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無意識と自覚


 ぎゅうっ

 迷宮の地図を確認していると、ふいにトキワさんが後ろから抱き付いてきた。といっても、縋るような感じで、それ以上動くことはなかった。

 あの日……本当のトキワさんを「暴いた」日から、この人はこういう行動が多くなった気がする。まあ特に気にすることはなかったけど。

 ただ、こうなるとしばらくは何の反応も示さなくなるのが問題かな。…迷宮の地図で聞きたいことがあったからトキワさんの割り当て部屋に来たというのに……。


「あのー、トキワさん」

「………」

「ちょっと聞きたいことが…」

「…………」

「…あの、生きてますか?」

「…………生きてるよ…」

 かなり間を置いてから答えが返ってくる。返事をした時、僅かに動いたけど、再び動かなくなる。
 …何なんだろう、本当に。

「頭撫でちゃいますよ?うりゃー」

 振り返ってワシワシと頭を撫でてみれば、少し嫌そうな顔をする。けど、まんざらでもないようで、抵抗はしてこなかった。

 そんな表情が何だか面白くて、さらに両手を使って撫でる。古傷を隠している包帯を崩さないように気を使いながら撫で回せば、彼の金色の髪が乱れていく。

「ボサボサになる……。」

「あ、やっと反応した」

 そう言って乱れた髪を手櫛で整える。が、それが終わるとまたぎゅうっと抱き付かれる。今度はアタシの膝に顔を埋めるような体勢だ。


 …わぁ、何だろうこの状況。


 何だか今日はいつもより甘えてくるなぁ……

 そう思っているとドアがノックされる。

「あ、誰か来たっぽいですよ。…呼びます?」

「ん……」

 頭が縦に振られ、いいんだね?と思いながらドアな方に向かって声を掛ける。

「あのっ……クエストの相談で来たんですけど…あれ…エルディアさ…ん…っ!?」

 入ってきたのはシズクで、現状のアタシとトキワさんの姿を見て、彼女はおろおろし始める。
 まぁ、その反応は当然だよね、うん。もしアタシがシズクみたいにこんな場面に遭遇したら間違いなく気まずくなるだろうし。…シズクとオルフィが二人一緒の時にうっかり話し掛けた時の後悔は色々アレだったけどさ。

 おろおろしながら、シズクは顔を真っ赤にしてドアの外とアタシ達を交互に見る。そして、

「し、ししっ失礼しましたっ!」

 素早くドアを閉め、走り去っていく音が聞こえた。
 さすがはスナイパー&サブナイトシーカー。ほとんど足音が聞こえない。

 ってか、クエストの相談とか言ってたけど、大丈夫なのかな?多分、トキワさんに用があったんだろうけど……。

「トキワさーん」

 軽く揺さぶる。反応はない。もう一度動かしてみると

「……………」

 寝息をたてて寝ていた。てか、さっき動かしたら膝枕みたいな状態になったんですが。

「あのー……」

 声を掛けてみると僅かに目が開き、青い瞳が眠たそうにアタシを一瞬見た後、また閉じて寝始める。

「……もう、何なんですか、一体……。」

 アタシより年上なのに反応が子供みたいで……どうしたんだろうか、この人。



 
 無意識


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