無意識と自覚
「じゃあ…その、えと……ふ、二人は……恋人同士なんですか?」
「…ふぉいッ!?」
思いっきり声が裏返り、変な声が出た。
いやいや待って。何でそうなるの!?あと何でシズクの方が恥ずかしそうなの!!?
「なっ…なななな何でそういうコトになるの!?」
「えっ!?だ、だって…エルディアさんもトキワさんも……二人でいる時、…その、見ちゃったんですけど……」
「お、おう」
「…二人とも、とっても楽しそうに笑ったりしてたじゃないですか……。それも、他の人には見せないくらいの…嬉しそうな感じでしたよ…?」
「………」
見られてた、ということより…そんな風になっていたことに正直驚いている。
え、何なのアタシ。そんな顔してたの?全然わかんない……
「…本当に?」
聞けばシズクがコクコクと何度も頷く。
ハッキリ言おう。自覚なんてなかった。けど…たった今シズクに言われて………ヤバい。
(ヤバい……今度からあの人と顔合わせらんない…!)
何か、変な風に意識してしまいそうで。自分の顔が熱くなるのを感じ、テーブルに突っ伏して誤魔化そうとした。
「あ…あの…エルディアさん…?ご、ごめんなさい…!」
「な、何で謝るの!?アタシは大丈夫だよっ!?」
慌てて顔を上げるとシズクが涙目になっていた。彼女の頭を軽く撫でると、「だって…」とまた泣きそうになる。
「……おい。シズクに何をした…?」
「あ゙。」
背後から物凄い殺気を感じる。振り返ってみれば…案の定、怒り心頭のオルフィの姿が!
オルフィはアタシとシズクを交互に見てからアタシを睨み付けてきた。…あ、これ誤解されてる…?
「エル…アンタが泣かせたのか?」
「誤解だッ!!」
「あ、あああああのっ!オルフィさん、これはそのっ…エルディアさんのせいじゃなくて…!」
*
*
*
「…なんだ、そうだったのか。」
シズクの必死な説得により、オルフィは納得したみたいだ。…よかった、あのままだとアタシ、確実にシメられてたよ、うん。
とはいえ……
(シズク…ワリとキツイ爆弾落としってたなぁ……)
完全に無自覚だったことを突かれたわけだ。これから、どうしたらいいのか…正直困った。
さっきも思ったように、普通にすればする程、変に意識してしまいそうだし…。
「…エル、どうかしたのか?」
「ん…?ああいや、ちょっとねー…。トキワさん達大丈夫かなーって考えていただけ。」
咄嗟にそう言う。オルフィは怪しむ事なく「確かにな…」と頷く。その横にいるシズクは申し訳なさそうな表情をしながらチラチラとアタシを窺うように見てくる。
「何かあったのかな…まだ帰ってこないし。」
彼の一言でハッとした。
…確かに、出発してから数時間は経つ。依頼内容としては、ウロビトの里、イクサビトの里に行くというようなものだったハズ。
仮に、新しい情報が手に入ったとするのなら…これくらいの時間が経ってもおかしくはないのだけれど…
「ほ、ホントですね…何かあったのかな……」
「同じギルドメンバーだからな…心配だな。」
「…そだね。」
そんな会話をしてから、二人と別れる。
宿の広間には、またアタシだけになった。