無意識と自覚
〝同じギルドメンバー〟だから心配。
確かに、それもある。それもあるけれど……
不意に――あの夜を思い出す。
――もう、目覚めてしまいたいんだ
あの時、ゾッとした。
本当は…トキワさんがああ言った時、めちゃくちゃ怖かった。
だって…“いつもの調子”で、けれど何処か悲しそうに笑いながら短剣を手にしていたから。
壊れてる。確かにそう思った。でも、同時に…一瞬だけ見えた。
――本当は、こんなことしたくないっていう“臆病な本心”が。
だからあの時、手が伸ばせた。止めることが出来た。
そうじゃなかったら、今のトキワさんも…きっとアタシもいない。そんな風に思えた。
まあ…そんなことがあったから、今のようにもなったとも言えるんだろうけどさ。
今のトキワさんは、前と変わらない所はある。けれど…変わった所は……
(自然に笑うようになったって所かな…)
今までは何処か"ヘン"と違和感を覚えていた。けど、今はそうとは感じない。
それと謎の甘え。ああしてくる時、ほとんど反応しなくなるのは困るけれど……。何故だろうか。「離さないで」「離れたくない」「寂しい」って言ってる感じがするのは。
そんな事があったな、と思い返しながらテーブルにうつ伏せになるような体勢を取る。そしてオルフィの一言を思い出した。
(同じギルドメンバー……か。)
今、アタシはトキワさんをどう見ているんだろう。
“同じギルドメンバー”として?
それとも、“気になる人”として?
「……うーん、両方って気もするなぁ…」
…結局、わからないっていうのが現状かな?
どちらにせよ、無事に帰って来てほしいという気持ちだけは同じ(のハズ)だから、心配になっているんだろうな、と自分に言い聞かせる。