【リョガ種】そういう顔、させたくて。
8月に入ってから連日うだるような暑さが続いている。
冷房が効いた部屋にいる分には問題ないが、外は完全な猛暑日だ。
ベッドに転がったリョーガはかなり体力を消耗しているように見える。
「外は暑ぃし中は寒ぃし日本の夏はイカれてるぜ」
「せやなぁ。流石にこないに暑いと嫌になるわ」
種ヶ島はキャスター付きのイスで部屋中を回りながらスマホ画面をスクロールしていた。
つまり暇なのだ。
折角練習休みの日だというのに外は暑く、外出する気がしない。
かといって休みの日に練習するのは禁止されている。
「なんかパーッと気分晴れることしてぇな」
ぼやいたリョーガの言葉とスクロールしていた種ヶ島の指が止まったのは同時だった。
種ヶ島はニイッと笑ってリョーガにスマホを向ける。
「こういう時こそナイトプールや☆」
「……悪くねぇな」
予定が決まり、2人は早速準備に取り掛かった。
元々「暇」や「退屈」が嫌いな2人にとって予定がない方が余計に疲労感が増すのだ。
30分程度で準備を終え、合宿所を飛び出した。
ナイトプールには1時間で到着した。
夕方とはいえ暑さは抜けなかったが、リョーガも種ヶ島も上機嫌だった。
「着いたな。さっさと着替えて水ん中入ろうぜ」
「絶対気持ちええやろな」
更衣室で水着に着替える。
リョーガは種ヶ島の水着を見て首を傾げた。
「お前がそんなに地味なもん選ぶなんて意外だ」
種ヶ島が着用していたのは絵柄のない真っ黒な水着だ。リョーガのオレンジ色の水着と比べたら随分地味な印象を受ける。
派手好きな種ヶ島にしては意外だった。
「地味に見えるやろ?プール入ったら驚くで、きっと」
「何だそりゃ。仕掛けでもあんのか?」
「ふふ、お楽しみに☆ほな行こか」
嬉しそうに先を行く種ヶ島の後ろを歩く。
すると種ヶ島はくるりと後ろを向いて言った。
「あれ借りていかへん?」
指が向いた先にあったのはフラミンゴ型のフロートだ。2人乗りでプールに浮かばせることが出来るらしい。
ナイトプールでは定番のアイテムだと言える。
「いいんじゃねぇ?面白そうだ」
「ほな借りてくるわ☆」
ウキウキと借りに行く種ヶ島を見てリョーガはこっそり微笑んだ。
嬉しそうな恋人の姿を見るだけで嬉しくなる、とても。
フラミンゴフロートを水面に置き、まずそこにリョーガが乗った。
そして種ヶ島からスマホと2人分の飲み物を受け取り、それから種ヶ島もフロートに乗っかった。
「へぇ。こうやって楽しむわけか」
「せやで。泳ぐっていうより乗ってる方がナイトプールって感じやな」
「で、たまにそうやって水の中に足突っ込んだりするわけか」
種ヶ島は水の中に足を入れ、「見てや」と水着を指差した。
ただ黒かった水着にカラフルな模様が浮き出ていた。
「すげぇな。面白ぇ。修二って本当そういうよく分かんねぇもん見つけてくるの得意だよな」
「んー、褒められとるんか分からんけど褒め言葉やと思っとくわ」
「勿論褒めてるぜ。斬新なもん探してくんのすげぇわ」
「ま、皆と同じじゃつまらんからな☆」
「それがお前のいいとこだ」
リョーガはトロピカルジュースを飲み、ニイッと笑った。
「……その笑顔は反則やなぁ」
小声で言った種ヶ島はスマホをいじってインカメを開く。
「沢山写真撮ろうな☆ここなら涼しくて快適やし」
「あぁ。久々にまともな顔になりそうだぜ」
「リョーガはいつでもカッコええから大丈夫やで。部屋でだらけとる時もカッコええもん」
「カッカッカ!そんなこと思うのお前ぐらいだろうな」
2人でトロピカルジュースを飲んでいる姿を撮ってから種ヶ島はリョーガにカメラを向けた。
リョーガは咄嗟に笑顔を作る。
「……はぁ、幸せや」
その写真を眺めた種ヶ島は心底幸せそうな顔をする。
リョーガは頷いて言った。
「俺はお前のおかげで幸せだ。ずっとそういう顔してろよ」
「ほなずっとさせといてや」
「当然。任せとけ」
自分が種ヶ島のことを幸せにしている自信はある。
だからこそ期待以上のものを渡したいとリョーガは思う。
例えば今、こうして──頬にキスしてみせるとか。
「わっ!」
本気で照れたような顔をする種ヶ島が可愛くて、リョーガはにししと意地悪く笑った。
「それ以上は帰ってからな」
「もう、ほんまズルイわ」
けれどやっぱり種ヶ島は幸せそうで。
一生その顔をさせたいとリョーガは思うのだった。
冷房が効いた部屋にいる分には問題ないが、外は完全な猛暑日だ。
ベッドに転がったリョーガはかなり体力を消耗しているように見える。
「外は暑ぃし中は寒ぃし日本の夏はイカれてるぜ」
「せやなぁ。流石にこないに暑いと嫌になるわ」
種ヶ島はキャスター付きのイスで部屋中を回りながらスマホ画面をスクロールしていた。
つまり暇なのだ。
折角練習休みの日だというのに外は暑く、外出する気がしない。
かといって休みの日に練習するのは禁止されている。
「なんかパーッと気分晴れることしてぇな」
ぼやいたリョーガの言葉とスクロールしていた種ヶ島の指が止まったのは同時だった。
種ヶ島はニイッと笑ってリョーガにスマホを向ける。
「こういう時こそナイトプールや☆」
「……悪くねぇな」
予定が決まり、2人は早速準備に取り掛かった。
元々「暇」や「退屈」が嫌いな2人にとって予定がない方が余計に疲労感が増すのだ。
30分程度で準備を終え、合宿所を飛び出した。
ナイトプールには1時間で到着した。
夕方とはいえ暑さは抜けなかったが、リョーガも種ヶ島も上機嫌だった。
「着いたな。さっさと着替えて水ん中入ろうぜ」
「絶対気持ちええやろな」
更衣室で水着に着替える。
リョーガは種ヶ島の水着を見て首を傾げた。
「お前がそんなに地味なもん選ぶなんて意外だ」
種ヶ島が着用していたのは絵柄のない真っ黒な水着だ。リョーガのオレンジ色の水着と比べたら随分地味な印象を受ける。
派手好きな種ヶ島にしては意外だった。
「地味に見えるやろ?プール入ったら驚くで、きっと」
「何だそりゃ。仕掛けでもあんのか?」
「ふふ、お楽しみに☆ほな行こか」
嬉しそうに先を行く種ヶ島の後ろを歩く。
すると種ヶ島はくるりと後ろを向いて言った。
「あれ借りていかへん?」
指が向いた先にあったのはフラミンゴ型のフロートだ。2人乗りでプールに浮かばせることが出来るらしい。
ナイトプールでは定番のアイテムだと言える。
「いいんじゃねぇ?面白そうだ」
「ほな借りてくるわ☆」
ウキウキと借りに行く種ヶ島を見てリョーガはこっそり微笑んだ。
嬉しそうな恋人の姿を見るだけで嬉しくなる、とても。
フラミンゴフロートを水面に置き、まずそこにリョーガが乗った。
そして種ヶ島からスマホと2人分の飲み物を受け取り、それから種ヶ島もフロートに乗っかった。
「へぇ。こうやって楽しむわけか」
「せやで。泳ぐっていうより乗ってる方がナイトプールって感じやな」
「で、たまにそうやって水の中に足突っ込んだりするわけか」
種ヶ島は水の中に足を入れ、「見てや」と水着を指差した。
ただ黒かった水着にカラフルな模様が浮き出ていた。
「すげぇな。面白ぇ。修二って本当そういうよく分かんねぇもん見つけてくるの得意だよな」
「んー、褒められとるんか分からんけど褒め言葉やと思っとくわ」
「勿論褒めてるぜ。斬新なもん探してくんのすげぇわ」
「ま、皆と同じじゃつまらんからな☆」
「それがお前のいいとこだ」
リョーガはトロピカルジュースを飲み、ニイッと笑った。
「……その笑顔は反則やなぁ」
小声で言った種ヶ島はスマホをいじってインカメを開く。
「沢山写真撮ろうな☆ここなら涼しくて快適やし」
「あぁ。久々にまともな顔になりそうだぜ」
「リョーガはいつでもカッコええから大丈夫やで。部屋でだらけとる時もカッコええもん」
「カッカッカ!そんなこと思うのお前ぐらいだろうな」
2人でトロピカルジュースを飲んでいる姿を撮ってから種ヶ島はリョーガにカメラを向けた。
リョーガは咄嗟に笑顔を作る。
「……はぁ、幸せや」
その写真を眺めた種ヶ島は心底幸せそうな顔をする。
リョーガは頷いて言った。
「俺はお前のおかげで幸せだ。ずっとそういう顔してろよ」
「ほなずっとさせといてや」
「当然。任せとけ」
自分が種ヶ島のことを幸せにしている自信はある。
だからこそ期待以上のものを渡したいとリョーガは思う。
例えば今、こうして──頬にキスしてみせるとか。
「わっ!」
本気で照れたような顔をする種ヶ島が可愛くて、リョーガはにししと意地悪く笑った。
「それ以上は帰ってからな」
「もう、ほんまズルイわ」
けれどやっぱり種ヶ島は幸せそうで。
一生その顔をさせたいとリョーガは思うのだった。
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