化け物と騎士
「きっと、トキワさんが思っているほどアナタは弱くないですよ。」
「………」
「そうじゃなきゃ、"言葉"は出せないし、その言葉で救われたりする人はいなかったんじゃないんですか?」
「…そう、なのか……?」
「アタシだって、アナタの言葉に救われましたから。」
背伸びして、ぽんぽんと頭を撫でられる。
「…俺、撫でられるような年じゃないんだけどなぁ」
少し笑って茶化せば更に撫でられる。エルディアが笑ったと思えば、ぐいっと引き寄せられ、首に腕を回してきた。
「ん?」
「…大丈夫ですよ。傍にいますから。」
「ああ……。ありがとう」
これからの俺は、どうなるんだろうか。演じる事はこの先少なくなるだろうけど。
(…まぁ、気にしなくてもいいか。)
そうした方が「俺らしい」だろうし。
きっとまた、辛いことも起きるだろう。でも、今度からは逃げない。麻痺してしまった感覚を取り戻しながら。
視界が霞む。頬に温かいモノが伝う。
「…はは、涙止まんねぇや…」
「どれくらい泣いてなかったんですか?」
「どうだろうな……最後に泣いたのがいつなのか覚えてないや」
「わぁ……そんなに…よしよし」
またぽんぽんと撫でられる。それを笑おうとしたが、うまく笑えなかった。
ずっと感情を抑えていたせいか。暫く涙は止まらなかった。エルディアに支えられながら、嗚咽を上げて泣いた。
「もう、無茶しないで下さいね。…演じたまま死ぬなんて許しませんからね?」
「…わかってる。もう、しないからさ……」
きっと、心の何処かで誰かに支えてもらうことを、俺はずっと望んでいたんだろう。
化け物と騎士
(化け物のフリをしてきた青年は)
(騎士の女性に剥がされて)
(青年は目を覚ました)
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