飛んでいく。見上げていた私の手をお茶子ちゃんが握った。
「私もヒミコちゃんのこと、大好きやから」
「え……?」
どうして知っているのだろう。
お茶子ちゃんの気持ちが知りたかったことを。
「人の笑顔が好きやからかなぁ。側にいればいるほどそういう細かいとこまで分かっちゃうみたい。特にヒミコちゃんのことはよく見とったから」
「お茶子ちゃん……」
「恋心にも結構前から気付いとったよ。だから私も自分の気持ちが分かったら言おうと思ってたの。やっぱり私も好きなんやって自覚したから」
大きな笑顔を見せたお茶子ちゃんと私の間に花火が飛んだ。
「あっ!」
それはタイミングを計ったかのようなピンクのハートだった。
2人で目を見合わせて笑う。
握った手と手が更に熱を持った気がしたのは、暑さの所為だけではないはずだ。
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