遥か遠い記憶
一つの木にもたれ、ぼんやりと空を見上げる。
ほぼ毎日、こんな風に過ごしていた。
(……あと一ヶ月、か…)
僕に残された時間は一ヶ月。その間に決めなくてはいけない。
森を去るか。
留まって殺されるか。
…森を去ったところで、僕のようなハーフエルフを受け入れてくれる場所なんて、きっと無いだろう。
「はぁ……」
今日三度目の溜め息を吐く。
また、空を仰ぐ。
ただ、どうしようもない、虚脱感が満ちていく。
毎日それの繰り返し。
そのまま一ヶ月が経って、殺されてしまうのか。
なにも変わらない、このままなら…心残りもない。
最近はそう思うくらいだ。
少なくとも、あの娘に出会うまでは……―――
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