欠けた××
ダン!
ユウサリが壁を叩く。
気づいたら、壁側に追い込まれていた。
「時雨」
いつもより低い声で名前を呼ばれる。
俺は、ユウサリと目を合わせられなかった。
さっき、ほんの一瞬、目が合った。
その時のユウサリの目はいつもと違っていた。
鋭くて、冷たい。
でも、何処か悲しげで。
静かに俺を見つめていた、宝石のような紫の瞳。
今日は、それが怖く感じてしまった。
「時雨、私の目を見て答えて下さい。」
「…何でだよ。」
「聞きたいことがあるから。…ただそれだけです。」
「ただそれだけなら…何で、」
言い終わる前に、ユウサリが俺の顎をクイッと上に持ち上げた。
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