化け物と騎士
昔から、奇妙な運命を辿ってきたとは思う。
自分の一族の"血"には治癒効果があって、病に掛かった人達が、血を求めて一族を皆殺ししようとしてきたり。
その時傷付けられて、自分が"敵"と見做したモノに"血"が触れれば、そこからたちまち腐食して弱り、最悪死ぬ。そんなものを逃げている間に何度も見たくもないのに見た。
自分の変な能力に気味悪さを覚えた。
やっとこさ兄弟三人で狂った連中から逃げて、三人バラバラに生きていこうと決めて、別れた。
次に会った時に兄はアルケミストになっていて、噂で聞く限りでは妹はメディックになったとか。
俺は偶然出会った人に弓を教えてもらい、レンジャーになった。
それから何年か経ったある日、エトリアに行き、冒険者になった。初めて仲間というものを知り、その温かさを感じて楽しかった。
けれど、それはすぐに失われた。
判断ミスで、俺達のギルドはほぼ全滅した。
命懸けで俺とユヅルを助けてくれた親友のメディックは死に、ユヅルは現実を受け入れられなくて、後を追おうとした。
それはいけないと思って、彼女を説得して、約束した。
「俺が何があっても守るから。アナタは死んではいけない。喩え、俺が死んでもアナタは生きて欲しい」
随分と強情な約束ね、と彼女は泣きながら笑った。
迷宮で倒れていた俺達をクロード達が見つけ、手当てもしてくれた。さらには、もう行き場のない俺達をギルドに入れてくれるなど……感謝しきれない。
そこからだったか。俺の考えが歪んでいったのは。
ハイ・ラガードで彼らが冒険している途中、俺は別の所を見に行ったりしていた。
行き倒れになっていた俺をルイスが助けてくれたり、長い間留守にしていたユヅルの家で、シズクに弓を教えたり。
そうしている内に、さらに考えは歪んでいった。
俺は、死にたい。
けれど、誰も死なせてはいけない。
もし、死ぬのならば仲間を守りきってから。
歪んだ考えは、俺自身も歪ませ、狂わせていった。
自分がいくら傷付こうと、それを仲間に注意されようと、関係ない。
死に急ぐ仲間がいるなら説得する。
気付いたら、笑顔で死にたい、とでも答えられそうだ。
平気でそれを口にすれば、アホか、と茶化された。
それでも冒険者か、とも言われた。
俺が求める冒険者、とは。
富はいらない。名誉はちょっと欲しい。それ以上に、自分に足りない何かを満たしたい。
ただ、それだけだ。随分と変わっているとは思う。
そこに、夢があるのかはわからない。
最近は余計にわからなくなってきた。
世界樹が枯れ行くのを見て、何も感じなかった。
周りが帝国だの、皇子をどうするだの話していたが、どうでもよくなってきた。
――どうやら俺は、来るところまで化け物になってしまったらしい。
ああ、ならば早く――――その化け物を殺さなきゃ。
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