救助要請
そういえばD.O.Eはどうしたのだろうか。そう考えていると、マップとレーダーを見ていたシェリーが声をあげた。
「反応は消えたわ。…その代わり…砦は破壊されたみたい。」
「あー…マジか」
苦笑しながら頬を軽く掻くリント。救助要請が出た階は…D.O.Eが出た階より下の階。
つまり、クオン達はD.O.Eに負けたという可能性がかなり高くなった。
「まあ…どのみち下の階に行かなきゃいけないのには変わりないからね…」
「うん、そうだね」
私の言葉にリント達は頷き返した。
しかしまぁ…救助要請とは色々便利そうね。アーモロードでもそんなシステムがあればよかったのに…←
(まあ、それはないか)
理由は簡単だろう。ここアスラーガの迷宮は”不思議のダンジョン“だから。アーモロードやエトリア、ハイ・ラガード、タルシスといったような”世界樹の迷宮“という固定されたダンジョンではないからこそなんだろう。
入る度にダンジョン内部の構造が変わるなんて、色々厄介だから。…まあ、こちとら冒険者だ。そういうことに対しては逆に突っ込みたくなったりして『冒険者魂』が燃え上がる。
危険を顧みないのも冒険者だからなんだろうか。まあ…それでも慎重派の人もいるから一概にも言えないけど。
そうやって色々考えていると、向こうの方からエミーリアの声が聞こえてきた。
「皆さーん!階段ありましたよ!」
「お、ラッキー!」
軽くガッツポーズを取りながらリントは階段に向かって駆け出した。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
その後を慌ててシェリーが追いかける。リントは私がまだ来てないのに気づき、手を振ってきた。
「ほらー!ユヅルさんもはーやーくー!」
そんな彼女の行動に思わず苦笑しながらも、私はそちらに向かった。
◆
更に階段を下り、時折やって来る魔物と戦いながら結構下の階にまで来た。
「要請があった階に近づいてますね…」
「そうか……やっぱD.O.Eいないとやり易いねー」
エミーリアの言葉にリントはそう返すと、彼女は苦笑した。
いや…リントの言葉にも一理あるけど…言っちゃダメだろ、うん。←
「まったく…そういう言葉は心に留めておきなさい。いつかフラグになっても知らないわよ?」
溜め息を吐きながら私がそう言うと、リントは「はーい」と軽く返事した。
…この子…カノンと違って楽観的というか…なんというか…
色々考えて思わずこめかみを押さえていると「最年長の言葉は聞いておくべきだしねー!」と笑顔で言った。…それに対してシェリーとエミーリアは顔が青ざめていた。
…最年長って言うな。いや事実だけど。
ふつふつと込み上げてくる怒りを抑えながら、努めて笑顔で続けた。
「だから…そういう事も口に出さないで心に留めておきなさいよ。ね?」
「わ、わかった!わかりましたから、刀は仕舞ってくれませんか!?」
おっと、私のした事が……うっかり刀を出してたみたいね。←
取り合えず刀を仕舞うとリントがふぅ…と溜め息を吐くのが聞こえた。…これに懲りて少しは反省してくれればいいのだけど…
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