その雨の名は


「……時雨、無理しなくてもいいですよ」
「っ!」
なんで気づいたんだ?まさかの…コイツも俺と同じ、心を読むことができるのか!?←
「…今日一日くらい、甘えたっていいんじゃないですか?」
「なっ……誰が…そんな事を、」
「私が全て受け止めますから…。ね?」
顔を見なくてもわかる。きっと、いつもの笑みを浮かべているんだろう。
でも…何故か…体は冷えきったままなのに、顔だけ熱くなった気がして、また肩口に埋める。
「…煩い。…そうさせてもらうぞ、このやろー…」
「ふふっ…今回は素直なんですね。」
「煩い…あと笑うな…恥ずかしいだろうが…」
何故だかわからない。わからないが、冷えきっていた心も少しずつ、温まっていく気がした。


「なぁ、ユウサリ」
「なんですか?」
「…この雨は、何だろうな」
「"時雨"ですよ。…一頻り降って、晴れる雨の事です。」
「そうか……。」


「ならば、俺の気持ちも…晴れてくれれば…いいな。」
「そうですね。……きっと、晴れますよ。」


その雨、"時雨"


("時雨"はもうじき止む)

(明るくなりつつある空を見ながら、そう思っていた)
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