【月寿】キャラメルマキアートとうさいぬ。
「……かなり甘いな」
「せやねぇ。けどそれがええんですわ」
デート中に立ち寄ったカフェで俺はキャラメルマキアートを注文した。
甘い物があまり得意でない月光さんはいつも通りブラックコーヒーを注文したのだけれど「一口飲んでみてください!」とキャラメルマキアートを押し付けてみた。
多分気に入ってもらえないだろうとは思っていた。
それでも飲んでくれたことが嬉しかった。
「一口なら美味しいと感じる」
「ほんまでっか!?」
「あぁ。甘い物好きのお前が気に入るのも分かる気がする」
そう言って微笑を浮かべた月光さんを見て今日もまた恋に落ちる。
月光さんと付き合って1ヶ月経つが、デートをするのは2回目だった。
付き合う前も一緒に出掛けてはいたけれど、先輩後輩だった頃と恋人になってからではやはり意味が違う。
今日もワクワクしながら私服を選んでドキドキしながら街に繰り出した。
特に予定もなく都会に来てショッピングを楽しんだ後、カフェに入って今に至る。
ジャズの流れる店内は落ち着いていてまったりと過ごすのにちょうどいい。
月光さんも気に入ってくれたらしくリラックスしているのが分かる。
俺はニッコリと笑った。
「このお店知った時、絶対月光さんのこと連れてこよって思ったんですわ。味も美味しいし店の雰囲気もええから」
「そうだな。お前のお勧めはいつも正解だ」
「俺、月光さんのことよう分かっとるから」
これだけは何よりも自信があった。だからにししと歯を出して笑う。
「否定はしない」
フッと笑った月光さんの顔を見て鼓動が早まる。
1ヶ月付き合って気付いたことは、月光さんのカッコ良さには一生慣れそうもないということ。
──そして慣れる気もないということ。
「ほな帰る前にもう1箇所寄ってもええですか?」
「構わない」
カフェを出て向かった先は大きめのゲームセンターだった。
様々な筐体が並ぶ中、クレーンゲームを目指して2階へ上がる。
目当てのぬいぐるみを見つけ、俺は目を輝かせた。
「これ!今日から発売なんやけどめちゃくちゃ欲しくて!」
「お前の好きなキャラクターだな」
「そうなんですわ。こないに大きなぬいぐるみ出るんは初めてで。情報見た時から狙ってたんや」
クレーンゲームの中には大きなうさいぬが寝ている。
今回はおやすみバージョンでくたっと眠っている姿がウリのぬいぐるみなのだ。
抱き締めて眠ったら気持ち良さそうだと想像していたらどうしても欲しくなってしまった。
「ほな、やってみます」
早速硬貨を入れてクレーンを動かす。
クレーンゲームはあまりやったことがないが何回か挑戦すれば取れる気がしていた──最初のうちは。
「うーん……」
500円玉を3回投入した辺りでやっと気付く。
「これ、無理そうやんねぇ」
「アームがあまり強くなさそうだな」
月光さんの言う通りだ。アームにはあまり期待が出来ない。
こういう時は力技が使えない。その分技量に頼るしかないがクレーンゲームに慣れていない俺には当然技量がなかった。
「うぅ……諦めるしかなさそうやんなぁ」
「出来るか分からないがやってみるか」
そう言って月光さんは500円玉を投入した。
「え!?ええんですか?」
「期待はするな。初めてやる」
初めてという割に月光さんは躊躇いなくクレーンを動かした。
俺よりも素早い動作で寸分狂いもなくうさいぬを掴む。
ラストチャンスでクレーンがタグに引っかかり遂に引き摺ることが出来た。
「おぉ!」
不安定なままうさいぬは出口へ向かっていく。
両手を合わせた俺は神に祈る気持ちだった。
月光さんは冷静な顔で成り行きを見守っている。
そしてうさいぬは出口の穴に落ちた。
「わーっ!すごいっ!」
取り出したうさいぬは見た目よりももふっとしていて気持ちが良かった。
「たまたま上手く行って良かった」
「流石月光さんですわ!てかこれ、貰ってしもてええんですか?」
「あぁ。お前の為に取ったからな」
ぎゅっと抱き締めてみる。
大きめのうさいぬは身長が高い俺にも抱き締めやすい大きさだった。
「ほんまに嬉しいわぁ。ありがとうございます!」
「喜んでもらえたなら何よりだ」
「月光さんに取ってもらえたからますます大切なぬいぐるみになりましたわ」
欲しかった物を好きな人に取ってもらえるなんてまるで幸せが重なったようで、より大切な物になった。
ベッドに置いていつでも抱き締められるようにしようと考えていると月光さんに苦笑された。
「ぬいぐるみひとつでそんなに喜んでもらえるならまた頑張ろう」
「ほんまでっか!?ほな今度は最初から月光さんにお願いしますわ」
「期待に応えられるよう練習しておかないとな」
心做しか楽しそうな月光さんはもしかしたらクレーンゲームが気に入ったのかもしれない。
そうだったらいいと思う。
「ほな帰りましょか」
「あぁ、そうだな」
──また今日も幸せで大切な思い出が出来たことがこの上なく嬉しい。
帰り道、うさいぬの写真と共に今日の出来事をかいつまんでインスタにアップしてみた。
「幸せそうで何よりや☆」と真っ先にコメントを付けてくれた種ヶ島さんに沢山話を聞いてもらうと決めた。
「せやねぇ。けどそれがええんですわ」
デート中に立ち寄ったカフェで俺はキャラメルマキアートを注文した。
甘い物があまり得意でない月光さんはいつも通りブラックコーヒーを注文したのだけれど「一口飲んでみてください!」とキャラメルマキアートを押し付けてみた。
多分気に入ってもらえないだろうとは思っていた。
それでも飲んでくれたことが嬉しかった。
「一口なら美味しいと感じる」
「ほんまでっか!?」
「あぁ。甘い物好きのお前が気に入るのも分かる気がする」
そう言って微笑を浮かべた月光さんを見て今日もまた恋に落ちる。
月光さんと付き合って1ヶ月経つが、デートをするのは2回目だった。
付き合う前も一緒に出掛けてはいたけれど、先輩後輩だった頃と恋人になってからではやはり意味が違う。
今日もワクワクしながら私服を選んでドキドキしながら街に繰り出した。
特に予定もなく都会に来てショッピングを楽しんだ後、カフェに入って今に至る。
ジャズの流れる店内は落ち着いていてまったりと過ごすのにちょうどいい。
月光さんも気に入ってくれたらしくリラックスしているのが分かる。
俺はニッコリと笑った。
「このお店知った時、絶対月光さんのこと連れてこよって思ったんですわ。味も美味しいし店の雰囲気もええから」
「そうだな。お前のお勧めはいつも正解だ」
「俺、月光さんのことよう分かっとるから」
これだけは何よりも自信があった。だからにししと歯を出して笑う。
「否定はしない」
フッと笑った月光さんの顔を見て鼓動が早まる。
1ヶ月付き合って気付いたことは、月光さんのカッコ良さには一生慣れそうもないということ。
──そして慣れる気もないということ。
「ほな帰る前にもう1箇所寄ってもええですか?」
「構わない」
カフェを出て向かった先は大きめのゲームセンターだった。
様々な筐体が並ぶ中、クレーンゲームを目指して2階へ上がる。
目当てのぬいぐるみを見つけ、俺は目を輝かせた。
「これ!今日から発売なんやけどめちゃくちゃ欲しくて!」
「お前の好きなキャラクターだな」
「そうなんですわ。こないに大きなぬいぐるみ出るんは初めてで。情報見た時から狙ってたんや」
クレーンゲームの中には大きなうさいぬが寝ている。
今回はおやすみバージョンでくたっと眠っている姿がウリのぬいぐるみなのだ。
抱き締めて眠ったら気持ち良さそうだと想像していたらどうしても欲しくなってしまった。
「ほな、やってみます」
早速硬貨を入れてクレーンを動かす。
クレーンゲームはあまりやったことがないが何回か挑戦すれば取れる気がしていた──最初のうちは。
「うーん……」
500円玉を3回投入した辺りでやっと気付く。
「これ、無理そうやんねぇ」
「アームがあまり強くなさそうだな」
月光さんの言う通りだ。アームにはあまり期待が出来ない。
こういう時は力技が使えない。その分技量に頼るしかないがクレーンゲームに慣れていない俺には当然技量がなかった。
「うぅ……諦めるしかなさそうやんなぁ」
「出来るか分からないがやってみるか」
そう言って月光さんは500円玉を投入した。
「え!?ええんですか?」
「期待はするな。初めてやる」
初めてという割に月光さんは躊躇いなくクレーンを動かした。
俺よりも素早い動作で寸分狂いもなくうさいぬを掴む。
ラストチャンスでクレーンがタグに引っかかり遂に引き摺ることが出来た。
「おぉ!」
不安定なままうさいぬは出口へ向かっていく。
両手を合わせた俺は神に祈る気持ちだった。
月光さんは冷静な顔で成り行きを見守っている。
そしてうさいぬは出口の穴に落ちた。
「わーっ!すごいっ!」
取り出したうさいぬは見た目よりももふっとしていて気持ちが良かった。
「たまたま上手く行って良かった」
「流石月光さんですわ!てかこれ、貰ってしもてええんですか?」
「あぁ。お前の為に取ったからな」
ぎゅっと抱き締めてみる。
大きめのうさいぬは身長が高い俺にも抱き締めやすい大きさだった。
「ほんまに嬉しいわぁ。ありがとうございます!」
「喜んでもらえたなら何よりだ」
「月光さんに取ってもらえたからますます大切なぬいぐるみになりましたわ」
欲しかった物を好きな人に取ってもらえるなんてまるで幸せが重なったようで、より大切な物になった。
ベッドに置いていつでも抱き締められるようにしようと考えていると月光さんに苦笑された。
「ぬいぐるみひとつでそんなに喜んでもらえるならまた頑張ろう」
「ほんまでっか!?ほな今度は最初から月光さんにお願いしますわ」
「期待に応えられるよう練習しておかないとな」
心做しか楽しそうな月光さんはもしかしたらクレーンゲームが気に入ったのかもしれない。
そうだったらいいと思う。
「ほな帰りましょか」
「あぁ、そうだな」
──また今日も幸せで大切な思い出が出来たことがこの上なく嬉しい。
帰り道、うさいぬの写真と共に今日の出来事をかいつまんでインスタにアップしてみた。
「幸せそうで何よりや☆」と真っ先にコメントを付けてくれた種ヶ島さんに沢山話を聞いてもらうと決めた。
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