【月寿】もしかしておばけ。
「月光さん!月光さん!」
バンッとドアが開き、焦った顔をした毛利が越知に抱き着いた。
「どうした?」
さして動じた様子もない越知は冷静に問い掛ける。
毛利はバッと顔を上げて言った。
「おったんやけど!」
「何がだ」
「おばけ!」
毛利は本気で怯えたような顔をして続ける。
「脱衣所に忘れ物したから取りに行ったんやけど、俺しかおらんのにガタンっていうて」
「あぁ」
「そんで振り返ったら何もおらんから気にせんかったんやけど、去り際に鏡見たら映ってたんですわ!」
「それが幽霊に見えたわけか」
「はい!絶対そうやんね!」
ぎゅっとくっついた毛利の頭を撫でながら越知は思考した。
恐らく毛利の見間違いだろうとは思う。
越知は幽霊の存在を信じていないし、出会ったこともない。
だからどれだけ言われようと幽霊の所為だとは思えなかった。
「で、どうする?確認しに行くのか?」
「えー……どないしよ。怖いけど見たいけど怖い」
「お前が確認したいなら着いて行くが」
「ほなお願いします!」
抱き着くのをやめた毛利は越知の腕にしがみついて歩き出した。
冷静な越知に対し、毛利は怯えきっている。
深夜0時過ぎの合宿所は静かだ。
いつもは騒がしい廊下もシーンとしている。
「ほんまにおったらどないしよ」
「大丈夫だ。いるわけがない」
脱衣所に着き、越知は躊躇いなくドアを開けて明かりをつけた。
当然誰もおらず、物音もしなかった。
「さっきその辺で音がしたんやけど」
越知は毛利が指差した先に足を進める。
そこには何もなかった、が──。
「あぁ、これじゃないか?」
換気の為に開けられたであろう窓の立て付けが悪く、軽くガタガタとしていた。
どうやら壊れかけているようだ。
「え……ほんまや。てか報告せんと」
「そうだな。明日の朝コーチに言っておこう。これで解決したな」
「ほな影は?」
毛利は鏡をチラッと覗き込む。怪しいものは何も映っていない。
「それに関しては恐らくこの窓から差し込んだ外の光が反射したのだろうと思う。出口近くで見たのなら位置も丁度いい」
「ほぇ……なるほど。流石月光さんや!ほなおばけやなかったんやね!」
「そうだな。とりあえずお前が不安に思ったことは解消されたはずだ」
「月光さんに相談して良かったわぁ」
先程まで怯えていた毛利は一転して満面の笑みになった。
単純な奴で良かったと越知は思う。
いつまでも怖がっているより笑っている方が良いからだ。
「部屋に戻るか」
「はい!わざわざありがとうございました」
バタンと脱衣所のドアを閉めて歩き出す。
少し進んだ所で越知が言った。
「そういえば忘れ物は無事取ってくることが出来たのか?」
「あー、それなんやけど忘れ物が何か忘れてしもて。何で俺さっき脱衣所行ったんかなって思ってます」
「……幽霊に呼ばれたのかもな」
「ちょ、怖いこと言わんでください!」
本気で怖がる毛利に越知はフッと微笑を返す。
つい意地悪いことを言ってしまうのは怖がる毛利が可愛いからなのだが、それは言わないでおいた。
「また何かあったら付き合うから大丈夫だ」
「絶対お願いしまっせ!」
毛利はぎゅっと越知の腕を握る。
指が食い込むぐらいに力を入れて握り締める毛利の頭をよしよしと撫でる。
「あぁ、任せておけ」
部屋についた2人は就寝準備を始める。
──その後、眠る間際に忘れ物が腕時計だったことを思い出した毛利が越知を起こし「怖いから一緒に来てください!」ともう一度脱衣所へ行くことになるのだった。
バンッとドアが開き、焦った顔をした毛利が越知に抱き着いた。
「どうした?」
さして動じた様子もない越知は冷静に問い掛ける。
毛利はバッと顔を上げて言った。
「おったんやけど!」
「何がだ」
「おばけ!」
毛利は本気で怯えたような顔をして続ける。
「脱衣所に忘れ物したから取りに行ったんやけど、俺しかおらんのにガタンっていうて」
「あぁ」
「そんで振り返ったら何もおらんから気にせんかったんやけど、去り際に鏡見たら映ってたんですわ!」
「それが幽霊に見えたわけか」
「はい!絶対そうやんね!」
ぎゅっとくっついた毛利の頭を撫でながら越知は思考した。
恐らく毛利の見間違いだろうとは思う。
越知は幽霊の存在を信じていないし、出会ったこともない。
だからどれだけ言われようと幽霊の所為だとは思えなかった。
「で、どうする?確認しに行くのか?」
「えー……どないしよ。怖いけど見たいけど怖い」
「お前が確認したいなら着いて行くが」
「ほなお願いします!」
抱き着くのをやめた毛利は越知の腕にしがみついて歩き出した。
冷静な越知に対し、毛利は怯えきっている。
深夜0時過ぎの合宿所は静かだ。
いつもは騒がしい廊下もシーンとしている。
「ほんまにおったらどないしよ」
「大丈夫だ。いるわけがない」
脱衣所に着き、越知は躊躇いなくドアを開けて明かりをつけた。
当然誰もおらず、物音もしなかった。
「さっきその辺で音がしたんやけど」
越知は毛利が指差した先に足を進める。
そこには何もなかった、が──。
「あぁ、これじゃないか?」
換気の為に開けられたであろう窓の立て付けが悪く、軽くガタガタとしていた。
どうやら壊れかけているようだ。
「え……ほんまや。てか報告せんと」
「そうだな。明日の朝コーチに言っておこう。これで解決したな」
「ほな影は?」
毛利は鏡をチラッと覗き込む。怪しいものは何も映っていない。
「それに関しては恐らくこの窓から差し込んだ外の光が反射したのだろうと思う。出口近くで見たのなら位置も丁度いい」
「ほぇ……なるほど。流石月光さんや!ほなおばけやなかったんやね!」
「そうだな。とりあえずお前が不安に思ったことは解消されたはずだ」
「月光さんに相談して良かったわぁ」
先程まで怯えていた毛利は一転して満面の笑みになった。
単純な奴で良かったと越知は思う。
いつまでも怖がっているより笑っている方が良いからだ。
「部屋に戻るか」
「はい!わざわざありがとうございました」
バタンと脱衣所のドアを閉めて歩き出す。
少し進んだ所で越知が言った。
「そういえば忘れ物は無事取ってくることが出来たのか?」
「あー、それなんやけど忘れ物が何か忘れてしもて。何で俺さっき脱衣所行ったんかなって思ってます」
「……幽霊に呼ばれたのかもな」
「ちょ、怖いこと言わんでください!」
本気で怖がる毛利に越知はフッと微笑を返す。
つい意地悪いことを言ってしまうのは怖がる毛利が可愛いからなのだが、それは言わないでおいた。
「また何かあったら付き合うから大丈夫だ」
「絶対お願いしまっせ!」
毛利はぎゅっと越知の腕を握る。
指が食い込むぐらいに力を入れて握り締める毛利の頭をよしよしと撫でる。
「あぁ、任せておけ」
部屋についた2人は就寝準備を始める。
──その後、眠る間際に忘れ物が腕時計だったことを思い出した毛利が越知を起こし「怖いから一緒に来てください!」ともう一度脱衣所へ行くことになるのだった。
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