「……時雨？」

　少し驚いた表情をしたユウサリがぼやけて見える。




　頬に、何かが伝う。







「…………んだよ…」




「え？」




「わかんないんだよ!!俺には！」


　堰を切ったかのように、涙が止まらない。


　分からない。


　なんで、泣くのかが。


「お前がっ……好きって言う度に、悲しくなるんだよ！…痛いんだよ、心が!!」


「……時雨…」


「どうしたらいいか……分からないんだよ…！」


　縋るに縋れない。


　違う……縋ることが出来ない。



　何で、出来なくなったんだ？





　昔は、出来たのに。








　一度、俺も狂ったから？




　その時、何かを失ったから？






　…分からない。




　俺には…分からない…。


「…ごめんなさい、時雨」

　さっきとは違って、優しい声。

　止まらない涙をユウサリが指で拭い、払った。

「大丈夫、大丈夫だから……泣かないで？」

　そう言いながら、ユウサリに抱き寄せられた。


　欠けたのは「愛」









（やはり、欠けてしまっていた様だ…）

（…きっと、原因は私。だから………）