無意識と自覚
「おう、エルディアか」
「何スかーリドウ」
トキワさん達が出発してから早数時間。宿の広間にあるテーブルに顎を乗せてぐたーっとしているとリドウに話し掛けられた。
リドウはと言うと、何故かキョロキョロと周りを確認してからアタシに耳打ちしてきた。
「お前、リント達と同じの割り当て部屋だろ?最近戻ってないそうだな。」
「?あー…確かにそうですねー」
「……いつもドコで寝てるんだ?」
「トキワさんの所ですが?」
何気なくそう答えれば、リドウの顔がひきつった。そして沈黙。あれ、何かヤバいこと言ったっけ?
何で?と考えてると、さらに声を潜めてきた。
「エルディア…お前…あまりヘンなことはすんなよ?」
「………」
何か、察した。というか、疑われてる?
「やだなー。何もしてないっスよー」
「本当か?」
「本当本当。ちょっと抱き付かれたりはしますけど」
「…………」
またもや沈黙。
しばらくしてからリドウは長い溜め息を吐いた。
「何だ…?俺の認識が異常なのか、コレは……」
「失礼な。アレはただの甘えですよ!子供が親に甘えるヤツとも似てる!」
「それ、トキワのことを軽く貶してないか…?」
「貶したつもりはないですよ!ってか、アレくらいならアタシ、普通に受け入れますんで!」
「寛容だなおい!?」
すげぇなエルディア…と驚き、アタシの顔をまじまじと見てきた。
「何ですか、いきなり……。別に、誰かに支えてもらったりするのが悪いんですか?」
「いや……お前、意外と…しっかりしてるんだな。」
「はい?」
首を傾げていると、頭をぽんと軽く叩かれ、リドウが去っていく。…何だったんだろうか。
まあいいや。そう思いながらまたテーブル上にのびる。
「あ、あの……」
「うん?」
今度はシズクに話し掛けられた。相変わらずおどおどしていたが、一度大きく頷くと、口を開いた。
「あのっ…エルディアさんは…トキワさんと…仲がいいんですか?」
「ふぇ?」
何故それを聞くのだろう。疑問に思いながらも改めて考えてみる。
(そうだな…別に仲悪いワケではないよね、多分。最近は謎の行動多いけども……)
チラリと横目で彼女を見ると、相変わらずおどおどしている。あと、心なしか顔が赤いようにも見える。何だろう、緊張か具合でも悪いんだろうか?
「まあ…悪くはないハズだよ。で、何でそんなことを聞くの?」
「えっ!?だ…ぁ…、その、えと…だって…ふ、二人とも…何だか楽しそうだから…です…」
「楽しそうだから…かぁ……」
言われてみれば確かに楽しい…かな。悪い気はしない。
「まあ、そうなるかな?」
「あ…じゃ、じゃあ……二人とも……仲良しなんですね?」
「だろうね。多分」
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