【リョガ種】君を守る為に。

(へぇ……次のターゲットも大したことなさそうだな)
スマホに送られてきたメールを見る。
そこには次のターゲットに関する情報が書かれていた。
名前と職業と見た目、それから居場所。
シンプルに書かれたメールを3分眺めて消去した。
ターゲットの情報は脳内にしっかりと刻まれた。
(種ヶ島修二、情報屋、白髪の褐色肌。居場所は──)
あと5分もあれば目的地に着くだろう。
暗い道の更に奥。闇が深まった場所にその店はあった。
看板も何もないが間違いないはずだ。
普通に入っても即座に仕事を終えられる自信はあった。
客のフリをして近付いて軽く首を絞めるだけで落とすことが出来るからだ。
だから今日もそうやって仕事を進めることにした。
だが、ドアを開けると意外な光景が広がっていて怯んでしまった。
「!?」
外の暗さとは打って変わって明る過ぎる店内。
ライトが明るい訳ではなく内装が派手なのだ。
ビビッドカラーで彩られた部屋。
その部屋の中心にターゲットは座っていた。
「いらっしゃい。俺に何の用やろ?」
にっこり笑った種ヶ島修二は俺が答える前に言葉を続けた。
「あー、けど言わんでええわ。分かっとるから」
「は?」
「君みたいなイケメンくんに殺られるのは悪くない気ィするけど、やっぱりまだ生きたいねんなぁ」
「……」
どうやら全部バレているらしい。
俺が殺し屋だということも、自分が命を狙われているということも。
「俺のこと殺しに来たんやろ?正々堂々と来るとは思わんかったけど」
「流石情報屋ってか。命狙われてんのに随分余裕そうだな。強ぇとか?」
「いやいや。俺は頭しか勝てへんよ。せやから守ってくれへん?」
「はぁ?」
訝しむ俺に種ヶ島修二は笑顔を絶やさずに言った。
「君の他にあと4人俺のこと殺しにくるねん☆ボディガードになって欲しいなぁって」
「へぇ。全部情報握ってるわけだ。けど殺し屋にボディガード頼むなんてどうかしてるぜ。裏切るかもしれねぇのに」
「俺は俺のこと信じとるから大丈夫や。君に決めたのは俺の判断」
「つまり5人のうちの誰かに賭けようと思ったってわけか?」
「せや☆で、君に決めたってわけや。越前リョーガくん」
「っ!」
思わず驚いた顔をしてしまった。
何故ならそれは俺の本名で、数年前殺し屋になった時に捨てたものだったからだ。
「な?俺の頭、結構使えると思うんやけどどや?てか君以外の殺し屋にも依頼してたんやし依頼者に苛立たへん?」
「……頭の回転早くて口が上手いってことか。情報屋にピッタリだな」
「ちなみに俺は5人のことちゃんと理解した上で君を選んだんやけど」
ウインク付きで言う種ヶ島修二は少しも怯えた様子は見えない。
殺されない自信があるのだろう。
正直に言えば今すぐに殺せる自信はある。
動きを読まれることなく致命傷を与えられる、絶対に。
けれどコイツは上手いのだ──人の心を揺さぶるのが。
先程言われた通り俺は依頼者に軽く苛立ちを覚えた。
そして俺を選んだという言葉に喜びを感じた。
完全に「人間」を分かっている奴だ。
更に言えば「俺」のことをよく分かっている。
「……面白ぇ奴だとは思う。で、報酬は?流石にボディガードやんのに無償は都合良すぎるぜ」
「大丈夫。君がいつも貰っとる以上の報酬払えるから☆」
「何処まで俺のこと知ってんだよ」
恐怖を通り越して笑ってしまう。
俺以上に俺の情報を得ているのではないかと思ってしまうぐらいの情報量だ。
「何でも知っとる。それでも俺は君に勝てへん。体術も何も出来へんしスピードも人並みやから一瞬で君に殺されてまうやろな」
「言葉と雰囲気が合ってねぇのは虚勢か?」
「そないなこと言わせんといてや☆」
種ヶ島修二が言っていることは事実だろう。
本当に身体能力は平均値なのだ。
虚勢と話術と情報力で切り抜けてきたのだとしたら──相当な技だ。
「……分かった。お前の考えに乗ってやるよ」
「ほんま?助かるわ。ほなこれからよろしく頼むな」
「で、どうすりゃいい?」
「せやなぁ……手始めに俺の恋人になってや☆」
満面の笑顔でそう言った種ヶ島修二に俺は「は?」と本気で呆けた顔で返してしまった。
意味が分からないのは既に慣れ始めているけれど。

「あのな、急に傍に人がおるようになったら絶対探られてまうやん?せやから恋人っていう設定にしといた方が都合ええかと思って。恋人おらんしちょうどええやろ?あぁ、ついでにっちゅーか最重要項目なんやけど俺の好みのタイプなんや、君」
「は、はぁ」
早口でまくし立てられ、勢いに飲まれてしまった。
らしくもなく頷くことしか出来ない。
「で、今日からこの店で暮らしてや。ちゃんと居住空間もあるから大丈夫やで。同棲しよ☆」
「そこまですんのかよ」
「君がおらん時に襲われたらどないすんねん」
「大体お前ここまで1人で何とかしてきたんだろ?なら少しぐらい大丈夫じゃねぇか」
「今回は多方面から狙われとるからな。ちゃんと守ってもらいたいねん」
ニッコリ笑う種ヶ島修二はやはり危機感がないように見える。
それでも少しだけ裏の顔が見えた気がした。
本当は、もしかして──と。
「分かった。一応雇い主だからな。従っといてやるよ」
「おーきに☆ほな2階の部屋使ってや」
立ち上がった種ヶ島修二に着いていく。
2階には広々とした部屋があった。
必要最低限の物しか置かれていない殺風景な部屋はド派手な1階とは正反対だ。
「意外だな。私生活は質素なのか?」
「まぁな。逃げやすいようにしとるって言うのが正しいかもしれんけど」
「そんなにずっと狙われてんのか?」
「こんな職業やからな。俺が狙われとる理由はそれや。無駄に情報持ち過ぎとる」
俺も理由はそんなことだろうと思っていた。
情報屋なのだから知ってはならないことまで知ってしまっている可能性は高い。
まして種ヶ島修二はこれだけ情報通なのだから尚更だ。
「そもそも何でそんなに情報持ってんだ?俺の本名知ってる時点で相当だと思うけど」
「んー、そのうち教えたるわ☆今はゆっくり休んどきぃ」
ウインクした種ヶ島修二はひらりと手を振って階段を降りて行った。
1人になり、ドサッとソファに座り込んだ。
「はぁ……」
有り得ないことが続いた所為か一気に疲労感に襲われる。
目を閉じて考える。自分は本当に正しい選択をしたのかどうか。
(少なくともアイツは俺を騙そうとしてるわけじゃなさそうだな)
そんなことを考えているうちに眠りに落ちてしまった。
──殺し屋になってから自室以外で眠れたことなど初めてだった。

夢を見た。過去の夢。
まだ「越前リョーガ」という名前で生きていた頃、俺は普通の人間だった。
転げ落ちた切っ掛けは学生時代に売られた喧嘩を買ってしまったこと。
そしてやり返し過ぎてしまったこと。
そんなに喧嘩が強かった方ではない。
ただ人よりも運動神経が良く、器用だった。
だから俺はやられた以上の暴力を的確に与えてしまった。
軽く与えたつもりの攻撃が相手にとっては致命傷だったらしい。
それが決定打だった。
恨まれるようになって、追われるようになって、逃げるようになって──俺の人生は一変してしまった。
一度転げ落ちたら地の底まで落ちることなど容易い。
行き場がなくなった俺は必然的に暗い場所へ逃げ込むようになった。
そこは思いの外、居心地が良かった。
誰も過去を詮索しないし、必要以上に踏み込んでこない。
底辺社会とはいえ強ければ人並みの生活を送ることが出来る。
そして俺は強かった。日毎に強くなっていく実感もあった。
だから職業として「殺し屋」を選んだ。
自分の才能を最大限に活かせる職業だと思ったから。
本名を捨てた俺に付けられた名前は「オレンジ」だった。
依頼主や殺し屋仲間が勝手に付けたのだが、ピッタリだと自分でも思う。
昔からずっと好きだったオレンジを食べるのは今でも変わらない。
それだけが唯一変わらなかったことかもしれない。
「アイツが仕事を終えた後は血の匂いよりもオレンジの匂いがする」
そんな噂が流れた時は思わず苦笑してしまった。
「だったらいいけど」と今も思う。
オレンジは全てを失った自分に残ったたったひとつの大切なもの。
大袈裟でなく本気でそういう存在になっていた。
だから今の俺はオレンジの為に人を殺しているのかもしれない。

「ん……」
目を開けるとベッドの上で眠っていた。
確かソファで目を瞑った覚えがある。
ぼんやり記憶を遡っていると部屋のドアが空いた。
「あ、起きとる。とりあえず水飲まへん?」
「おー、サンキュ」
半分眠ったまま俺は投げられたペットボトルを受け取りごくごくと半分飲み干した。
「はーっ、美味い。お陰で目ぇ覚めてきたぜ」
「それは良かったわ☆随分寝とったなぁ。日付変わってしもたで」
「そんなに寝てたのか。いつも割とすぐ起きちまうのに」
「俺の部屋、安眠出来そうやな」
「運んでくれたんだよな。悪かった」
ソファからベッドまであまり距離はないがほぼ同じ体格の人間を運ぶのは困難だっただろう。
わざわざ運んでくれたことを申し訳なく思う。
だが種ヶ島修二は笑って言った。
「まぁ簡単やなかったけど気持ち良さそうに寝とったから起こすのも気ぃ引けるなって。結構強引に担いだんやけど目覚まさなくて良かったわ」
「それは俺もちょっと驚いた」
いつもの自分なら他人に触れられた瞬間、間違いなく起きるはずだ。
殺気があるにしろないにしろ確実に気付くはずなのだ。
それなのに今日は全く気付かなかった。
持ち上げられて運ばれたというのに。
そう説明すると種ヶ島修二は「うーん」と首を傾げた。
「何でやろな。俺に安心感があったとか?」
「胡散臭さしかないけどな」
「酷いわぁ。けど実際、安心しとったから起きんかったんとちゃうん?」
「……うーん」
理由が全く分からない。その所為で種ヶ島修二の言葉の信憑性が増してしまう。
初対面の相手に安心するなど不可解だ。
けれど現実はそうだったのだから否定も出来ない。
「ま、悪いよりはええやろ。ほなはよ荷物とか持ってきてな。そんで俺のことしっかり守ってや☆」
「あぁ。てか俺が寝てる時は大丈夫だったのかよ?」
「適当にあしらったわ」
「普通に狙われてんじゃねぇか。それにあしらえるならボディガードの必要なくねぇか?」
「言葉が通じる範疇なら何とかなるんやけど、2回目以降は強硬手段が多いんやって。ほら、はよはよ!」
ペシペシと叩かれ、渋々立ち上がる。
「30分ぐらいで戻る。それまでに死ぬなよ」
「それぐらいなら生き残れると思うわ☆任せときぃ」
グッと親指を立てる種ヶ島修二はまるで10年来の友人のようだ。
想像もしなかった動きに笑ってしまう。
「笑うとかわええな、オレンジ君」
「……リョーガでいい」
「あれ?けど名前捨てたんやろ?その呼び方したら不都合あるんとちゃう?」
「俺の過去探るのなんてもうお前ぐらいだろ。だから大丈夫だ」
「了解☆ほなリョーガって呼ばせてもらうわ。俺のことは修二って呼んでな」
ひらりと手を振る修二に手を上げて応えてから店を出る。
(さっさと荷物取ってくるか)
勝手に走り出した自分の足。
成り行きで守ると決めた相手なのにここに早く帰ってこなければと思うなんて──どうかしてる。

「思ったより早かったなぁ。有難いわ」
「まぁな。そんなに荷物もねぇし」
「ふふっ、もっと嬉しい理由あるような気ぃするけど言わんといたるな」
「……別に。理由なんて何もねぇよ」
さっさと2階に上がる。
修二と目を合わせているだけで全て見透かされそうだ。
持ってきた少量の荷物を置いていると1階からガタガタと騒々しい音がした。
考えるまでもない。俺はダッと駆け出し、階段を一気に飛び降りた。
視界に映ったのは後ろから口を塞がれている修二と犯人の姿。
考えたのは数秒。そして行動に移すまでも数秒。
素早く犯人の後ろに回り込み、首に腕を回した。
躊躇いもなく力を入れる。
脱力した犯人を捨て置き、修二の元へ駆け寄った。
「修二!大丈夫か?」
「ケホッケホッ……大丈夫や」
「これがさっき言ってた奴か?」
「せや。やっぱり力づくで来たなぁ。これからこんなんばっかりになりそうで嫌やわ」
「これからは俺がいるから大丈夫だ。少し目離しただけでヤバそうだしちゃんと傍にいることにする」
「頼れるボディガードやな☆」
ニッと笑う修二だが喉に痛みを感じるのかすぐに顔を顰めた。
「少し休んでろ。見ててやるから」
「ん、おーきに。ほな今日の情報屋は閉店ってことで」
ガチャと店のドアに鍵をかけた修二は椅子にドカッと座った。
俺は対面にあった客用と思しき椅子に座る。
喉を擦る修二は辛そうにも見えた。
「そうだ。飲み物飲んだ方がいいんじゃねぇか?勝手に出していいなら取ってくるぜ」
こくりと頷いたのを見て、指さされた方へ向かう。
店の奥はキッチンになっていて冷蔵庫には色んな飲み物が入っていた。
水とオレンジジュースとスポーツドリンクを持って戻る。
「どれがいい?」
「ほなスポドリで。オレンジジュース、飲んでええよ」
「そうか?じゃ、遠慮なく」
スポーツドリンクを渡し、オレンジジュースを飲む。
いつもオレンジに齧り付いている俺にとってジュースは久しぶりだった。
100%のオレンジジュースは濃厚で充分満足することが出来た。
「美味い。ありがとな」
「気にせんでええよ。キッチンも好きに使ってや」
「了解。遠慮なく使わせてもらう。喉、平気そうか?」
「お陰さんで☆スポドリ飲んだらすっかり良くなったわ。助けてくれたこと感謝しとる」
「ああいう風に力ずくで狙われること、今までなかったのか?」
「なかったなぁ。そもそも本気で命狙われるようになったんは最近やねん。ヤバい情報仕入れてしもたのかも」
修二は頭の後ろに手を当て「どれか分からへんけど」と笑った。
「俺にはどの情報も大切でどの情報もどうでも良く思えるわ」
「情報って全部お前の頭の中に入ってるのか?」
「せやな。データ化はしてへん。せやからその辺にあるパソコンとかは盗まれても大丈夫やで」
情報が頭の中にしかないのは好都合だった。
守る対象は少ない方が確実だ。
「成程。それならお前だけ守れば良さそうだな」
「ふふっ、立派なボディガードさんや。殺し屋より向いてるんとちゃう?」
「俺もそう思い始めたとこだ。ボディガードに変更して正解だったかもしれねぇ」
頭を使うのは向いていないと思っていた。
言われるがままにターゲットを消して行った方が自分に合っている気がして。
けれど今、こうして頭の中で戦略を立てるのも悪くないと思う。
この店の構造や修二自身のことを知れば知る程考えが湧いてくる。
それは妙に「楽しい」と思えた。
「リョーガが楽しそうで良かったわ」
「そう見えるか?」
「うん。ちゃんと笑っとるよ。笑顔なんてずっと忘れてたかもしれへんけど」
「その通りだ。お前は俺の過去よく知ってんだろ?ならお前も教えろよ」
俺の言葉に修二はウインクをして言った。
「それはもうちょい仲良うなってからな☆急かすのはモテへんで?恋の駆け引きってやつや」
恋なんてよく分からないけれど、修二が言うのならそうなのだろう。
いつか教えてくれる日が来るかもしれない。
それを楽しみに待つなど確実に俺らしくないけれど。
「カカカッ!そうかよ。分かった」
未来の目標を持つことがこんなにも幸せなことなんて思いもしなかった。

修二のボディガードを始めて1週間経った。
この間に狙われたのは2回だ。
どちらも一緒に外出している時だった。
むしろそう仕向けたとも言える。
狙われるタイミングが分かっていた修二は俺と外出し、わざと1人になる時間を作った。
当然俺はその計画を知っていてあえて修二のことを狙わせた。
そして返り討ちにする──2回ともそれが上手くいった。
「リョーガのお陰で安心出来るわ」
「そりゃ良かった。本当は何事もなく1人で出掛けられたらもっといいだろうけどな」
「いや?リョーガとデート出来るから嬉しいで」
ぎゅっと腕に抱き着く修二は幸せそうだ。
最初の頃、演技ならばそこまでしなくても良いのではないかと提案したら「俺は本気で好きやのに!」と憤慨していたことを思い出す。
だから俺は修二にとってちゃんとした恋人らしい。
別に悪くないと思えるのは、俺は俺で多少なりとも好意を寄せているからだ。
「随分危険なデートだな」
「サプライズ満載やろ?」
「命狙われてる奴がサプライズで片付けるのもどうかと思うぜ。お前には圧倒的に危機感が足りねぇ」
「あー、まぁ昔から楽観的やったけどリョーガといるようになってからはますます安心して過ごせるようになったわ☆」
「喜んでいいんだか何だか分かんねぇな」
とはいえ頼られていることは当然嬉しい。
その期待以上のものを返したいと思う。
店に戻り、2人分のコーヒーを淹れた修二は「そう言えば俺の過去、知りたいんやっけ?」と突然過去話を切り出した。
それは存外、アッサリしていた。
「子どもの頃捨てられて、ここの情報屋に拾われて引き継いだってとこやな。せやから情報沢山持ってんねん」
「簡潔に言ってくれてありがとな。分かりやすい。お陰で守るべきモノがもう1つ見えたぜ」
「ん?」
「この店。大事なんだろ?大切な人から引き継いだモンなんだからさ。お前と一緒に守ってやるよ」
「……リョーガ、おーきに。ほんまは俺も守りたいと思っとった」
修二は照れたように笑って俺に抱き着いた。
「俺の想像以上にカッコ良くて素敵な人やった、リョーガは」
「ふぅん。そんじゃもっとそういう風に思ってもらえるようにしねぇとな」
「大丈夫。リョーガのお陰でいつも幸せやもん。出会えて良かったって毎日思っとるよ」
「奇遇だな。俺も同じように思ってるぜ」
ぐいっと顎を掴んでキスをする。
俺の動きは意外だったのか修二な軽く驚いたような顔をした。
「カカカッ!お前が驚くとこ見れるなんて珍しい」
「俺のこと驚かせられるんはリョーガしかおらへんわ☆」
「だろうな」
修二のことを抱き締め返す、強く強く。
もう離れることなんて考えられらないから──命に替えても守りたいと思う。
仕事として沢山の命を奪ってきた俺が幸せを願うなんて烏滸がましいけれど。
「幸せになりたい」と生まれて初めて思ってしまったから。
「ずっと一緒にいような☆」
「あぁ、約束する」
同じことを思ってくれたことが嬉しくて、もう1度キスをした。
約束を果たしてみせると誓いながら。

危険と隣り合わせの自分たちがどれ程長く一緒にいられるかは分からない。
けれど出来るだけ長い間、傍にいたい。
底辺まで落ちた自分にまさか光が差すとは思わなかったけれど。
俺の人生はこの為にあったのだと──君を守る為にあったのだと、思ってる。
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